米国ドルの世界支配力に対する小さいが興味深い挑戦が相次いで提起され、注目を集めている。このような挑戦は、ドルの世界支配を支える機関と評価される国際通貨基金(IMF)と、中国・ロシア・インドなどを中心とする新興5カ国(BRICs)から出たという点で、特に注目される。
IMFは最近、「有力通貨と外部調整」という分析資料を出し、「米国ドルが国際貿易と金融を支配する現在の状況が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機のショックをさらに大きくする余地がある」と指摘したと「フィナンシャルタイムズ」が20日(現地時間)、伝えた。
IMFのチーフエコノミストのギタ・ゴピナス氏らが作成したこの資料は、「世界がドルで貿易価格を定めてドル資金に依存する現在の状況が、政策討論の中心に浮上している」とし、「米国ドルの支配が、短期的には国際貿易と経済活動を阻害している」と診断した。
国際経済が停滞に陥り、最近、新興国の通貨のドルに対する為替レートが急上昇した。ブラジルのレアルは今年に入り価値が3分の1も下がり、メキシコのペソの価値も20%ほど減少した。このように為替レートが上がれば、価格競争力が高まり、輸出が増えるのが普通だが、世界経済の停滞により新興国の輸出増加効果は期待ほどではない。さらに、為替レートの変化に極めて敏感な外国人観光客の流入も、世界的な封鎖措置により期待できない状況だ。
為替レートの上昇は、一方で輸入品の値段を上げる効果を発揮するため、新興国としては国内の物価上昇という負担を負うことになる。新興国の通貨に対するドルの強気は、輸出不振と内需活性化の遅れという二重の困難を新興国に負わせている。「フィナンシャルタイムズ」は、金融市場で楽観論が広まり、世界経済の回復への期待感も強いが、ドルが再び強気を示せば、経済回復に冷や水を浴びせる危険があると指摘した。
新興国が米国ドルの代わりに自国または貿易相手国の通貨で取引すれば、ドルに対する為替レートの急変動の危険を大きく緩和できる。このようなドル脱皮への努力の産物の一つが、中国・ロシア・インド・ブラジル・南アフリカ共和国など新興5カ国(BRICs)が2015年7月に共同設立した新開発銀行(NDB)だ。
設立初期と異なりあまり注目されることがなかった新開発銀行が20日、ニュースの前面に新たに登場した。新開発銀行は同日、COVID-19のショックに苦しむブラジルに10億ドルを支援すると発表した。世界銀行などの国際金融機関が合わせて40億ドル(約4280億円)の支援策を用意するのに参加することにしたのだ。
ブラジル国営メディア「アジェンシア・ブラジル」通信はこれを「異例の」歩みだと解釈した。中国の上海に本部を置く新開発銀行は、ドル中心の金融秩序の代案を模索し、「持続可能な投資」を強調してきた。主に加盟国とアフリカの交通・エネルギー・水資源関連の事業を支援する同銀行がCOVID-19基金への支援に乗り出したのは、米国とドルが主導する国際金融市場での「存在感の誇示」の側面がある。同銀行は昨年、30億元(約5100億ウォン、約460億円)規模の債券の発行に成功するなど、米国ドルではない通貨を通じての基金の拡充も試みている。
ドルは軍事力とともに米国の世界支配力を支える2本の軸だ。米国はドルに対する挑戦を自国全体に対する挑戦と見なす。しかし、IMFと新開発銀行の小さな歩みは、ドルという難攻不落の城を叩く試みかもしれない。