■独立的規制機関として信頼を得る
フィンランドでの使用済核燃料の公論化過程で注目すべき点は、監督機関であるストゥク(STUK)の役割だ。 フィンランドの原子力行政システムを見ると、許可と規定に関する責任は雇用経済部が、安全管理は放射線・原子力安全規制機関であるストゥクが担当する。 ストゥクは原子力関連規制・管理機能の他に、立法草案の作成と規制機関に対する職権制裁など強大な権限を持っている。 ストゥクの最も重要な原則は独立性だ。 リスト・パルテマ ストゥク核廃棄物規制担当官は「ストゥクは“安全”を扱う機関であり、政治的介入は受け入れない。徹底して専門家集団によって意志決定がなされる」と話した。
ストゥクのもう一つの役割は、国民に放射線と原子力の安全に関する情報を透明に提供することだ。 ストゥクの独立的地位に対する信頼が大きいので、国民はストゥクの情報を信じて判断の根拠とする。 使用済核燃料処分施設の敷地選定などの過程でストゥクは地域住民らと疎通する窓口の役割を果した。 主要意志決定などの基本情報はオンラインのホームページに公開して、地域住民と一年に一回以上の討論を行ってもいる。
この過程でのストゥクの最も重要な原則は、特定の方向を設定せずに、第三者として中立的な情報提供機能だけを果すということだ。 リスト・イサクソン ストゥク広報官は「私たちは安定性イシューに対する正確な情報を提供する。 ストゥクは特定の意見を持って国民を説得することはしない。 ある情報の正誤を判断するのは地域住民の役割だ。 ただし、多くの国民は原子力発電所のような複雑な懸案を敬遠する傾向があるので、ストゥクの規制行為が一人ひとりにどんな影響を及ぼすのかを明確に説明する責任が私たちにある」と話した。 ストゥクは疎通の最優先対象が原子力産業界ではなく地方自治体だという事実を明確にし、情報提供もやはり地方自治体の要求事項に基づいてなされる。
■エウラヨキの選択で得たものと失ったもの
エウラヨキは人口約6000人の小さな街だ。こちらにはオルキルオト原子力発電所1、2号基が運営中で、3号基が現在建設中だ。 エウラヨキでは1970~80年代に初めて原子力発電所が建てられた時も、核廃棄物は地域外に送り出されるものと考えられていた。 だが、1980年代初めに使用済核燃料の国外輸出入を禁止する法が制定され、使用済核燃料問題に対する地域議論が本格化した。
エウラヨキ市議会はオルキルオト最終処分場を誘致した当時、議会は20対7で賛成意見が上回った。 ペサ・ヤロネン市議会議長は「最も重要な考慮事項は、やはり安全性だった。 環境影響評価など政府が提供した資料に対する信頼があった。 私たちの地域に原子力発電所があるという責任感も影響を及ぼした」と話した。 だが、エウラヨキが最終処理場を誘致した背景には、雇用創出など地域に及ぶ経済的利益も影響を与えたと見られる。
安全性を経済的利益と対等交換をしたのではないかという憂慮に対して、エウラヨキ側は首を横に振った。 しかし、財政事情が良くなったのは事実だ。 元々農業基盤都市であったエウラヨキは、原子力発電所ができた後に脱農業化が急速に進んだ。 エウラヨキはオンカロ建設に投入された労働者たちから最近10年間に3000万ユーロ(約40億円)の税収を収めた。 エウラヨキの年間予算は5000万ユーロ(67億円)だ。ハリ・ヒティウェ エウラヨキ市長は「原子力発電所と使用済核燃料最終処分場の誘致で非常に大きな雇用創出効果を起こした。 観光客も多くなった」と話した。