韓国銀行(韓銀)のイ・チャンヨン総裁は、米国のシリコンバレー銀行(SVB)事態のようなことが韓国で起きた場合、預金引き出しのスピードは米国より100倍速いだろうとして、差金決済の担保比率を上げなければならないと述べた。差金決済の担保比率は、韓銀が銀行間の差金決済の失敗に備え、金融機関から受け取っておく担保証券の比率だ。
イ総裁は14日(現地時間)、ブルームバーグ通信のインタビューで、今回の事態が「課題を与えた」として、このように述べた。イ総裁は、主要20カ国・地域(G20)の中央銀行総裁会議と国際通貨基金(IMF)・世界銀行グループ(WBG)の会議への出席のため、米国ワシントンを訪問中だ。イ総裁は「韓国では、デジタルバンキングが若い層に広く普及しているだけに、同様のことが起きた場合、米国より預金引き出しのスピードははるかに速いだろう」としたうえで、「差金決済の担保比率を上げなければならない。かつては銀行が入口を閉め預金を分散させることが可能だったが、SNSの発達によって、今では数日ではなく数時間以内に回さなければならない。韓銀と監督当局にとっては新たな課題」だと述べた。差金決済システムは、銀行間で一日の間に行き来する小額資金の決済をすぐには行わず、取引の締め切り後の翌日に差額を一度に決済するシステムで、精算前までは信用リスクの負担があり、これを管理するため、韓銀は一日の純振替限度の一定金額を担保証券として受け取っている。特定の銀行で取り付け騒ぎが起きた場合、差金決済の失敗が発生するリスクが高まることになる。ただしイ総裁は、SVB銀行事態は韓国には直接的には大きな影響を及ぼさなかったと述べた。
韓銀の通貨信用政策報告書によると、現在70%である差金決済の担保比率は、今年2月から2025年2月までに段階的に100%に引き上げる計画だった。だが、昨年末のレゴランド事態によって資金市場の機能不全に対する懸念が高まり、引き上げ時点が2回延期となり、今年8月から2025年8月に上げるよう変更された。
11日に基準金利を3.50%に凍結し、市場による年内の金利引き下げの期待感を一蹴したイ総裁は、この日も同様の発言を行った。イ総裁は「年末に消費者物価上昇率が3%台に下落すると予想する」としながらも、物価が韓銀の予想のペース通りに進むことが数字で確認されるのであれば、「立場を変えるかどうかを考えるべきだが、今は確信するにはあまりにも早い」と述べた。
これに先立ち、11日の金融通貨委員会後の記者会見で、イ総裁は、金融市場の反応について、金融統制委員は「市場の期待が行き過ぎているのではないかと考える方が多い」と述べた。イ総裁はこの日、ブルームバーグのインタビューで「今の金利水準が自動的にインフレを減らすほど緊縮的だというメッセージを与えたくない。原油価格や米国の通貨政策など、考慮しなければならない点が多い」と述べた。また、「インフレが目標水準の2%に落ち着くという確信が持てるシグナルが見えたら、市場に確実に伝えるだろう」と述べた。