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岸田新総裁、民意より「派閥の力」で当選…「安倍路線」継承の見込み

登録:2021-09-30 06:12 修正:2021-10-02 16:54
【岸田文雄新総裁の政策見通し】 
大きな枠組みでは安倍路線、部分的変化目指すか 
北朝鮮・中国政策は現行通り、経済は独自色 
アベノミクスに代わる「新しい観点必要」 

韓日の冷え込みは当分継続 
「ボールは韓国側にある」強調 
変化は両国の選挙が終わる来年以降の見込み
今月29日午後、東京のあるホテルで開かれた自民党総裁選の決選投票で勝利した岸田文雄前政調会長が、当選確定後、手を上げて挨拶している=東京/AFP・聯合ニュース

 事実上日本の100人目の首相を選ぶ29日の自民党総裁選の勝負を分けたのは、一般の日本人の「民意」ではなく、党内派閥の力学関係と安倍晋三前首相の影響力だった。相対的に国民的支持の低い岸田文雄前政調会長が自民党の「新しい顔」として11月の衆院選を率いることになり、自民党が議席数をどれだけ守るかが今後の日本政治と韓日関係などに幅広い影響を及ぼす見通しだ。

 「ポスト安倍-菅政権」の行方を分ける29日の自民党総裁選は午後1時、野田毅自民党総裁選管理委員長の選挙開始宣言とともに始まった。自民党国会議員382人の名前が五十音順に呼ばれると、それぞれ議員が壇上にあがり、選挙管理委員に名刺を渡した後、投票用紙を受け取って名前を記入するやり方で選挙が行われた。安倍晋三前首相は3番目に呼ばれ壇上に上がり注目を集めた。

 同日、選挙の勝負が事実上決まったのは1回目の投票結果が出た直後だった。一般市民を対象にした世論調査で圧倒的1位を守ってきた河野太郎行政改革担当相は、民意を反映する党員・党友投票では169票を確保したが、国会議員票では予想より少ない86票(計255票)の獲得にとどまった。ライバルの岸田前政調会長は、反対に党員票では110票にとどまったが、国会議員票では146票を記録し、256票を獲得した。

 問題は1回目の投票で3位となった高市早苗前総務相が得た国会議員票(114票)が誰に流れるかだった。高市前総務相が得た票は、大半が自民党の最大派閥であり安倍前首相の影響力が大きい細田派(96人)から出たものと推定される。安倍前首相は日本の国防予算を今の2倍水準に増やし、靖国神社を参拝すると公言する極右の高市前総務相を支持するという意思を重ねて表明してきた。産経新聞は29日付の記事で「岸田文雄前政調会長と高市早苗前総務相の両陣営幹部が28日夜、東京都内で会談し、決選投票で岸田氏と高市氏のどちらかが河野太郎ワクチン担当相と対峙することになった場合、両陣営が協力することで正式に合意した」と報じた。決選投票では「改革」を掲げた河野行革相より「安倍路線」を維持するという意思を明らかにしてきた岸田前政調会長を支持することにしたのだ。マスクで顔を覆った河野行革相は敗北を直感したように微動だにせず、正面を見据えていた。

 岸田新総裁は「安倍路線」を大きな枠組みで継承し、部分的な変化を試みるものと予想される。特に、朝鮮半島情勢に直接影響を及ぼす対北朝鮮・対中国路線を維持する一方、比較的敏感ではない経済政策で変化を図るものとみられる。実際、岸田総裁はこれまで対北朝鮮政策について「核・ミサイル開発の完全な放棄を迫るとともに、拉致被害者全員の帰国を目指す」と述べてきた。安倍前首相とその後を継いだ菅義偉首相が、この9年間繰り返し表明してきた立場だ。中国に対しても「権威主義的な体制を世界に広げようという野心を持っている。隣国としての関係は考えなければならないが、言うべきことはしっかり言わなければならない」という考えを示してきた。

 韓日関係については当分、改善の契機を見いだすのは難しい見通しだ。岸田新総裁は韓日関係について「対話は必要だが、ボールは韓国側にある」という点を強調した。河野行革相が韓日間の主要懸案の輸出規制措置を歴史問題と切り離し、対話で解決できるという意思を明らかにしたのとは対比を成している。両国とも、韓国の大統領選挙(来年3月)や日本の衆院選(11月)など、重要な政治日程を控えていることも問題だ。両国が関係改善の契機を見出すには、韓国の大統領選挙が終わった後の来年5月以降になる見込みだ。

 しかし「岸田色」を出せる変化の余地が全くないわけでもない。安倍前首相が積極的に推進した憲法改正について「国会で他党との議論はほとんど進んでいない」と述べた。時期尚早だという考えとも取れる発言だ。経済政策のアベノミクスについても「分配も考えないと日本の国がおかしくなる。新たな視点が必要だ」と強調した。

 岸田新総裁は、内閣を構成した後、直ちに衆議院選挙の対応に乗り出す見通しだ。衆議院は来月21日に任期が満了し、11月中に選挙が行われる。自民党が議席数をどれだけ維持(現在275議席、59%)できるかがカギとなる。現役議員の約半分の126人(46%)が当選3回以下だ。若い議員は地域基盤が脆弱で、「選挙の顔」である党総裁に対する依存度が高くならざるを得ない。善戦すれば党内掌握力が大きくなり、思ったより早く「安倍路線」から変化を図る可能性もある。

東京/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1013274.html韓国語原文入力: 2021-09-30 02:35
訳H.J

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