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「半導体強国」のはずの韓国、米中の半導体戦争では“みそっかす”?

登録:2022-08-31 07:40 修正:2022-08-31 09:21
[ハンギョレ21] 
米国、「半導体と科学法」で中国を牽制 
中国、2025年までに自給率70%を目指す「半導体崛起」 
その間で韓国の戦略は
尹錫悦大統領と米国のジョー・バイデン大統領が2022年5月20日、京畿道平沢にあるサムスン電子の半導体工場でサムスン電子のイ・ジェヨン副会長の案内を受け、生産施設を見学している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 サムスン電子のイ・ジェヨン副会長は、光復節の復権後初となる公式の動きとして、2022年8月19日、京畿道龍仁(ヨンイン)にあるサムスン電子器興(キフン)キャンパスで開かれた次世代半導体の研究開発団地の起工式に参加した。サムスン電子は、2028年までに20兆ウォン(約2兆円)を投入し、合計10万9000平方メートル(3万3000坪)規模の研究開発団地を建設する計画だ。器興の半導体研究開発団地は今後、非メモリー半導体とメモリー半導体の核心分野の研究基地の役目を担う。

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米国が掲げる対中国「デジタル万里の長城」

 器興キャンパスは、1983年にサムスン電子が半導体事業を始めた場所という象徴的な意味がある。イ副会長は起工式で「40年前、半導体工場を作るために最初のシャベルが動いた器興事業場で、新たな挑戦を始める。次世代だけでなく、次々世代の製品に対する果敢な研究開発への投資がなければ、今日のサムスン半導体は存在できなかっただろう」と述べた。会場に設置された大型の画面には、イ副会長の祖父であるサムスンの創業者イ・ビョンチョル会長が生前、半導体技術の開発を強調した言葉も紹介された。

 サムスン電子の動きがスピードをあげた理由は、最近になり、朝鮮半島をめぐる半導体開発戦争が激化しているためだ。特に、中国を狙った米国の圧力が強まっている。米国はジョー・バイデン大統領の就任後、本格的に半導体のサプライチェーンを自国中心に再編し、中国が先端半導体技術の開発を進められないよう妨げることに注力している。いわゆる「デジタル万里の長城」を建てようとするものだ。バイデン大統領は2022年8月9日(現地時間)、自国の半導体産業を育成する「半導体と科学法」(CHIPS and Science Act of 2022=CHIPS法)に署名した。この法律には、米国内での半導体製造施設の新設・増設に補助金を支援し、投資金額の25%を税額控除の形式で返すなど、計2800億ドル(約38兆円)の財政を投入する内容が含まれている。

 サムスン電子は現在、米国南部のテキサス州テイラー市に170億ドル規模のファウンドリ(委託生産)工場を作っている。SKグループは、半導体分野への150億ドル投資をはじめ、米国に計220億ドルを投資する計画だ。両企業はいずれも米政府のインセンティブを得るものと予想される。

 問題は別にある。「CHIPS法」は、米政府のインセンティブを得た企業は今後10年間、中国などの「要注意国家」に先端半導体技術が用いられる施設を追加で作ることができないように規定している。サムスンとSKハイニックスは、中国にメモリー半導体とパッケージ(後工程)工場を運営している。米国商務省は今後、具体的な規制基準を用意する計画だ。制裁の水準によっては、サムスン電子とSKハイニックスも中国の工場に先端設備を導入できなくなることもありうる。サムスン電子は、自社のNANDフラッシュメモリの出荷量の40%を中国で生産している。世界のNANDフラッシュメモリ市場の15%に相当する。米国の半導体専門メディア「セミアナリシス」の首席アナリストのディラン・パテル氏は、2022年8月21日(現地時間)付の「フィナンシャル・タイムズ」に、「米国の中国輸出制限が韓国のメモリー半導体企業に影響を与え、中国での生産シェアは時間を追うごとに大きく減少するだろう」と述べた。

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2000年の中国向け半導体輸出の割合3.2%、2021年は39.7%

 サムスンとSKハイニックスは、世界のメモリー半導体の製造シェアの1位と2位を占めている。中国の工場で生産に支障が生じる場合、韓国製メモリーを供給されるアップルなどの主要なグローバル企業も、完成品の生産に打撃を受けることが起こりうる。そのため、米国企業の反発が予想され、規制の強度は強くないという予想もある。産業研究院のキム・ヤンペン専門研究員は「米国が制裁の程度をどの水準に置くかがカギだ。施行令が本格的に作られてからの米国企業の対応をみて、私たちも対策を講じなければならない」と述べた。

