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WTO世論固まるが米国は韓国候補支持…韓国は苦しい立場

登録:2020-10-30 05:39 修正:2020-10-30 07:09
米国、オコンジョイウェアラ候補のWTO事務局長選出を阻止 
ユ・ミョンヒ候補を支持し、「WTOを改革せよ」 
「米国だけオコンジョイウェアラ候補に反対」…米国の反対に加盟国が反発 
9日の会議で再議論…合意に至らなければ投票の可能性も
韓国産業通商資源部のユ・ミョンヒ通商交渉本部長(左側)とナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ元財務相=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 米国が世界貿易機関(WTO)事務局長選挙で多数の国家の支持を得ているナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ元財務相に公に反対し、韓国産業通商資源部のユ・ミョンヒ通商交渉本部長を支持すると明らかにした。しかし、WTOを無力化させた責任の当事国とみなされてきた米国の反対に対し、欧州など主要加盟国が強く反発し、中間に挟まれた韓国は苦しい立場に置かれた。

 WTOは28日午後3時(現地時間・韓国時間28日夜11時)、スイス・ジュネーブの本部で164の加盟国のジュネーブ駐在大使がすべて集まったなかで全体会議を開き、過去10日ほどの間に選好度調査を行った結果、オコンジョイウェアラ候補がより多くの票を得たと公開発表した。

 WTOのキース・ロックウェル報道官は、全加盟国会議後に記者団に「ある代表団が(会議で)オコンジョイウェアラ候補の立候補を支持できず、引き続き韓国のユ・ミョンヒ本部長を支持すると述べた。その代表団は米国だった」と明らかにした。ロックウェル報道官はまた、オコンジョイウェアラ候補に対する合意を確保しようとする「必死の行動」があるようだと述べ、欧州連合(EU)などが米国に対抗しオコンジョイウェアラ候補を強力に支持したことを示唆した。EUだけではなく、中国、日本、カナダなど主要加盟国も同候補を支持した。

 米国貿易代表部はこの日、声明を出し、「WTOはこの分野で実質的かつ直接的な経験を持つ者が率いるべきだ」とユ本部長への支持を明らかにした。貿易代表部は、ユ本部長が通商専門家として「特に優秀で」「この機関を効率的に率いるために必要なすべての技量を備えている」と付け加えた。声明ではオコンジョイウェアラ候補に対してはこれといった言及はなかった。

 米国はこの声明で、WTOに対する批判も吐露した。「25年間、多国間関税交渉はなく、紛争調停システムは統制が取れず、基本的な透明性の義務を守る加盟国はほとんどない」とし、「WTOと国際通商が極めて困難な時」を迎えていると批判した。

 WTO事務局長は全加盟国のコンセンサス(全体合意)を得て最終選出される。したがって米国はもちろん、韓国とナイジェリアも最終推薦候補に同意しなければならない。WTOはこの問題を再び論議するために、米国の大統領選挙後である来月9日に会議を召集した。ウォールストリート・ジャーナルは「11月9日の会議では、必要ならばこのような合意の前例を破り、最後の方法として投票が実施されることがありうる」と伝えた。EU加盟国のある代表は同紙に「投票になれば、ナイジェリア候補の勝利の可能性は99%」だと明らかにした。

 来月9日に開かれる会議は、米国大統領選挙の結果に影響されるとみられる。トランプ大統領が再選されれば、オコンジョイウェアラ候補に対する反対をさらに強力に押し付け、EUなどとの摩擦が大きくなるものとみられる。同盟国との貿易対立を緩和しようとするジョー・バイデン民主党候補が当選すれば、妥協の余地が生じることもありうる。

 ウォールストリート・ジャーナルは、大差をつけて支持を得たオコンジョイウェアラ候補に対し米国がブレーキを掛け、欧州各国と中国、カナダ、中南米および20カ国以上のアフリカ加盟国の代表が一斉に反発したと伝えた。EU所属のある代表は同紙のインタビューで、「米国が選出過程に問題を提起しようとするならば、もっと早くにしなければならず、そうすることができた」と批判した。

 米国のある高官は「WTOが(米国と)合意した支持を得られなかった候補を推し、米国が不満を提起した」とし、「WTOの選出委員会は米国の反対をよくわかっていた」と反論した。この高官は「米国がオコンジョイウェアラ候補に反対するのは、彼女が長い経歴を世界銀行で持つなど、通商分野の出身ではないから」だと説明した。また、米国がWTOを弱体化させようとするのではなく、ユ本部長がWTOのためのより強力な指導者だと評価した。

 WTO事務局長を任命する協議手続きを「コンフェッション」(Confession・告解)と呼ぶほど、各候補の得票数は徹底的に秘密にされる。韓国政府も具体的な投票結果を確認できなかったという。ただし、通知の過程で両候補間の票差が予想より大きいという事実を把握したことが伝えられた。韓国政府はユ本部長がオコンジョイウェアラ候補より約20票ほど少なかったと分析しという。

 WTOの規定上、選好度調査で得票が少なかった候補はただちに辞退しなければならないというわけではない。事務局長はコンセンサス(全体合意)で任命される方式なので、ユ本部長が終盤の逆転を狙い、11月9日までねばる方法もある。これに先立ち米国政府がユ候補に対する支持を約束し、韓国側に「辞退しないように」と立場を伝えたことが知られている。

 しかし、ユ本部長を支持する国が予想より少なく、辞退せず長くねばるのは難しいという観測が出ている。すでに情勢が固まったうえ、米国の行動をめぐる他の加盟国の反発が強いためだ。イ・ジェウン外交部副報道官は29日の定例会見で「今後の手続きに対しては内部での検討が進行中で、韓国政府は加盟国の立場と期待、WTO事務局長選出の手続きを尊重し、総合的な判断をしていく計画」だと明らかにした。

チョン・ウィギル先任記者、チョ・ゲワン、キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/967719.html韓国語原文入力:2020-10-29 21:49
訳M.S

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