2021年1月6日、午後2時20分(現地時間)から約3時間20分の間、昨年11月の大統領選挙結果を不服とし、ドナルド・トランプ米大統領の支持者らがワシントンの連邦国会議事堂を占領した。全世界に生中継されたこの衝撃的な場面は、米国民主主義が単なるレトリック以上の“重大な岐路”に立っていることを示した。同じ共和党出身のジョージ・ブッシュ元大統領さえ「こんなふうに選挙結果に異議を申し立てるのは、民主共和国ではなく、バナナ共和国(腐敗などで政局不安を負う国家に対する軽蔑)でこそ可能なこと」だと嘆いた。
「皆さんが徹底抗戦しなければ、もう祖国は存在しなくなるだろう。軟弱な者たちを追い出そう。力を示さなければならない時だ… 私たちは決して諦めることも、認めることもしない…私たちは連邦国会議事堂に行き、私たちの勇敢な上院・下院議員たちに喝采を送る」
この日、ワシントンの議事堂前で開かれた大統領選挙不服集会で、トランプ大統領は再び支持者を揺さぶった。現職大統領の扇動は惨事の前兆だった。50分間の演説の間、支持者たちはトランプ陣営の旗を振りながら「泥棒を阻止しろ」というスローガンを叫び、興奮した支持者の一部がすでに連邦国会議事堂の方に足を運び始めた。彼らは大統領選挙人団の投票結果を最終認証する上・下院合同会議が開かれる予定だった議会を暴力で占拠し、バリケードを壊していた女性が警察の銃で撃たれて死亡するなど、計4人が死亡した。
トランプ大統領は12月20日にもツイッターに「1月6日、ワシントンで大型抗議デモ。そこで暴れよう!」と事態を予告した。次期大統領選挙に出馬するテッド・クルーズ上院議員など共和党の上・下院議員たちも6日、議会の選挙人団投票結果の承認を拒否すると宣言し、絶えず大統領選挙不服世論を煽り立てた。結局、数千人がワシントンの連邦国会議事堂前に集まり、ジョージア州の州都アトランタなど各州の議事堂前にもトランプ支持者たちが集まった。事実上、全国的な“蜂起”だった。
ジョー・バイデン次期大統領は「デモではなく反乱だ」とし、トランプ大統領がこれを直ちに中断させるよう求めた。トランプ大統領はツイッターに上げた動画で「皆さんが傷ついたということは知っている。選挙が盗まれた…しかし、今は家に帰らなければならない」と述べ、彼らを「偉大な愛国者たち」と称賛した。
同日午後8時に再召集された上・下院合同会議は大統領選挙人団の投票結果の承認作業を再開したが、この日の事態を呼んだ米国の激しい分裂と不信は連邦国会議事堂で再び明らかになった。少なからぬ共和党議員が、一部激戦州の選挙結果に問題があるとして、州の投票結果に対する承認拒否を案件として発議した。
アリゾナとペンシルベニアの選挙結果承認拒否案件が受け入れられ、上・下院議員はそれぞれの議事堂に戻ってこれを決定する投票を行った。米議会は、このような前例のない難航の末、当初の日程を1日繰り上げた7日未明、選挙人306人を確保したジョー・バイデンの大統領当選を確定した。232人の選挙人を確保したトランプ大統領はようやく声明を発表し、「結果には反対するが、秩序ある政権移譲が行われるだろう」と述べた。
議会と行政府内外では、トランプ大統領に今後、残り2週間の任期も保障してはならないという憤りが沸き起こっている。実現の可能性は高くないが、修正憲法第25条を発動してトランプ氏を大統領職から引き下ろさなければならないという要求だ。CNNは共和党筋の話として、トランプ内閣の一部の構成員がこれについて事前に話し合っていると報じた。民主党の下院法制司法委員会の議員全員はこの日声明を出し、「大統領が職務にふさわしくない場合は、副大統領が内閣の同意を得て、その職を継承する条項である憲法第25条を発動すべきだ」と要求した。
米国が、国民の投票結果をめぐり裁判所や議会などに紛争が広がっている現実は、民主主義において最高の意思決定である主権者の投票など、民主主義制度が十分に作動していないことを示している。ジミー・ゴメス民主党下院議員は同日の事態について「クーデターがいかにして始まるのか、民主主義がいかにして死んでいくのかを物語っている」と悲観的な見解を示した。米国と全世界を驚かせた今回の事態が、民主主義制度の作動に対する新たな覚醒につながるのか、それともさらなる分裂と不信感をもたらすのかはまだ分からない。