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韓国与野党の若い代表たちが「看板から辺境へ」押し出された本当の理由

登録:2022-08-20 04:33 修正:2022-08-20 11:04
[ハンギョレ21]チョ・グィドンの経済遺表 
ジェンダー対立にもとづく政治は拡張性、凝集性、忠誠度に限界 
イ・ジュンソクの保守発ジェンダー政治は続く可能性大
国民の力のイ・ジュンソク前代表が6月12日午後、ソウル汝矣島の国会で行われた党代表就任1周年記者懇談会で発言している。共に民主党のパク・チヒョン前共同非常対策委員長が4月8日、国会で行われた非常対策委員会で発言している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 大統領選挙、地方選挙と続いた選挙局面が終わった後、与党「国民の力」と野党「共に民主党」でそれぞれ看板の役割を果たしてきたイ・ジュンソク前代表とパク・チヒョン前非常対策委員長が力を失い、辺境へと押し出された。2人が墜落した構造的要因は、「イデナム」(20代男性。主に反フェミニズム・保守性向の20代前後の男性たちを指す)・「イデニョ」(20代女性。主にフェミニズムに肯定的な20代前後の女性たちを指す)を押し立てることでは有意義な政治勢力が作れなかったということだ。

 特定の有権者集団を基盤として支持連合を作るために必要なことは3つ。まず拡張性だ。他の有権者集団と共通の利害関係やアイデンティティを構築しなければならない。次に広範な問題について声を一つにできる凝集性だ。最後の条件は、特定の政党や政治家に対する高い忠誠度だ。ジェンダー対立にもとづく政治では、この3つの条件を満たすことは難しい。

旧東ドイツに類似する「イデナム」

 「イデナム」政治は韓国のみの現象ではない。2010年以降に登場した欧州の極右諸政党は、反フェミニズムを前面に掲げる。代表的な例が「ドイツのための選択肢(AfD)」だ。AfDは「ジェンダー・イデオロギー」が伝統的な家族の崩壊と社会の混乱を引き起こしたと主張する。スペインの極右政党「ボックス(VOX)」は2019年の2度の総選挙キャンペーンの時期にインスタグラムに237件をアップしたが、その中の35件(14.8%)がフェミニズムを攻撃する内容だった。

 AfDの支持基盤は旧東ドイツ地域の男性たちだ。彼らは立ち遅れた経済状況に加え、自身が「2等市民」として扱われているという不満が強い。ここに若い女性たちの大規模移住による極端な男女比の不均衡が加わった。2015年時点で旧東ドイツ地域のザクセン・アンハルト州は20~44歳の男女比が女性100人に対して男性117.9人。連邦参議院のペトラ・ケッピング議員(社会民主党)は、極右政治の研究過程で出会ったある男性が「もしあなたが私に配偶者を探してくれるなら、(反イスラム移民運動である)ペギーダのデモに参加するのをやめます」と語ったことを「ニューヨーク・タイムズ」に紹介している。

上が表1「出生年別男女比」。折れ線グラフが女性100人に対する男性の人数(左目盛り、単位:人)、棒グラフが女性100人に対する男性の超過規模(右目盛り、単位:万人)。下が表2「伝統的男性性規範に対する拒否の割合」//ハンギョレ新聞社

 韓国の20代の男性がさらされている状況は、旧東独地域と類似している。2020年現在の出生年別の男女比を見ると、1984年生まれまでは女子100人に対して男性は104.7人だが、1989年生まれは男性111.4人、1994年生まれは116.2人に跳ね上がる。2000~2005年生まれの平均男女比は女性100人に対して男性108.1人だ(表1参照)。経済構造の変化と女性の教育機会の拡大によって、若い男性が質の良い雇用先を得る機会は相対的に減少した。

