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[現地ルポ]シリア・トルコ地震 赤ちゃんを抱いた28歳の母「救助隊は遅すぎた」

登録:2023-02-09 10:23 修正:2023-02-10 12:31
[トルコ・シリア大地震の現場へ]
8日午前(現地時間)、トルコのイスタンブール国際空港の案内板に地震被害者を追悼するリボンが表示されている=イスタンブール/ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社
トルコ・シリア大地震の現場へ//ハンギョレ新聞社

 「救助隊は来るのが遅すぎました」

 2日前の早朝、マグニチュード(M)7.8の地震に襲われたトルコのイスタンブール空港は、予想より落ち着いた様子だった。本紙取材陣を乗せて8日0時45分に出発したトルコ航空の飛行機は、午前6時40分頃(現地時間)、イスタンブール空港の滑走路に着陸した。悪天候のため救出作業が遅れているという海外メディアの報道どおり、暗い夜明けの空からはみぞれ混じりの雨のようなものが降っていた。

 早朝の空港の静寂の下で、悲しみがうごめいていた。空港で会ったクィルスムさん(28)は、生後7カ月の赤ちゃんとともに、イスタンブールに住む家族が自分を迎えに来るのを待っていた。カートに紫色の大きなスーツケースを乗せ、帽子と毛布でくるんだ小さな子どもを抱いていた。今回の大地震の震源地である南部都市ガジアンテプから北東に100キロほど離れたアディヤマンから来たクィルスムさんは「都市の半分はまだ瓦礫に覆われている。救助隊は人々を助けるには遅すぎた」と話した。どんな被害を受けたのか教えてほしいという質問には、黙って首を横に振った。近くで祖父を待っていると言った他の男性が「言いたくないだろう」と言ってくれた。

 トルコ南部とシリア北部を襲った地震による死者数は8日午後(現地時間)の時点で9500人を超えた。APなどの外国メディアが報じた。トルコ政府は死者が7018人、負傷者は4万910人に増えたと発表した。シリア政府は政府統制地域で1250人が死亡、2054人が負傷したと発表し、反政府軍が掌握している北西部地域では死者は1280人余り、負傷者は2600人余りに増えたと当地域の救護団体が明らかにした。必死の救助作業が進められているが、救助の手が届かない地域が多く、死者はさらに増えるものと予想される。

 トルコ政府は、地震の被害地域は東西にディヤルバクルからアダナまで450キロメートル、南北にマラティヤからハタイまで300キロメートルにのぼり、その範囲内には1350万人の住民が居住していると明らかにした。シリアでは震源のトルコ南東部から250キロ離れた地域まで地震の被害を受けたと、ロイター通信が伝えた。

 世界保健機関(WHO)は、両国の地震被害地域に住む人々は2300万人にのぼるとし、各国に支援を求めた。テドロス・アダノム事務局長は、迅速な救助が重要だとし「今は時間との戦いだ。1分、1時間が経つほど生存者を見つける可能性が下がる」と述べた。

 トルコを襲った大型災害の跡は、出国ロビーに出る廊下に並んだ白いリボンでも確認することができた。免税店の入口にも「地震がトルコを襲った」(Earthquake Hits Turkey)という英語とともに、大きな哀悼リボンがかかっていた。リボンの横には赤いトルコの国旗、その横にはトルコ語で「国家哀悼」という文字と「地震で命を失った市民に神のご慈悲を。負傷者が早く治癒されるように」という文言がある。携帯電話でQRコードを撮影すると、トルコ災害危機管理局(AFAD)に小額(20トルコリラ)を寄付できる広告も見られた。

 この日イスタンブール空港では、地震が発生した地域から離陸した国内線の飛行機が最大で7時間ほど延着する状況が続いた。クィルスムさんのようにこの空港に到着した人々は、それぞれ大きな毛布を身にまとっていた。お菓子の入ったビニール袋を持った人もいた。知り合いに会うなりしっかりと抱き合う人も多かった。

 外国メディアは、地震から3日もたったが何の救助も受けられずにいるという被害現場の人々の叫びを伝えている。地震の被害を受けたマラティヤの住民のムラット・アリナクさんは「ここには誰もいない。私たちは家を失い、何もない状態で雪の降る場所に居続けている。私は何をすればいいのか、どこへ行けばいいのか?」と言った。別の住民は、救助隊員が到着せず住民たちが素手で廃墟の中を探し回っていると言い「国はどこにあるのか。2日間一体どこにいたのか」と話した。ハタイ県の県都アンタキヤでも、住民たちが自ら廃墟の中で生存者を探しているという状態だ。シリアの状況はさらに悲惨だ。CNNが7日に伝えた映像には、反乱軍が掌握している北西部の都市ハラムの付近のある村で、コンクリートの間に挟まれた少女が弟を抱いて「助けてください。あなたのために何でもします」と訴えている光景が流れている。

 トルコのエルドアン大統領は7日、地震被害を受けた10州を災害地域に指定し、3カ月間の非常事態を宣言した。また、被害地域に5万人以上の救援人員を派遣し、53億ドル規模の財政を投入する計画だと明らかにした。エルドアン大統領は「これまでに8千人以上を救助したことが唯一の慰め」だとし、西部の観光中心地アンタルヤのホテルを被災者臨時収容施設として活用する計画だと説明した。世界70カ国も救助隊の派遣または救援物資の支援に乗り出した。ドイツから急派され、この日アダナ空港に到着した救助隊員のヨハネス・グストさんは、ロイター通信に「被害地域の規模が途方もない。これほど大規模な被害は見たことがない」と話した。

イスタンブール/チョ・ヘヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1078906.html韓国語原文入力:2023-02-09 02:42
訳C.M

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