「最先端技術を使って、どのような方法で運転者・搭乗客の利便性を高めるかがカギです」
今月5日、米ラスベガスで開幕した世界最大の家電・情報技術(IT)展示会「CES 2023」に参加した韓国自動車部品メーカーの現代モービスの社員はそう語った。同社の展示館があるモビリティ館には、このような試みがずらりと並んでいた。技術で人々の生活を改善しようとする目標を達成するための様々な試みが観覧客の目を引いた。
現代モービスの「M.Vision TO」と「M.Vision HI」が代表的だ。いずれも自動運転車の試作品で、自動運転が変える未来を描いた。
従来の自動車と違って箱形のM.Vision TOに乗ると、両脇の柱に大型スクリーンが設置されているのが目を引く。スクリーンには拡張現実(AR)を適用し、様々な情報やコンテンツが提供された。画面は非接触タッチ機能を持ち、情報を選んだりゲームをしたりすることもできる。車の柱には独立駆動・ステアリングが可能なeコーナーモジュールが適用され、その場で360度回転したり、車輪を90度回して車を横に動かす「カニ走行」なども可能だ。従来の車とは異なる幅と方向に動かせる方式で、運行や駐車などの利便性を高めようと試みたのだ。
M.Vision HIは4つの座席を自由に動かし、回転もできるようにする方式で、車内を効率的に活用できるようにした。オフィス、会議室、映画館など様々な空間に変身させることができる。例えば、映画館モードでは4つの座席が車の側面を向くように配置され、視線の向く横側のディスプレイで映画が上映される。走る映画館に変身したわけだ。
車の搭乗者の状態を見て安全性を高める技術も披露した。マグナ、ジェンテックス、スマートアイなど車の部品・ソフトウェアのメーカーのこのような技術体験ブースは、観覧客が絶えなかった。カメラや赤外線などで運転者の視線と頭の角度、口開け(あくび)、食べ物を食べているかなどの情報を収集した後、人工知能(AI)で運転者に不注意があるかどうかを分析する。カメラに向かって眉間をひそめると、「怒り」数値が一瞬で上がった。視線がどこに向かうのかも正確に把握する。横に首を向けた時、サイドミラーを見ているのか、他のところを見ているのかも正確に認識する。運転者が居眠りしたり意識を失ったりすると、これを感知して自動的に通報するなどの措置を取る。
ジェンテックスはカメラで得た映像を分析するだけでなく、赤外線で1万4千個の点(dot)を放った後、戻ってくる時間を計算して搭乗者全体の動きを3次元で把握する技術も披露した。平面的な映像を分析する時よりも搭乗者の動きをより精巧に測定してくれる。ジェンテックスコリアのキム・ドンジュン技術営業部長は「3次元技術は1センチ以内の誤差で乗客の動きを観測する。特に心臓の鼓動、呼吸する動きなど微細な動きまで測定し、子どもが寝ているのも感知できる」と語った。
モビリティと他産業群の境界が崩れる様子も目撃された。サムスン電子・LG電子などがブースを構えた家電・生活分野の展示館でも、自動車が多く見受けられた。日本の家電メーカーのソニーがホンダと提携して設立したソニー・ホンダモビリティの電気自動車「AFEELA(アフィーラ)」の試作品が展示されたのが代表的だ。ソニー・ホンダモビリティの水野泰秀会長は「電気自動車(EV)を動くエンターテインメント・プラットフォームにする」と明らかにした。ホンダの車両技術力にソニーの家電・カメラ・ゲーム機の技術力を加え、運転者の経験の幅を広げるという構想だ。
ビッグテック企業のアマゾンは、モビリティ館に展示館を設けた。EVメーカーのルシード・モータースの車にAI秘書「アレクサ」を採用した。運転席に座って会場近くの交通状況を尋ねると、アレクサが「時速5マイル程度で車が動いている」と答えた。アレクサは車だけにとどまらない。モノのインターネットで生活家電などにもつながる。「アレクサ、室外灯をつけて」と言うと、外に設置された車庫などに明かりがついた。
LGディスプレイは、ディスプレイ業界で初めてコンセプトカーを作って展示した。ステアリング装置を除いて完全自動運転モデルで車内を作り上げ、57インチLCDディスプレイで車の前面を覆ったのが目を引く。ディスプレイ技術力まで誇示したわけだ。
産業間の境界があいまいになる「ビッグブラー」(Big Blur)現象は、今後も続く展望だ。BMWグループのオリバー・ツィプセ会長は「現実と仮想世界を行き来するモビリティの未来」というテーマで基調演説をし、「現実と仮想世界を融合したデジタル化が私たちのビジョンだ。デジタル技術は自動車業界の未来だ」と述べた。BMWは今回のCESで車のフロントガラス全体に様々な運転情報を提供するヘッドアップディスプレイ(HUD)を取りつけた「BMW i Vision Dee」を公開した。
今回のCESモビリティ館は史上最大規模で構成され、参加したモビリティ関連企業だけでも300社余りにのぼる。