 米国はその他に、韓国と日本、台湾とともに、半導体サプライチェーンの安定を図ろうとする協議も強化している。米国のナンシー・ペロシ下院議長は、2022年8月3日の台湾訪問で、世界最大の委託生産企業TSMCの劉徳音会長と面談し、半導体分野での協力を論議した。米国は半導体の設計と装置の分野で強く、韓国はメモリーと委託生産、台湾は委託生産、日本は半導体用素材と装置の分野で強い。韓国メディアは、米国が主導する韓国・日本・台湾との半導体サプライチェーン協議体について、「チップ4(CHIP4)」または「FAB4」という用語で呼んでいるが、現時点では米国の具体的な要求事項は明らかになっていない。

 専門家らは、各国は協力関係にあり競争相手でもあるため、先端技術の交流よりも、当面はサプライチェーンの不安定問題を解決しようとする協議体の性格になる可能性が高いと予想している。韓国半導体産業協会のアン・ギヒョン専務は「半導体業界はグローバル分業体制から自国中心体制に変わる過程にいるが、米国は半導体の国産化に長い時間を要するため、中間過程でサプライチェーンの安定のために、いわゆるチップ4を運営している」としたうえで、「私たちも最終的には自国化をしなければならないが、私たちの弱い分野である素材・部品・装置は自国化が難しいため、グローバル分業体制もうまく維持しなければならない立場」だと述べた。

 中国は世界の主要な半導体需要国であり、韓国の主要な貿易相手国だ。2021年の韓国の半導体輸出のうち中国に輸出した割合は39.7%だ。韓国全体の輸出に中国が占める割合(25.3%)よりはるかに大きい。大韓商工会議所の資料によると、2000年には半導体輸出のうち中国に輸出した割合は3.2%に過ぎなかった。半導体以外には、精密機器やディスプレイなどの技術集約産業の中国輸出の割合も増えた。大韓商工会議所側は「国内の高付加価値産業の中国依存度の増加は、中国との技術格差が狭められた時に打撃を受ける可能性が高いという意味」だとしたうで、「技術革新と輸出多角化のために、企業と政府が全力を尽くさなければならない」と述べた。

 半導体を中心に、中国と経済的に固く結ばれた韓国の立場としては、米国と中国の半導体戦争の間で中核となる利益を守るために、綱渡りをしなければならない状況にある。最近、米国が半導体支援法を制定し、中国を排除したインド太平洋地域の経済協議体である「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を推進しているため、中国はそのような動きに神経をとがらせている。

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中国、韓国半導体企業に対する買収・合併を増やす

 2022年8月24日、韓中国交正常化30周年の記念式で、ケイ海明駐韓中国大使は「韓中関係は多くの困難を経験しているが、よりいっそう成熟し健康な関係になるための段階だと思う。国際的な地域形勢がいかに変わったとしても、国交正常化の初心を守ろう」と述べた。米国の中国牽制にもかかわらず、両国の経済協力を強固にしなければならないという意味と読み取れる。

 韓国は、米中半導体戦争を外交的に解決しなければならない一方、中国との技術格差も維持しなければならない課題を抱えている。半導体の独自技術が不足している中国は、2015年に「中国製造2025」戦略を掲げ、2025年までに半導体自給率70%を達成するという目標を提示した。いわゆる「半導体崛起」宣言だ。2020年時点での中国の半導体自給率は15.9%の水準であるため、目標は達成できない。中国は2021年3月に発表した「第14次5カ年計画および2035中長期目標」でも、半導体を戦略育成分野に選定し、大規模資金を投入して先端半導体産業を育成している。2019年には国家半導体基金が290億ドル規模で運営され始めた。

 中国系私募ファンド「ワイズロードキャピタル」は、2021年に韓国の半導体企業でナスダックに上場した「マグナチップ半導体」を買収しようとした。しかし、米国の外国人投資審議委員会が不許可とし、買収は失敗に終わった。対外経済政策研究院のヨン・ウォンホ経済安全保障チーム長は、2021年に出した報告書(「米中対立と中国の半導体産業育成戦略および展望」)のなかで、「中国は、米国と日本に比べ相対的に外国人投資の審査制度が緩い韓国の半導体企業を相手に、買収や合弁の試みを増加させると予想される。韓国政府が関連制度の強化をすみやかに行う必要がある」と述べた。

 韓国半導体ディスプレイ技術学会の会長を務める漢陽大学のパク・ジェグン教授(融合電子工学部)は、「中国は半導体技術の開発を政府が主導するため、追撃のスピードが速い。メモリー半導体は中国が追いつけないようはるかに格差のある技術を維持し、私たちが弱い素材と装置部門もグローバル企業と競争できるよう、積極的な投資をしなければならない」と述べた。

イ・ギョンミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://h21.hani.co.kr/arti/world/world_general/52499.html韓国語原文入力:2022-08-30 09:56
訳M.S

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