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2024年「チップ・ウォー」…中国人民解放軍のGPUに注目せよ

登録:2023-12-07 22:09 修正:2023-12-08 13:39
クォン・ソクチュン教授の半導体技政学-米国のCHIP WAR、そして韓国のCHIP WAR
2023年11月16日(現地時間)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため米国を訪問中の尹錫悦大統領が、米サンフランシスコのモスコーニセンターで開かれた韓米日首脳会談で、ジョー・バイデン米大統領、岸田文雄日本首相と記念撮影をしている/聯合ニュース

 <半導体は、技術が国際政治の覇権を決める「技政学」(Techno-politics)時代の重要戦略産業です。「安保」を中心にした米国と中国の半導体覇権戦争の意味と政治イベントが相次ぐ2024年の重要性を「半導体三国志」の著者クォン・ソクチュン成均館大学教授が分析しました。>

 米国政府がグローバル半導体産業を再構成しようとする本当の意図は、経済的実益確保を越え、安保的観点からの価値確立にあることを把握することが重要だ。今年9月、私はソウルで訪韓中のラミン・トルーイ(Ramin Toloui)米国務次官補に会った。以前にもいろいろなフォーラムで米国の元高官あるいはシンクタンク研究員に会ったが、彼らの話は大同小異だった。

 米国政府の長期的戦略は、世間によく知られているように中国を集中的に牽制することにとどまるものではない。むしろ中国に対する牽制は、米国が自国で半導体産業の重心、特に先端半導体チップの自国内製造シェアを向上させる過程で必然的に従う結果と解釈するのが正しいという意見が主流を成した。

 米国は、韓国・台湾・中国など東北アジアに過度に集中している先端半導体の生産依存度が行き過ぎの水準だと判断している。そして、この過度な依存度は時間が経つほど中国の半導体生産シェア上昇のためにさらに高くなる点を警戒する。特に、米国政府の立場では長期的にロジック半導体(非メモリー)の生産について過度に高まった台湾のTSMCへの依存度を下げ、あるいは分散させることが大きな戦略の一つだ。

 実際、最近NVIDIAは自社のグラフィック処理装置(GPU)生産の大部分をTSMCに依存しており、TSMC以外の選択肢もサムスン電子しかない状況なので、第3のファウンドリを探すことを考慮していると明らかにした。明確には言及していないが、ここでいう「第3のファウンドリ」とは米国インテルを意味する。

 特に、10nm(ナノメートル)以下級のロジック半導体生産で現在85%以上を占めているTSMCに対する過度な依存度は大きな問題だ。なぜならTSMCの先端工程を通じてほとんどの先端ロジック半導体、中でもコンピューターに入る中央処理装置(CPU)はもちろん、最新スマートフォン専用アプリケーションプロセッサ(AP)チップや人工知能(AI)加速器であるGPU、TPU、NPU、データ処理専用のDPUなどがほぼ独占に近い水準で生産されているからだ。

地域別半導体工場を10年間維持するのにかかる相対的費用比較 //ハンギョレ新聞社

■ 同盟にも過酷な半導体覇権主義

 結局、TSMCが台湾内だけで先端半導体を生産するという暗黙の政策を捨て、米アリゾナ州フェニックスへの投資を当初の計画の3倍近い400億ドル以上に拡大し執行することになったのも、やはりこうした米国発の逆風、すなわち独占に対する強制調整の可能性に対する憂慮のためだ。TSMCの創立者モーリス・チャン氏は、アリゾナ工場の起工式前後に「自由貿易は死んだ」と不満をもらしもしたが、その本音を垣間見ることができる部分でもある。

 実際、米国は中国の半導体企業に対して技術規制を行うのと同じくらい、台湾企業に対しても実質的な技術・貿易規制を行いうる。すでに米国は自国の同盟国である日本に対しても1980年代半ばから1990年代半ばまで第1次・第2次米日半導体協定を通じて日本の半導体産業を規制した前歴がある。

 生産量であれ、装備輸入であれ、さらには輸出された装備のメンテナンスであれ、米国が切れるカードは多様で多い。いつでも米国は自国企業が源泉特許を持つ技術の入った装備、素材、部品、ソフトウェア、アルゴリズムなどの使用に対する許可権を握って揺さぶる準備ができている。米国が他国と結んだ各種経済協力や協定は、いつでも米国の国益が脅かされるという判断が下された場合、優先順位から追いやられる。これが米国が実質的に先端産業の随所で他国を牽制できる根拠になる。

