サムスン電子やSKハイニックスなどの韓国の大手企業が、業界の超好況に支えられて世界トップクラスの利益を上げている。一方、韓国固有の財閥体制に由来するいわゆる「K-支配構造」に対する批判も再び強まっている。韓国の政府と政界は制度の改善には手をつけず、むしろさらなる規制緩和に乗り出しており、波紋を呼ぶものとみられる。
10日に行ったハンギョレの取材によると、政府と与党は「メガ特区特別法」に、財閥系大企業の循環出資規制を緩和する内容を盛り込む方針を固めたことが分かった。具体的には、与党と政府は、一般持株会社の子会社および孫会社がグループ内の他の系列会社の株式を保有できるよう、いわゆる「水平出資」を認める案を検討している。湖南(全羅道地域)半導体クラスターなど政府の「3大メガプロジェクト」を支援するため、首都圏以外のメガ特区における半導体、人工知能(AI)データセンターなどの先端戦略産業への投資に限り、特別法を通じて規制を緩和する計画だ。与党「共に民主党」は、この法案を今月中に発議し、9月の定期国会での可決を目指している。
政府の主要関係者は、「当初はすべての業種を対象に持株会社の出資制限を解除しようとしたが、規制担当省庁の公正取引委員会との協議過程で、業種の範囲を狭めることにした」とし、「関連する規制緩和案がメガ特区法に含まれる可能性が高い」と述べた。
現行の公正取引法では、SKやLGなどの持株会社体制のグループの場合、「持株会社→子会社→孫会社」へと続く垂直出資のみを認めている。例えば、グループの最上位の支配会社であるSK株式会社の子会社のSKスクエアは、孫会社のSKハイニックスの株式を20%以上保有しなければならず、SKハイニックスが曾孫会社を持つためには、当該会社の株式を100%保有しなければならない。
しかし、水平出資を認めた場合、SKハイニックスがSKテレコムやSKイノベーションなど他の系列会社に出資したり、複数の系列会社が共同出資を通じて合弁会社を設立したりすることが可能になる。匿名希望のある財界関係者は、このような案について「かつて財閥の蜘蛛の巣のように絡み合った循環出資を解消し、支配構造の透明性を高めるとして導入された持株会社制度の根幹を崩すもの」だとし、「通貨危機以前のような財閥の護送船団方式を再び容認することになる」と指摘した。
もう一つの規制緩和策は、持株会社の孫会社が首都圏以外の曾孫会社を設立する際、義務保有持分率を現行の100%から50%に引き下げる案だ。民主党は政府との協議を経て、すでにこうした内容を骨子とした「国家先端戦略産業特別法」(国家先端戦略産業の競争力強化および保護に関する特別措置法)改正案を発議している。この法案が可決されれば、SK株式会社の孫会社であるSKハイニックスが半導体で得た利益を他の系列会社の支援に充て、肝心の湖南半導体工場の建設には、国民成長ファンドなど外部からの投資資金を最大で半分まで受けることができる。
政府と与党は、民間企業による首都圏以外への先端産業投資拡大に向けた規制緩和を大義名分として挙げているが、大規模な投資計画を策定した持株会社体制の主要大企業グループといえばSKグループくらいであるため、SKグループが今回の規制緩和の最大の受益者になると見込まれている。漢陽大学のイ・チャンミン教授(経営学)は、「最近進められている法案の最大の問題は、SKのためだけの特注の優遇措置である点だ」と指摘した。一方、SKの関係者は、「特定の企業一社だけで大規模な投資を負担するのは難しいため、規制緩和を通じて多様な協業構造を構築できるだろう」と述べた。
サムスンの場合、グループのトップであるサムスン電子のイ・ジェヨン会長のための支配構造がサムスン電子の株主還元を阻害しているとして、市場の批判を受けている。イ会長が保有するサムスン電子の株式は、6月末時点で全体のわずか1.67%に過ぎない。ところが、サムスングループは、いわゆる「イ物生電」(イ・ジェヨン→サムスン物産→サムスン生命→サムスン電子)という持株の連鎖を通じて、イ会長のサムスン電子に対する支配力を確保している。
このように、グループのトップが金融系列会社を活用してグループの中核企業の支配力を維持する構造は、グローバル企業の中でも珍しい。こうした支配構造のせいで、サムスン電子が半導体事業で得た利益を一般株主に還元することにも少なからぬ制約があると指摘されている。
その代表的な事例が、先月21日にサムスン電子が株主還元策の一つとして今年第3四半期(7~9月)中に30兆ウォン(約3兆4300億円)前後の現金配当を発表したが、肝心の株主が期待していた自社株(企業が取得した自己株式)の買い入れ・消却策はそれに含まれなかったことだ。企業の自社株買いは義務ではないが、株価押し上げ効果の高い代表的な株主還元手段が排除されたことで、市場からは失望の声があがった。サムスン電子が自社株の消却を積極的に活用しなかった背景には、グループのこうした支配構造がある。サムスン生命とサムスン火災が保有するサムスン電子の普通株式が、すでに「金融産業構造改善法」上の上限である10%に迫っているためだ。サムスン電子が普通株の自社株を消却すれば、発行済み株式総数が減少し、サムスン生命とサムスン火災の持株比率が上昇するため、両社は10%を超える持分を追加で売却しなければならない。グループの支配力を維持するため、金融系列会社がサムスン電子の持分を保有するという支配構造が、自社株の消却という株主還元方式にも制約となっているのだ。
特にサムスン生命の場合、過去に販売した「配当付き保険商品」の契約者が支払った保険料でサムスン電子の株式を一部確保したため、サムスン電子の現金配当やサムスン生命によるサムスン電子株式の売却などで巨額の差益が生じると、配当付き契約者に対しても一定割合の差益を還元しなければならない義務が生じる。サムスングループの支配構造におけるアキレス腱とされる「イ・ジェヨン会長による金融系列会社を通じたサムスン電子の支配」の問題点が再び浮上する恐れがあるため、サムスン電子の株主還元における裁量の幅も狭まらざるを得ない構造となっている。
これに対し、サムスンの関係者は「サムスン電子の自社株買い・消却を通じて株価が上昇すれば、今後、半導体部門の従業員への業績給として支給される株式数が減少するという問題もある」とだけ述べた。韓国企業ガバナンスフォーラムのイ・ナム会長は、「サムスン電子の株価は利益に比べて過小評価されているだけに、自社株の買い入れ・消却を最優先とし、配当を次善の策とするのが一般的だ」とし、「サムスン電子の取締役会がこうした議論を行う専門性を持っているのか疑問だ」と語った。