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ロシアを脱出した若者を助けるモンゴル人たち「韓国はなぜ彼らを受け入れないのか」

登録:2022-12-15 10:00 修正:2022-12-15 11:12
モンゴルのウランバートルでゲストハウスを運営しているダルジマさん(57)が10月28日、自身のゲストハウスでインタビューに応じ、以前助けた20歳のロシア人青年を思い出しながら涙を流している=通訳のチンバートさん提供//ハンギョレ新聞社

 「銃で人を撃つより逃げた方がいいと思った青年たちを助けたかったんです」

 モンゴルの首都ウランバートルでゲストハウス2棟(部屋10室)を運営するダルジマさん(57)は10月28日、自分のゲストハウスで本紙記者と会い、「私たちは人間だから、苦労してきた人々を助けなければ。特に若い人たちは必ず助けなければならない」とし、このように語った。ダルジマさんは「部分動員令を避けてロシアからモンゴルに渡ってきた青年たちは皆、大学を卒業した能力のある人たち」だとし「エンジニア、先生、医師、博士などが多い」と説明した。

 ダルジマさんはロシアの若者たちに部屋を10%安くしたり、お金のない人たちには無料で部屋を貸した。また、家を探している人には賃貸料が安い部屋を、仕事が必要な人には働き口を調べてあげた。9月22日から部分動員令を逃れて国境を越えモンゴルに逃げてきたロシア人70~80人が、ダルジマさんに助けられた。

 彼らの大半はゲストハウスに数日滞在し、多くはタイやベトナムなど東南アジアに向かった。ダルジマさんは「若い人たちは韓国に行きたがっているが、受け入れてもらえないので仕方なく物価の安いタイやベトナムに行った」と説明した。続いて「同じ人間なのに、なぜ韓国は彼らを受け入れないのか。韓国人も戦争を望んでいないのではないか」と強く語った。

 実際、共に民主党のアン・ホヨン議員が公開した資料によれば、10月1日から5日までの間にヨットに乗ったロシア人23人が韓国の海域で発見された。彼らは全員韓国政府に入国許可を申請したが、韓国への入国記録のある2人を除き21人が入国を許可されなかった。空港を通じて入国を試みるロシアの若者たちは、難民審査も受けられずにいる。難民人権センターは10月28日、フェイスブックに「最近ロシアの徴集を逃れて韓国に来る人々からの連絡が急に増えている。センターにも2週間前に空港で難民申請をしたロシアの方が不回付処分(難民認定審査に回付しないとの決定)を受けた後、助けを求めてきたことがあった」と書き込んだ。さらに「ロシアのブリヤート共和国出身の申請者は、部分動員令の対象条件に該当し、戦場に駆り出されるのを拒否し韓国行きの飛行機に乗って空港で難民地位を申請したが、空港の出入国(管理局)はむしろ部分動員令の対象に該当するため徴集されるのが当然だという立場を示し、難民申請を断った」と話した。

 ダルジマさんは、韓国政府と韓国人に対する残念な気持ちを吐露した後、涙をぬぐった。お金がなく、助けてほしいと泣きながら言った20才のロシア人の子が思い出されたと言う。「20歳の子が家族も捨ててお金もなしに戦争を逃れてきた。私も子を持つ母親なのでとても胸が痛み、無料で部屋を貸してあげました」。ダルジマさんは「まだ20歳そこそこの息子を一人で送り出すことができず、一緒に来たロシアの母親もたくさんいる」と話した。親たちは賃貸料の安い部屋を息子に探してあげ、ビザが取れるように大学に登録した後、ほとんどはロシアに戻る。ダルジマさんは、現在自分のゲストハウスにも息子と母親が一緒に泊まっている人たちがいると話した。ただし、彼らは怖いという理由でインタビューを断った。

 韓国をとがめたダルジマさんは、このような願いも忘れずに付け加えた。「韓国はモンゴルよりも発展している国ではないですか。こんなふうに苦労している人たちを受け入れて、戦争が終わるまでは助けてあげてほしい」

モンゴルのウランバートルにあるモンゴル大学院。修士・博士専門大学院だったがモンゴルに逃げてきたロシア人青年たちがビザを受けられるよう、モンゴル語と英語の授業を開設した=ウランバートル/キ・ミンド記者//ハンギョレ新聞社

 大学の教育課程を通じて、脱出したロシア人を助けている人もいた。モンゴル大学院のチョイダム・ジギマ総長は、モンゴルに逃れてきたロシア人のビザ延長を助けていた。彼は10月29日、モンゴル大学院総長室で本紙記者と会い「どうやって彼らを助けることができるか悩んだ末、語学授業を開けばいいというアイディアが浮かんだ」とし「私たちは修士・博士を対象とする大学院だが、9月末にモンゴル語と英語の授業を開設した」と話した。

 ロシア国籍を持つ人は、ビザなしでモンゴルに入国し30日滞在することができる。その後1カ月はビザを延長することができるが、その後は居住ビザを取らなければならない。語学学校に登録すれば、若者たちは居住ビザを1年ずつ延長できるようになる。

 モンゴル大学院は週に3回、モンゴル語と英語の授業を行っている。すでにロシアの部分動員令を逃れてきた200人以上のロシア人が登録したという。ジギマ総長は「80%はモンゴル系で、20%はロシア系学生」と話した。ロシアの学生たちは3カ月間、モンゴルの学生と同じ費用の250万トゥグリック(約9万8千円)を払う。

 ジギマ総長は、韓国はロシアとの外交関係が良くないからロシアの若者たちを助けないのだと考えていた。彼は「私たちはどの国の人であれ人間的に助けなければならないと考える。ところが韓国は、ロシア人を助ける必要はないと考えているようで残念だ」と話した。

 韓国内部でも、戦争を逃れてきたロシアの若者たちを積極的に救済しない政府の態度を指摘する声が高まっている。難民人権センターの活動家のキム・ヨンジュさんは本紙に対し、「徴集拒否の場合、それ自体が政治的反対者と評価される可能性があり、戦争地域で少数民族という理由で迫害が加重される場合であれば難民条約と難民法上の難民事由との関連性が認められるとみなければならない」とし、「ロシアの部分動員令を避けて飛行機または船で韓国の国境までやって来て、保護を求めたにもかかわらず、送還するなどの事件が発生しているが、これは強制送還禁止原則に反する可能性が高い。すみやかに入国させ、正式な難民審査を受けられるようにすべきだ」と語った。

ウランバートル/キ・ミンド記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1071620.html韓国語原文入力:2022-12-14 19:01
訳C.M

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