 TSMCがロジック半導体で持っているほぼ独占的地位のように、DRAMではサムスンとSKハイニックスが75%に達するシェアを占め、ほぼ独占に近い地位を保っているが、これに対しても米国は過度な依存度が望ましくないとみているだろう。ただし、メモリー半導体はDRAMから派生した高帯域幅メモリー(HBM)あるいはAI用メモリー半導体などが出ているとはいえ、依然として汎用半導体の市場が主軸であり、米国にはマイクロンというメモリー半導体企業がある。

 また、サムスンは米テキサス州に9個のファブを新規に建設しており、そのうち相当数はメモリー半導体ファブになるため、米国内のメモリー半導体生産シェア自体は当分は一定水準以上になるだろう。そのため相対的に韓国の半導体産業は米国の牽制から当分は安全だ。独占構造であるTSMCが直面した危機状況とは多少異なるわけだ。しかし、ロジック半導体生産の支配者としてTSMCを眺める観点が韓国のサムスン電子・SKハイニックスにいつでも移りうることにも留意しなければならない。

 半導体産業の再編についてもう一つ議論が必要な部分は、軍事用への半導体チップの転用だ。米国政府が安保的観点から米中半導体覇権競争の主要イシューにしているのは、民間-軍用兼用の半導体技術だ。実際、半導体チップはその技術原理上、軍用と民間用を明確に区分していない。むろん、軍事用を目的とする場合には、一般用途よりはるかに厳しい軍事目的環境テストを通過しなければならない。トランジスタの集積密度や計算性能よりは、安定した信頼性と性能の維持がさらに重要なカギだ。しかし、原理的には半導体チップは民間-軍用兼用技術の代表的事例の一つだ。

主要半導体企業の時価総額 資料:ユジン投資証券(2023年11月28日 報告書)//ハンギョレ新聞社

■ 中国人民解放軍はなぜGPUを望むのか

 半導体の軍事用目的性を考慮すると、もう少し分析しなければならない点がいくつかある。1)なぜ中国人民解放軍が最近までもNVIDIAのGPUの最大輸入機関だったのか、2)彼らはなぜ放射能防護が可能な高性能半導体チップを望むのか、3)GPU並列コンピューティングで超高温・超高圧実験環境に対してシミュレーションができる環境構築をする理由、4)自動運転可能な軍用ドローン・UAV・UAMなどに対してGPU基盤のAI加速器がどのように転用されるのか、5)先端ミサイル制御システム(飛行、管制など)にどのように使われるのかなどだ。

 1)から3)までは、狭くは軍事用AIシステムの開発から核施設用先端半導体を目的に置くものと理解できる。4)から5)は無人兵器システムと精密攻撃用兵器性能のアップグレードを目的にしたものと理解できる。彼らはいずれも、中国の半導体産業投資の一軸は軍事力、特に攻撃力の強化にあることを意味する。これは台湾を含む東アジア地域での軍事的緊張を高め、長期的にはアジア太平洋地域での米国の影響力を縮小する方向になる。したがって、米国は中国の半導体産業をより高い強度で注視し、牽制するしかない。

 半導体産業を含めた先端産業は、今や一国の経済的カテゴリーだけで論じるにはあまりにも影響力が大きくなった。国内はもちろん、国際政治的イシューと切っても切れない状況だ。今や地政学ではなく「技政学(techno-politics)」の時代になっているが、先端産業を眺める観点は依然として産業の境界線、経済的影響圏内だけに主に閉じ込められている。産業間連携と国際イシューへの連結の輪に対する分析は緩い。韓国の「チップ・ウォー」(CHIP WAR、半導体戦争)は韓国だけの「チップ・ウォー」ではないことを、すなわち「チップ・ウォー」はグローバル「チップ・ウォー」だという事実を再確認する必要がある。

 2024年は韓国だけでなく全世界の先端技術覇権戦争という側面でさらに重要な一年になるだろう。米大統領選挙、台湾総選挙、韓国総選挙のような政治的イベントがあり、中国の半導体技術独立の追求はさらに加熱するだろう。韓国の戦略的ポイントは、これまで以上に立体的で、経済安保を最優先に置く技術の確保戦略に合わせて冷徹に再構成されなければならない。

クォン・ソクチュン|成均館大学教授(化学工学部、半導体融合工学部)

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1119398.html韓国語原文入力:2023-12-07 15:29
訳J.S

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