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ロシア軍、「欧州最大」ザポリージャ原発掌握…攻撃で一時火災

登録:2022-03-05 02:29 修正:2022-03-05 09:04
ウクライナ南東部「欧州最大の原発」 
中心施設から300メートル地点で火災 
原子炉などは無事だったものの 
 
ロシアが追加攻勢で遂に掌握 
「敷地内に死亡、負傷した兵士がいる」
ウクライナの国家非常事態庁(韓国の災害安全管理本部)は4日(現地時間)、SNSで「ロシア軍の攻撃を受けている間に、ウクライナ南東部ザポリージャ州エネルホダル市の原発の敷地内の『訓練用施設』で火災が発生した」と発表した/ロイター・聯合ニュース

 ロシア軍とウクライナ軍の交戦場所近くにある欧州最大の原子力発電所で、4日(現地時間)未明に火災が発生し、ともすると取り返しのつかない大事故につながるところだった。ウクライナ政府は、この原発で事故が起これば1986年のチェルノブイリの惨事より被害が「10倍は大きいはず」と述べつつ自制を求めたが、結局はロシアの攻勢に勝てず発電所を明け渡した。

 ウクライナ国家非常事態庁(韓国の災害安全管理本部)は4日、SNSで「ロシア軍の攻撃を受けている間に、ウクライナ南東部ザポリージャ州エネルホダル市の原発の敷地内の『訓練用施設』で火災が発生した」と発表した。国際原子力機関(IAEA)は資料を発表し、その中で「火災は原発の『必須設備』には影響を与えなかったとウクライナ当局が通告してきた」と語った。両者の交戦のせいでウクライナの消防士が一時現場に接近できなかったものの、午前6時40分頃に鎮火した。ロシア軍は3日、南部の拠点都市ヘルソンを掌握し、その後も北進を続けている。

 火災が発生した建物は、原子炉を含む原発の中心施設からわずか300メートルあまりしか離れていない。欧米並みの安全設備が整ってはいるが、無差別な砲撃が続けば危険だ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの日「ロシアの戦車は赤外線装置を備えており、原子力地域を攻撃した。自分たちが何を撃っているのか分かっていた」と非難した。

 火災の起きた場所の周辺地域を分析した「エネルギー転換フォーラム」のソク・クァンフン専門委員は本紙に「衛星写真を見ると、ウクライナ軍が位置するオフィス棟の裏にはスイッチヤードと呼ばれる変電施設があり、ロシア軍の戦車の右後方奥には使用済み核燃料の乾式貯蔵施設があると見られる。どちらの方向の攻撃でも原発の安全にとって危険な状況だったことが分かる」と述べた。変電施設が損傷すれば原発への電力供給が遮断され、核燃料冷却システムが正常に作動しない可能性がある。また、使用済み核燃料貯蔵施設が破壊されれば、放射性物質が大量に放出される災害へとつながる。法政大学の宮野廣元客員教授(原子炉システム学)は読売新聞に「基本的には、炉心がコンクリート構造物で囲われているため、チェルノブイリ原発事故のような事態にはならない」としつつも、施設損傷の程度によっては「放射性物質の漏えいはありうる。観測データを注視する必要がある」と述べた。ロシアとウクライナは旧ソ連時代、人類最悪の原発事故と言われるチェルノブイリ原発事故をともに経験している。

 この日の火災により世界の耳目を集めたザポリージャ原発は、ウクライナで稼動中の15基の原子炉のうち6基を保有する、欧州最大の原発だ。ウクライナが使用する電力の4分の1を供給しており、世界10大原発の一つに数えられる。IAEAによると、6基すべてが旧ソ連の開発した加圧水型軽水炉(PWR)で、1980~1990年代に建設され稼働を開始している。

 火災発生後、ウクライナのドミトロ・クレバ外相はツイッターで「爆発が起きれば、被害はチェルノブイリの10倍」と警告したが、ロシア軍は気にせず攻撃を続け、発電所を占領した。原発を運営する国営原子力公社エネルゴアトムは声明を発表し、その中で「発電所内の行政棟と検問所が占領軍の統制下にある。原発が安定的に運営されるよう、発電所の職員は業務を続けている」と語った。続いて「不幸にも発電所内に死亡または負傷したウクライナ兵士がいる」と付け加えた。

チョン・ウィギル、キム・ジョンス先任記者、東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1033592.html韓国語原文入力:2022-03-04 19:24
訳D.K

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