激化する貿易戦争の中で、中国が誇る世界最大の通信装備企業の華為(ファーウェイ)が十字砲火を浴びるや、中国で反米ムードが沸き上がっている。
華為の任正非(Ren Zhengfei)会長は21日、中国中央放送(CCTV)とのインタビューで「個人と家族を犠牲にしながら世界の頂上にそびえ立つという理想を育ててきた。その理想のために、いつかは米国との軋轢を経ることになることは分かっていた」と話した。米国の攻勢は「世界の頂上」を奪われないための弾圧行為だと批判したのだ。
米国の政府と企業らによる取引制限措置に、中国では華為のスマートフォンに乗り換えようという愛国主義の波が起こっている。中国版ツイッターと言われる微博(weibo)で1893万人のフォロワーを率いる胡錫進「環球時報」編集局長は20日、「今日、華為の携帯電話に変えた。アイフォンを9年使ったし、アップル不買運動をしようというわけでもない。米国政府に不当な弾圧を受ける華為を支持する行列に参加しようとするだけ」と書いた。この文に、21日午前現在で4500件余りの支持コメントがついた。
抗日闘争を扱った1960年代の映画に出てくる曲に反米歌詞を加えた『貿易戦争』という歌は、ソーシャルメディアの微信(WeChat)で照会数が10万を超えた。「加害者があえて戦おうとするなら、私たちは彼が気を失うまで殴るだろう」というような歌詞を作った趙良田は「昨年、微信に上げた時は脚光を浴びなかったが、最近突然人気が沸騰した」と話した。
官営メディアも反米感情を刺激している。中国中央放送(CCTV)の映画専門チャンネルは16日、アジア映画週間の開幕式の生中継の代わりに「視聴者たちの要請」を理由に朝鮮戦争を扱った映画『英雄的息子と娘』を放映した。その後も毎晩のゴールデンタイムに朝鮮戦争で米軍と戦った中国軍の活躍を扱った映画を上映した。視聴者たちは「私たちは米国を怖れない。過去にもそうしたし、今もそうだ」などのコメントをつけている。
習近平国家主席は20日、貿易交渉代表の劉鶴副総理を連れて、貿易戦争再発以後初の地方視察に出た。新華社通信は、習主席が江西省の於都の大長征出発記念碑に献花したとし、数枚の写真と共に報道した。中国の指導部が、貿易戦争の長期化に備えて決意を新たにしているのではないかとの解釈を産む場面だ。江西省はレアアース生産の中心地で、習主席は現地の希土類採掘・加工施設も視察した。中国は世界のレアアース生産の90%以上を占め、米国は中国産レアアースには関税賦課を猶予した。官営メディアなどで「レアアースの輸出中断を報復カードとすべきだ」という主張が出ているのもそのためだ。