3~5日、米国サンフランシスコで開かれた「2025年全米経済学会(AEA)年次総会」で、カリフォルニア大学バークレー校のモーリス・オブストフェルド教授(元IMF首席エコノミスト)は、ドナルド・トランプ大統領が公言してきた一律関税爆弾は貿易赤字を減らし製造業を生かす効果は実際大きくなく、物価上昇とドル高を招く恐れがあるため、「脅し」で終わる可能性があるとし、トランプ大統領がまた別のカードを持ち出すという見通しを示した。いわゆる「第2のプラザ合意(Plaza Accord)」とされる「マール・ア・ラーゴ合意(Mar-a-Lago Accord)」のシナリオだ。
オブストフェルド教授は「トランプ政権の政策チームはすでにマール・ア・ラーゴ合意を真剣に考えている。就任から1年後に主要国の財務長官らをマール・ア・ラーゴ(フロリダ州パームビーチにあるトランプ大統領所有のリゾート)に招待し、プラザ合意のような『マール・ア・ラーゴ合意』を一方的に獲得する可能性もある」と述べた。1985年9月、米国と英国、西ドイツ、フランス、日本の主要5カ国(G5)財務長官がニューヨークのプラザホテルに集まり、米ドルの切り下げに合意したプラザ合意が再現される可能性があるということだ。
トランプ大統領の圧力に押され、1985年のプラザ合意と類似したドルの切り下げ措置が行われれば、ウォンなど東アジア経済の通貨価値が切り上げられ、韓国金融市場は大きな衝撃に陥る可能性が高い。これに対して漢陽大学のハ・ジュンギョン教授(経済学)は21日、ハナ銀行のハナ金融研究所のサイトに載せたコラム「第2次トランプ政権の関税政策と第2のプラザ合意の可能性」で、トランプ大統領の人為的な為替相場調整の成功はあまり見込めないと予想した。主な要因は、米国の財政赤字とインフレの可能性だ。
まず、東アジア諸国が米ドルの切り下げに協力すれば、これらの国々は対米国貿易収支の黒字が減少し、輸出で入るドルの規模が減るため、結局米国債の需要を減らすしかない。ところがこれはトランプ大統領の減税政策で増えることになる米国の財政赤字問題と衝突することになる。すなわち、財政赤字が拡大し、自然に米国債の発行が増えることになるが、これまで多くの米国債を購入してきた東アジア諸国の需要が以前より減り、その分を米国内で売ることが難しくなり、結局、米国債の金利は(トランプ大統領の希望とは裏腹に)むしろ上昇することになるということだ。
さらに、ドルを切り下げようと米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き下げを試みることも考えられるが、これも容易ではない。トランプ大統領が中央銀行の独立性が損なわれることを懸念する声まで押し切って、FRBに通貨政策を大幅に緩和するよう圧力をかければ、一律関税による輸入物価の上昇圧力と不法移民者の追放政策による低賃金労働力の減少と相まって、インフレ圧力がさらに高まる。すなわち緩和的金利引き下げ政策はさらに難しくなるわけだ。
ハ教授は「トランプ大統領にとっては、米国貿易収支を改善するための自身の一律関税政策を成功させるためには、ドルの切り上げを人為的に防がなければならず、第2のプラザ合意を望むようになる確率は高い」とする一方、「だが、その試みが実際にうまく働く確率はそれほど高くない」と述べた。