 しかし彼らは伝統的で家父長的な男性性を拒否する。正確には、父親の世代のように生きられないから「義務」も負わないという立場だ。女性政策研究院のマ・ギョンヒ研究委員の2019年の報告書「変化する男性性と性差別」によると、「家族の生計の責任は男が取る」との項目に「同意しない」と答えた割合は、40代男性が16.3%、30代男性が25.0%、20代男性が41.3%だった(表2参照)。2020年に経済・人文社会研究院が発行した報告書「青年の観点からのジェンダー対立診断と包容国家のための政策的対応策の研究」によると、青年は、強い男性性を求められること▽生計扶養圧力▽男性非難・蔑視などの項目で既成世代(現在の社会の主流である壮年層)より社会的圧力をより大きく感じると回答した。

イデナムとイデニョの共通点

 結局、古い「義務」を強要する社会に対する怒りの表出こそイデナム政治の要だ。軍務や女性家族部に敏感なのは、不当な差別を受けているという認識によるものだ。したがって実利的であり、価値志向的なものとはかけ離れている。内的凝集力も弱い。一方、他の有権者集団に対する拡張性は低い。ある人にとって必要な制度や予算をなくすことにエネルギーを注いでいるからだ。保守の立場にとっては鶏肋のような存在にならざるを得ないわけだ。

 青年女性たちは既成世代に比べてジェンダー意識が強く、女性に加えられる暴力に敏感だ。共に民主党のパク・チヒョン前非常対策委員長の最も目を引く経歴が、サイバー組織性犯罪「テレグラムn番ルーム事件」の追跡であることが代表的な例だ。先に紹介した経済・人文社会研究院の報告書は、19~34歳と35~59歳の女性にそれぞれ、各犯罪類型に不安をどれほど感じるかを尋ねている。「違法撮影」に不安を感じる青年世代の割合(60.4%)は既成世代(33.5%)の1.8倍、「殺人・暴力・強姦」に不安を感じる青年世代は1.76倍(青年世代53.4%、既成世代30.3%)だった。

 仁川大学のパク・ソンギョン教授の研究(「ジェンダー内の世代格差か、世代内のジェンダー格差か」、2020年)によると、1980年以降に生まれた女性たちは伝統的な男女の役割分担と家父長文化に反対しており、その強度は1990年代生まれが最も強かった。しかし、国の介入や福祉の拡大などの社会・経済的領域に移ると、20~30代の女性とそれ以外の女性または男性の集団には差がなかった。

 多くの研究は、親が多くの資産を持ち階層や地位の高い青年たちは、男女を問わず税に否定的で、経済的地位は各自の能力に沿ったものだとの考えが強いことを示している。韓国リサーチが2021年7月に実施した調査によると、フェミニズムを支持するの20代女性の割合は、高所得・高学歴であるほど高かった。月所得額ごとに見ると、平均200万ウォン(約20万5000円)未満ではフェミニズムを支持すると答えた人の割合は22%、200万~399万ウォンは27%、400万(約41万円)~599万ウォン(約万円)は38%、600万ウォン(約61万5000円)以上は47%だった。

 若い女性たちのジェンダー政治での要求は犯罪・安全問題に集中する可能性が高い。福祉、税などの生計の問題がジェンダー問題とつながる可能性は低い。これこそ、パク・チヒョン前委員長が代替材の求めやすい「ジェンダー・ワンツール(できることが一つだけの選手)」の枠組みに閉じ込められてしまった構造的原因だ。

若い女性のジェンダー政治は犯罪・安全問題

 ジェンダー対立構図で損をするのは国民の力の側だ。ギャラップの政党支持率の推移を見ると、20代男性の保守政党支持率は2013年上半期には平均33.5%だったが、2021年下半期は38.2%で4.7ポイント上昇している。逆に20代女性の同支持率は同じ期間に23.2%から10.3%へと12.9ポイント下落した。イ・ジュンソク前代表の立場が狭まった背景には、この20代女性の「保守に対する極度の嫌悪」感情がある。しかし逆に、イデナムなしには党内政治で優位に立つのは難しいということも意味する。イ・ジュンソク前代表以降も保守発のジェンダー政治が続く可能性が高く見える理由はここにある。

チョ・グィドン|『全羅ディアンの絆』著者、『朝鮮ビズ』記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1055404.html韓国語原文入力:2022-08-19 11:46
訳D.K

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