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[記者手帳]韓国内のイラン資金は災い転じて福となり得るか?

登録:2021-01-16 05:59 修正:2021-01-27 11:10
抑留された船舶と船員たちの解放交渉のため、イランを訪問していたチェ・ジョンゴン外交部第1次官が今月14日午後、仁川国際空港第1ターミナルを通じて帰国している=仁川空港/聯合ニュース

 彼ら(韓国人)はビンタを一発食らうべきだったのだ…それによって、我々が医薬品とワクチンの購入費が本当に必要な時、彼らがイランに渡すべきお金をこれ以上足止めしておくことはできないのだということを分からせなければならない」(「フィナンシャル・タイムズ」に引用されたイラン政府関係者)

 抑留中の韓国タンカーの船員たちの解放交渉のためイランを訪問したチェ・ジョンゴン外交部第1次官が14日、目に見える成果なく帰国した。外交力のなさだと非難できない状況だ。この問題は韓国とイランの問題ではなく、米国が原因であるからだ。

 ドナルド・トランプ米政権が2018年5月にイラン核協定(包括的共同行動計画・JPOA)を一方的に破棄し、イランに制裁を再び加えたことによって韓国に凍結された70億ドルのイラン資金が、この事件の核心だ。韓国もこの資金をイランに返そうとしたが、トランプ政権の強硬な立場に押され、どうすることもできなかった。しかし、今イランはかなり怒っている。韓国が米国の顔色ばかりうかがっているという理由でだ。

 米国の制裁で世界各国に凍結されているイランの資金は1000億~1200億ドル程度と推算される。韓国に凍結されている70億ドルはなかでもかなり多い方だ。バラク・オバマ米政権時代、韓国は中国やインドなどと共に制裁猶予を受け、イランから多量の石油とガスを輸入した。このような過程で韓国とイランの交易量が増えた。トランプ政権が電撃的に制裁を再開したことで、韓国に多くのイラン資金が足止めされることになった。

 その後、韓国がイランにあまり誠意を示さなかったと、イラン側は嘆いている。その時点がトランプ大統領が電撃的に受諾した朝米首脳会談のプロセスと重なった影響が大きい。韓国は、朝米関係の正常化による北朝鮮核問題の解決に外交のすべてをかけていた。北朝鮮とは対話する一方、イランの首は締めるというトランプ政権に対し、韓国は腰が低すぎた。

 実際、イランはこれまで、各国に凍結された自国資金のことで、当該国と争ったことがない。唯一、韓国にだけ初期から不満を訴えており、これはたびたび韓国メディアにも報道された。中国とインドは、初期から様々な方法でイランをなだめてきたという。イラン側のある関係者はフィナンシャル・タイムズに「中国もイランの生存のため現金を提供してきたのに、韓国は関係ないといわんばかりの態度だった。これがイランを激怒させた」と述べた。

 イラン中央銀行のアブドゥル・ナセル・ヘンマティ総裁も「アルジャジーラ」に「私たちは他の国にも(凍結)資金があるが、米国の制裁にもかかわらずその資金にアクセスし、使うことができた」として、韓国が誠意を見せなかったと訴えた。イラクにもイランの資金50億ドルが凍結されているが、イラクはイランが新型コロナワクチンを購入するのにこの資金を使えるよう、一部返すことで合意したとされる。

 韓国も国際ワクチン調達機構のCOVAXファシリティを通じて、イランがワクチンの確保にこの資金を活用するよう、米国から制裁猶予措置を受けていると明らかにした。また、この資金のごく一部を使用し、すでに薬品と医療装備がイランに送られた。

 しかしイランは、韓国がワクチンの購入に必要な資金をJPモルガンを通じて送金する過程で、米国が横取りする可能性があると主張している。(イランは)韓国が直接乗り出してワクチンなどの薬品を購入しイランに送る「バーター貿易」方式を提案したという。また、利用できる額が少なくとも10億ドルにはなるべきと要求しているという。

 チェ・ジョンゴン次官の今回の訪問で、救急車提供問題が取り上げられた。イランは韓国が提案したが、自分たちが断ったと主張しており、韓国はイランの要請だったとして反論している。基本的にイランの要求水準が高まっているために意見の相違が生じているといえる。これは、イランがこの問題で米国に探りを入れようとしているからだ。韓国を締め付けて米国を刺激しようとする「声東撃西」戦術だ。米国の許可と了解なしには韓国が解決するのは事実上不可能な状況だ。

 韓国にとっては悔しいが、むしろ災い転じて福となすことになるかもしれない状況だ。韓国とイランが(凍結)資金問題を解決できなかったのは、基本的にトランプ政権のためだ。トランプ政権下では不可能だったが、まもなくバイデン政権が発足する。バイデン政権の対外政策の最優先課題はイラン核協定への復帰だ。基本的に米国が動かずには解決できない韓国内のイラン資金問題に米国が誠意を見せるかが、イラン核協定復元のバロメーターになる。

 バイデン次期大統領は、自分が就任直後に復元しようとするイラン核協定が北朝鮮核交渉の青写真になると述べた。韓国はイランの資金問題を解決し、まもなく発足するバイデン政権を牽引しなければならない。バイデン政権もこの問題がイラン核協定復元に向けた第一歩になり得ることを認識しているだろう。

 韓国の与党関係者は「韓国もイランも、この問題がバイデン政権の発足に合わせて解決できるよう予熱しておかなければならず、そうしているだろう」と述べた。チェ次官は帰国時「船舶と船員に対するイラン政府の措置が迅速に行われるものと信じている」とし、「韓国とイラン両国は大きな一歩をともに踏み出した」と述べた。懸念されるのは、既存の外交当局内の惰性だ。強い者に弱く、弱い者は無視する韓国外交官たちの卑屈な姿勢だ。

 韓国はより積極的で、犠牲をも甘受する姿勢でこの問題に臨まなければならない。韓国にとっては、バイデン政府時代に北朝鮮核問題の解決に向けて踏み出す第一歩でもある。

//ハンギョレ新聞社
チョン・ウィギル国際ニュースチーム先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/979013.html韓国語原文入力:2021-01-1602:31
訳H.J

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