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石油禁輸でロシアの「戦争金庫」に打撃、プーチンを打ち負かせるか

登録:2022-03-10 06:20 修正:2022-03-10 07:38
「プーチンの戦争に補助金はつけられない」劇薬を処方 
独自制裁だがロシア産排除の雰囲気を造成 
石油メジャー、相次ぎロシアから事業撤退を宣言 
禁輸の雰囲気に劣らず他の産油国への説得も重要 
「サウジ・UAEの実力者、バイデン大統領との電話会談を拒否」
8日、米国ワシントン州アナコルテス近海でタンカーが精油施設への入港を待っている=アナコルテス/AFP・聯合ニュース

 米国のジョー・バイデン大統領は8日(現地時間)、ロシア産の石油、天然ガス、石炭の輸入中断を発表し、ウラジーミル・プーチン大統領に「強力な打撃」を与えたと強調した。冷戦時も西側に石油を売っていたロシア(当時ソ連)を相手に一種の劇薬を処方したのだ。

 石油をはじめとする化石燃料は、歳入の60%を占めるほど、ロシアにとって絶対的な存在だ。ロシアが1990年代の経済崩壊から抜けだす際に原油高は大きな役割を果たした。ロシア軍を現代化し、これをもとに周辺国を脅かすことを可能にしたものも石油だといえる。石油がロシアの「戦争金庫」を満たしたわけだ。バイデン大統領が「米国人は、プーチンの戦争に補助金をつけることはできない」と述べたことも、これを指したものだ。ホワイトハウスは、輸入中断措置は金額では年間数十億ドル水準だと説明した。

 石油禁輸は米国が独自に実施し、英国が年末までにロシア産の輸入を中断すると明らかにしたことから、これまでの制裁に比べて欧州の同盟国との協力の水準は低い。米国の総輸入量のうちロシア産の原油と精油製品の割合は7~8%の水準だ。サウジアラビアと1・2位を争う石油輸出国であるロシアには、米国での販路を失うという事実自体は決定的ではない。

 問題は流れだ。欧州連合(EU)は、ロシア産の石油(25%)と天然ガス(40%)への依存度が高く、禁輸に参加できないが、今年中にロシア産化石燃料の輸入を3分の2減らし、2030年になる前に、完全な「エネルギー独立」を達成するという計画を打ちだした。石油メジャーも相次いでロシアから脱している。欧州最大の石油企業シェルは、原油購入をただちに中断することに続き、「すべてのロシア産化石燃料の事業から撤退する」と宣言した。ロシアのガソリンスタンドも閉鎖すると述べた。米国のエクソン・モービルと英国のBPも、ロシアとの関係を断ち輸入量を制限すると明らかにした。これに先立ち、米国はロシアに対する先端精油技術の移転を禁止した。

 米国商務省の暫定集計によると、ロシア産原油の米国輸入は、最近はすでにまったくない水準に落ちた。「石油代金=戦争資金」という公式が広がり、不買運動の雰囲気が形成されたのだ。このような流れが国際的に広がると、石油をもとに政治・経済・軍事的な影響力を強めたロシアには決定打になるに違いない。

 しかし米国には、40年ぶりの最悪のインフレに対応するために、産油国を説得しなければならない課題もある。バイデン大統領がロシア産石油の禁輸を発表した8日、米国のレギュラーガソリンの平均価格は1ガロンあたり4.17ドルになり、過去最高を記録した。米国はサウジアラビアはもちろん、敵性国といえるベネズエラにまで使節団を送り増産の可能性を打診したが、明らかになった成果はない。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは、バイデン大統領がサウジの実力者のムハンマド・ビン・サルマン皇太子やアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド首長世子と電話会談を試みたが、彼らは会談を拒否したと報道した。サウジを説得するためには大統領が直接訪問しなければならないという意見まで出ている。しかし、2018年に批判的なジャーナリストのジャマル・カショギ氏の暗殺を指示したと指摘されているビン・サルマン皇太子とは握手できないという見方が多い。もう一つの変数は中国だ。中国がロシア産の石油と天然ガスの輸入を大幅に増やせば、今回の措置の効力に影響を及ぼしかねない。

ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1034160.html韓国語原文入力:2022-03-10 02:30
訳M.S

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