岸田文雄首相が「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の不法行為の有無を調査するよう指示した。調査結果によっては旧統一教会の解散を可能にする手続きを踏む可能性もある。
岸田首相は17日、永岡桂子文部科学相に「宗教法人法」に基づいて旧統一教会に対する調査を実施するよう指示した。1996年に改正された同法は、宗教法人を対象に解散命令請求などに該当する疑いがある場合、所管省庁が法人の業務や管理運営について報告を要求すると同時に、調査(質問権)ができるよう定めている。この規定が宗教法人に適用されたのは今回が初めて。永岡文科相は「岸田首相から旧統一教会に対する質問権を確実に施行するよう指示があった。速やかに対応を始める」と述べた。
日本政府と自民党内部には、宗教法人に対する調査が憲法の保障する宗教の自由を侵害する恐れがあるという慎重論もあったが、旧統一教会の不法行為に対して世論が悪化したことを受け、このまま見過ごすわけにはいかないと判断したものとみられる。
松野博一官房長官は同日の定例記者会見で、「旧統一教会については2016年以降、法人自体の組織的な不法行為責任を認めた民事裁判の例が見られており、今般政府が設けた合同電話窓口において、9月末時点で1700件以上の相談が寄せられた」とし、「こうした裁判例や相談の状況、有識者の意見を踏まえ、旧統一教会に対し、宗教法人法に基づく報告徴収、質問の権限を行使することなどについて、総理から関係大臣に指示があった」と説明した。旧統一教会は強圧的な献金勧誘と「悪霊を取り除く」として特定の品物を高額で売りつけるいわゆる「霊感商法」などで、日本で問題になった。
日本政府の調査の結果、著しく公共福祉に害を及ぼしたと認められる行為などが確認されれば、所管省庁が裁判所に解散命令を請求することができる。裁判所が解散命令決定を下せば、税制優遇を受けられる宗教法人の資格が剥奪される。これまで日本で宗教法人に対する解散命令は、1995年に東京の地下鉄駅サリン事件を起こしたオウム真理教を含め2法人のみ。