40日目に入ったウクライナ戦争が予想外の突発変数である「ブチャ虐殺」によって新しい局面に突入している。この大量虐殺の衝撃で、ロシアとウクライナ間の平和交渉は事実上中断され、西欧は新たな経済制裁と兵器支援計画を次々と発表している。ロシアは戦略的目標に従って戦線の軸を東南部地域に移し、攻勢を強めている。戦争が長期化の泥沼に陥いている。
米国防総省当局者は6日、先月末に始まった「キーウ(キエフ)と(東北部の主要都市)チェルニーヒウのロシア兵力の撤退作業が終わった。ロシア軍は現在、ベラルーシとロシアに集結している」と明らかにした。国防総省のジョン・カービー報道官も同日、「キーウとチェルニーヒウ周辺でロシア兵力が見えなくなった」とし、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は当初計画していた「戦略的目標を一つも達成できなかった」と述べた。
ロシアは先月29日、トルコで行われた第5回平和交渉で、「キーウ周辺の軍事活動を大幅に減らす」と明らかにし、これを実行した。ウクライナがその後、ロシア占領地を修復する過程で、ブチャ虐殺という突発変数が発生した。憤ったウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6日、国連安全保障理事会で「このような状況で、どうやって平和交渉を進めるのか」と述べた。米国のジョー・バイデン大統領もプーチン大統領を「戦犯として処罰すべきだ」と述べ、米ロ間の妥協の余地を大きく狭めた。
米国などはさらに一歩踏み込み、ロシア経済を機能不全に陥らせる追加経済制裁と、ウクライナに対する新たな兵器支援計画を相次いで発表した。カービー報道官は同日、ウクライナに自爆型ドローン1「スイッチブレード」100台を提供する考えを示した。「カミカゼドローン」と呼ばれるこのドローンは、爆弾を装着して敵のターゲットに突進する。米国は、同ドローンの操作方法を教えるためにウクライナ兵士を米国で教育する計画も明らかにした。同ドローンはウクライナに大きな被害を与えているロシアの重砲および指揮網を攻撃できると、英国の「ガーディアン」が報じた。
チェコも10台以上の旧ソ連製T戦車、曲射砲、BMP1装甲車を提供したと発表した。ガーディアンは、これらの兵器の数は少ないが、ロシアを打撃できる本格的な攻撃用兵器だとし、今回のチェコの発表を「重大な変化」だと報じた。ポーランドも5日、自国で保有していた250台の米国産エイブラムス戦車を、47億5千万ドルでウクライナに販売することで合意した。
キーウ周辺から撤退したロシア軍は、当初今回の戦争開戦の名分としていた東部のドンバス地域に対する攻勢を強めている。西欧諸国は、ロシアが親ロ武装勢力によって掌握された「自称」2つの共和国があるドンバス地域全域の占領を越え、同地域を2014年3月に合併したクリミア半島と結びつけようとする「戦略的目標」を目指しているとみている。そのためか、ロシアはこの二つの地域をつなぐ要衝地に位置するマリウポリに対し、すさまじい攻撃を加えている。ロシアはさらに、すでに占領したウクライナ南部の黒海沿岸都市でロシア貨幣「ルーブル」を使用させるなど、実効支配を図るような動きをみせている。
西欧の情報機関は、プーチン大統領がロシアの第二次世界大戦の戦勝記念日である5月9日に「勝利宣言」ができることを望んでいるとみている。このため、4月中ウクライナ東南部地域の運命をかけた熾烈な攻防戦が予想される。5月初めまでに戦況がはっきりしなければ、戦争が長期化する恐れがある。マーク・ミリー米統合参謀本部議長は5日、米議会に出席し、「この戦争は長期化の可能性が非常に高い紛争であり、少なくとも数年は続くものと予想される」と述べた。