欧州はロシア産エネルギーへの依存を断ち切ることができるだろうか。
欧州連合(EU)が最近、ロシアのウクライナ侵略に対する制裁としてロシア産石油の輸入を禁止する案を発表した。原油は6カ月以内に、精油は年内に禁輸する内容だ。EUは近いうちに27の加盟国の承認を得て、施行に入る計画だ。米国は今年3月、いち早くロシア産原油と天然ガスの輸入禁止案を打ち出したが、米国国内ではロシア産原油の占める割合が3%に過ぎず、象徴的な効果に止まった。
しかし、ロシア産原油の輸出量の半分近くを占める欧州は状況が異なる。欧州の禁輸措置は、実際にロシアにとって大きな打撃になりうる。欧州の禁輸計画は段階的なものであり、その間にロシアも他の地域で市場を開拓するなど、衝撃を緩和する時間は稼げる。実際、ロシアは最近インドへの輸出に積極的に乗り出しており、インド市場のシェアを昨年の1%から17%に拡大した。また、持続的にロシアから原油の輸入を増やしてきた中国にもさらに輸出できると期待しているが、これらが欧州の減少分をどれだけ補えるかは不透明だ。
ロシア産石油との決別は、昨年原油の約4分の1をロシアに依存した欧州にとっても大きな課題だ。国際原油価格は欧州のロシア産原油禁輸計画が発表された4日(現地時間)、5%以上急騰するなど、敏感に反応している。原油価格の高騰は、ただでさえ高インフレ警告音が鳴り響く欧州経済に大きな負担となる。
特に、国ごとに事情が異なるということが、加盟国全体の同意が必要なEUの動きに歯止めをかける可能性もある。実際、ロシア産原油への依存度の高いハンガリーやスロバキアなど、いくつかの国は自国経済に大きな打撃になるとして反対意見を示した。にもかかわらず、ロシアに対する制裁の緊急性に異議を唱えるのは難しい状況であるため、これらの国には例外的に猶予期間をさらに増やす方式で合意が進められているという。
問題はロシア産に代わる石油を円滑に確保できるかどうかだ。最も有力な代案はサウジアラビアとアラブ首長国連邦だ。両国には1日最大250万バレルを増産する余力がある。また、イランが最大130万バレル、ベネズエラが約50万~60万バレルを増産できる一方、米国もシェールオイルの生産量を最大1日100万バレルまで増やす能力を備えている。
しかし、増産は複雑な政治・経済的環境と絡んでいる。ジョー・バイデン政権と対立しているサウジアラビアは、米国の増産要求に応じていない。米国がウィリアム・バーンズ中央情報局(CIA)長官を派遣するなど説得に乗り出しているが、結果はもう少し見守らなければならない。
米国の制裁を受けているイランの場合は、核交渉がカギとなる。しかし交渉当事者の一つであるロシアが、核交渉の署名条件としてロシアとイラン間の投資・交易を制裁の例外対象にすることを要求し、交渉が難航している。ベネズエラも制裁対象国だ。バイデン政権はベネズエラと接触しているが、国内世論は増産に否定的だ。ベネズエラは、直ちには難しいが、制裁が解除され施設への投資がなされれば数カ月以内に増産できるとみられている。
結局、欧州がロシア産石油と決別できるかどうかは、米国と欧州の政治力にかかっているわけだ。