今年、韓国経済は0.8%の成長にとどまるだろうという韓国開発研究院(KDI)の予測は、来月初めに発足する新政権にとって険しい道が待っていることを意味する。大規模な国政課題の第一歩を踏み出すべき政権初期から、景気管理という厳しい課題を抱えることになったからだ。景気上昇局面で政権を始めた文在寅(ムン・ジェイン)・尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の時とは異なる様相だ。
■収縮局面に入った韓国経済
KDIが14日に発表した「修正経済見通し」は、韓国経済が収縮局面に入っていることを如実に示している。今年の成長率(0.8%)は昨年(2.0%)の半分にも及ばず、来年も1.6%にとどまると同研究院は見込んだ。韓国経済の成長率が1%を下回るのは、2000年以降ではグローバル金融危機(2009年は0.8%)とコロナ危機(2020年はマイナス0.7%)の2回だけだ。ドナルド・トランプ米政権の関税戦争が輸出中心の韓国経済を強打した影響は大きいが、異例水準の低成長の原因は外部だけでなく、長期化する内需不振にあるといえる。
特に目を引く部分は雇用の見通しだ。研究院は、今年の雇用は前年より9万件増にとどまり、来年(7万件)には増加幅がさらに縮小するだろうと見込んだ。2023年は33万件、昨年も16万件の雇用増だった点を考えると、雇用成長の鈍化が非常に速いことがわかる。雇用は家計の所得と消費に直接影響を及ぼし、急激な雇用鈍化は社会セーフティネットに対する需要増大につながり、政府財政に負担として作用する。今年(1.7%)はもちろん、来年(1.8%)にも消費者物価上昇率が適正水準の2.0%を下回るという見通しも、収縮中の韓国経済のもう一つの断面だ。
■景気対応の空白期間は長くなるのか
これは過去の文在寅政権、尹錫悦政権の開始時とは違う景気の流れだ。文在寅政権は、グローバル金融危機やその後の欧州債務危機などの影響で長期低成長に陥っていた韓国経済が回復し始めた2017年に発足した。尹錫悦政権もまた、新型コロナウイルス感染症の大流行が終わりかけていた2022年に政権を始めた。景気が底をついた後の時期にスタートしたため、「所得主導成長」(文在寅政権)と「健全財政」(尹錫悦政権)というそれぞれの国政課題を推進できた。
景気が落ちているが、政権獲得を望む主要政党の大統領候補らは、これといった公約や政策案を出していない。最近公開した10大公約にも景気振興に役立つほどの「財政戦略」や「雇用公約」は含まれなかった。新政権発足後、少なくとも1カ月余りかかる内閣人選などを念頭に置けば、「景気対策の空白期」が長くなる恐れもある。
このような理由から、来週に予定されている韓国銀行金融通貨委員会の会議に対する注目度が高まっている。政界と政府が「大統領選挙」と「大統領罷免」で足止めされている状況で、韓銀の通貨政策に頼るほかはないためだ。市場では基準金利引き下げの可能性が高いとみている。家計負債の増加傾向が異常な流れを見せていないうえ、ウォン-ドル為替レートも昨年末と年明けに比べて安定傾向を示しているためだ。韓国銀行のイ・チャンヨン総裁も最近、「金利を十分に引き下げることもできる」と述べた。野村證券のエコノミストのパク・ジョンウ氏も「関税不安の他にも、韓国経済の大きな問題は内需があまりにも不振だという点」だとし「新政権が追加補正予算を編成し、韓銀の基準金利引き下の効果が現れれば下半期には景気が多少改善されることもありうる」と話した。