米国の造船業復活政策により韓国の造船会社には恩恵が続いている。米国は韓国に対し、ガス運搬船の建造、軍艦の維持・補修・整備(MRO)などの協力を積極的に要請している。ただし、これからも恩恵を受けるためには結局、米国内の造船所を確保しなければならず、国内の造船業界が手放しでは喜べない状況だ。ドナルド・トランプ米国大統領の政策によって仕事が増える一方、時間が経つにつれ、米国で船を作るよう圧力を強めてくる可能性が高いためだ。立ち遅れた米国の造船所を現代化するためには莫大な投資が必要だ。
トランプ大統領が9日(現地時間)に署名した行政命令「米国の海洋支配力回復」は長期・短期の目標が明確だ。短期的には同盟国の助けを受け、長期的には造船業の自立を成し遂げることだ。韓国にもたらされる短期的な恩恵は2つだ。まず、米国が韓国の造船所に多くの業務を委託する可能性だ。米国は、自国の建造船舶だけに米国内の港での通行を認める法律(ジョーンズ法)と、軍艦の建造と修理を米国の造船所で行うことを義務付ける法律(バーンズ・トレフソン法)をそれぞれ持っている。しかし例外条項を適用し、韓国で建造された液化天然ガス(LNG)船などを購入し、軍艦の維持・補修・整備と新規軍艦の建造なども韓国造船所に任せる可能性がある。昨年12月に米議会に発議された「船舶法」は、米国の商船数を250隻に増やすプログラムに同盟国の建造商船も参加できるようにした。また、現行の「バーンズ・トレフソン法」は海外配置の艦艇、沿岸戦闘艦は外国造船所でも維持・補修・整備が可能なよう例外を設けている。大統領が例外を承認すれば、新規軍艦も外国造船所の建造が可能だ。これに先立ち、トランプ大統領は10日「米国と近くて造船実績が立派な国で船舶を購入することができる」と述べた。
また、米国通商代表部(USTR)が18日、中国製船舶に入港手数料を賦課したことで、世界の海運会社が韓国船舶を選ぶようになった点も注目に値する。ドイツ海運会社のハパクロイドは最近、船舶発注契約を中国造船会社から韓国造船会社(ハンファオーシャン)に変更した。
問題は短期的な恩恵が終わってからだ。トランプ大統領は常に自国への投資誘致を目指している。米国の造船業が自立する準備が整ったと判断すれば、突然同盟国に適用してきた例外措置を取り消し、米国現地で船舶を建造するよう圧力を加える可能性がある。米議会も今年初め、外国の造船所で軍艦の建造が可能な法改正案を発議したが、積極的な議論は行われていない。
米国造船業の自立を目指す動きは行政命令と通商代表部の措置のあちこちにも現れている。行政命令には「同盟国の米国投資インセンティブ」が言及されており、入港手数料政策には2028年から米国産のLNG輸出量の一部については、米国で建造された船舶のみが運送を認められるという内容が含まれた。3年後からは米国で建造された船だけを使うという意味だ。
韓国の造船会社は、米造船所の確保を慎重に検討している。その際、ハードルになるのは大きな投資費用だ。21カ所だけが残っている米国内の造船所は、施設が立ち後れているだけでなく、協力会社、専門人材などのサプライチェーンも崩れた状態だ。造船業界の関係者は「米国造船所に直接投資しろという要求がますます激しくなるはずだが、投資費用があまりにも大きい」と懸念を示した。ナイス信用評価は「国内造船会社の米国進出は投資金調達のリスクが大きいだろう」と予想した。
ハンファグループは昨年、米国のフィリー造船所を買収しており、米国の造船所を保有しているオーストラリアの造船会社の株式取得も進めている。HD現代は、米国最大の防衛産業造船会社のハンチントン・インガルスと了解覚書(MOU)を締結し、造船所の直接買収よりは協力関係から段階的に進めていく様子だ。