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「石油掘削成功率20%は錯視」ソウル大学のチェ・ギョンシク教授

登録:2024-06-06 08:47 修正:2024-06-06 09:48
[インタビュー]米国堆積地質学会のチェ・ギョンシク氏 
「水深の深い東海は生産単価が天文学的に増える可能性も」
ソウル大学地球環境科学部のチェ・ギョンシク教授が5日午後、ソウル冠岳区のソウル大学の研究室で、政府が先日発表した慶尚北道浦項の迎日湾一帯の石油などの天然資源埋蔵の可能性について意見を述べている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 「韓国で急に有名になった。(彼が)記者会見までするというのは…」

 4日、ソウル江西区(カンソグ)のあるカフェで取材に応じたソウル大学のチェ・ギョンシク教授(地球環境科学部)は、韓国唯一の米国堆積地質学会(SEPM)アンバサダーだ。韓国政府から東海(トンヘ)の深海資源埋蔵評価を依頼された米アクトジオ(ACT GEO)の顧問のビトール・アブレウ博士の入国と記者会見予告のニュースに接したチェ教授は、このように述べてから、しばらく考え込んだ。

 チェ教授は海洋堆積学の専攻で、現場と学界をいずれも経験した専門家だ。ポストドクター時代に、シェル、トタルなどの多国籍メジャー原油会社コンソーシアムが造成したファンドから研究費を得て事業をおこなったこともある。2004年には韓国地質資源研究所、2005~2006年には韓国石油公社で実務を担い、その後、教授になった。

 最近もノルウェー国営の石油会社の研究費支援を受け、不均質底流層の研究をおこなったという。石油公社在職時にはイラク、カナダ、カザフスタンの石油開発事業などの海外新規事業の担当者だったと自己紹介した。現在はアブレウ博士と同様に、干潟を含む海洋堆積層(底流層)の不均質構造などを把握するための研究をおこなっている。

■「ボーリング前には何も断言できない」

 チェ教授は、3日の政府による「東海に石油ガス埋蔵の可能性」発表を見て驚いたという。「(ボーリング成功の確率は)20%だとする報道が相次いでいるが、数字は重要ではない。ボーリングの前には何も断言できない」と語った。「(20%を)5回に1回は成功するという意味だと捉えてはいけません。10回掘ってすべて失敗することもありますし、1回だけでも成功しえますから。(確率の根拠となる資料は)物理探査のデータですが、それも間接資料でしょう。数字で表現する時はもっと慎重であるべきです」

 チェ教授は、商業生産までの過程は決して容易ではないと強調した。時間と予算は限らており、経済性を考えなければならないからだ。チェ教授は、「資源開発は経済性があってはじめて可能になる。水深の深い東海は生産単価が天文学的に増える恐れがある」と指摘した。

■深海資源開発、長年の経験の蓄積なしに成功は難しい

 チェ教授は、資源開発の過程と政策に政治が過度に絡んだときに現れる悪影響に懸念を示した。「資源のない韓国も、資源があればより安定的な経済運営が可能になる。こうした観点からも持続的に(資源開発の)力量と人材を育成すべきだ。政府はこれを応援し励ませばよいのに、今の(政府の)やり方はこのような面で残念だ」と述べた。このような脈絡から、チェ教授は「実務陣の発表ならともかく、大統領が自ら言ったから可能性が高そうに見える、という錯視効果を与えた」と付け加えた。

 「資源開発は長い時間がかかり、そのような経験の蓄積の末にようやく成功できるのです。(この事業には)数兆ウォンの予算がかかると思われますが、失敗したとしても、その過程で社会が得るものがなければなりません。政界が後押ししているからやる、でなければやめる、というような形で推進されてはなりません」

チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1143605.html韓国語原文入力:2024-06-05 15:00
訳D.K

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