21世紀に入り、文化の韓流が世界の人々を魅了している。ところが、関連の専門家だけが知っていて、数年前から大衆にも有名になったもう一つの韓流がある。それが「K-防産(防衛産業)」だ。新冷戦時代が到来し、優れた性能と価格の合理性を備えた韓国製兵器の輸出が爆発的に増えた。もはや韓国の防衛産業は、米国、ロシア、中国、フランス、日本、英国、ドイツ、スウェーデンなどと先端防衛産業部門で肩を並べる水準に達した。
最近になってK-防産は新しい転換点を迎えた。テスラのイーロン・マスク最高経営者(CEO)が設立したスペースXが民間宇宙市場の大手として浮上し、いわゆる「ニュースペース時代」を切り開いたためだ。大韓民国の宇宙関連の体系も動いている。2024年5月に宇宙航空庁が発足し、宇宙企業が多数出現して、意味ある成果を上げ始めた。もはや韓国は、K-防産を超え、K-宇宙防産に進む重要な時期を迎えた。これがまさに、国防科学研究所のパク・ジョンスン前所長と宇宙発射体スタートアップのシム・スヨン副社長がこの本を書くことになった理由だ。
■6G時代の方向性を提示
この本は33年間にわたり国防科学研究所で宇宙科学技術と戦略兵器の開発を主導してきたパク・ジョンスン前所長と、外交部でミサイルや宇宙発射体などのイシューを担当し、現在は韓国宇宙発射体のスタートアップの戦略部門を担当しているシム・スヨン副社長の対談で構成されている。技術的に難しいイシューを質問と対談を通じてあきらかにすることで、関連知識の少ない読者にも理解しやすくなっている。
パク・ジョンスン前所長はシム・スヨン副社長の質問に答えながら、第6世代(G)と宇宙技術に代表される新しい時代の到来について話す。「リアルタイム」通信の場を開く6G技術、低軌道衛星、衛星偵察技術とデータなどを基盤に、目覚ましく発展する宇宙産業。著者は今後訪れるこうした変化がどのような様相で繰り広げられるかを紹介しながら、私たちはどのように準備すべきか方向性を提示する。
著者によると、未来の戦場は常時監視と超知能判断、超高速対応が可能なシステムに進化するという。数百個の自律群集衛星が地球軌道で動き、戦場をリアルタイムで観察し、地上と宇宙のすべての領域を統合的に連結して作戦を遂行する時代が来たということだ。今までは人がデータを解釈して対応したが、人工知能(AI)基盤の宇宙状況認識は「脅威感知-判断-対応」まで自動的にでき、リアルタイムで敵の衛星の動きを追跡し、必要時に資産を再配置できるレベルだという。
このような時代をうまく準備して迎えるためには、韓国も国内の体系の中で技術を発展させ、持続可能な宇宙安全保障力を確保する方向に行かなければならないというのが、著者の一貫した主張だ。特に、国内衛星システムとAI分析プラットフォームの連動性強化、そして独自のデータセット確保が重要なので、米国の事例のように民間商用衛星を通じたデータ収集も戦略的に検討する時点だという。この他に、宇宙と防衛産業分野で韓国企業が進むべき戦略的方向性と役割を提示し、技術移転問題など民・官・軍の統合戦略がなぜ必要なのかを説得力をもって説明する。
この本がなぜ宇宙産業と防衛産業の未来の方向性を決定するのに重要なのかは、学界、政界、実業界など多様な専門家6人の推薦の言葉を読むだけでも十分に見当がつく。特に宇宙強国に浮上するために未来の大韓民国が熟慮しなければならない部分を次々と指摘したという航空大学総長の推薦の辞、民・官・軍の統合戦略がなぜ必要なのかを説得力をもって語ってくれるという国防部長官の推薦の辞、宇宙産業の全周期にかけて準備しなければならない資産とガバナンスをバランスよく扱っているという防衛産業体代表の推薦の辞が、この本の中心となる内容をよく表わしている。
近いうちに日常化される6G技術とAI時代がもたらす変化、ロシア-ウクライナ戦争で表れた各種の宇宙技術の活用を考慮すると、宇宙を単純に地球外の遠いところと考えていた時代はもはや過ぎたとみなければならない。すでに宇宙は国家戦略と産業競争力の中心課題として位置づけられている。今や宇宙は我々の日常の一部になり、宇宙関連産業は最も注目すべき未来の成長動力になるだろう。
したがって、著者の言うように汎政府レベルで「宇宙技術統合調整体制」を作り「民・軍融合宇宙ロードマップ」を樹立し、産業構造を研究開発中心から「産業中心」に再編すると同時に、宇宙産業に挑戦できる「人材」をうまく育成すれば、韓国も近いうちに宇宙強国となることができるだろう。そのような点で、この本は現在宇宙産業に従事している人々だけでなく、未来の大韓民国の発展と宇宙産業の成長に関心あるすべての人が必ず一度読んでみなければならない必読書と言える。