バッテリー価格がここ10年あまりで初めて上昇していることから、電気自動車(EV)の大衆化は遅れる可能性があるとの分析が示されている。
「ブルームバーグ」や「フィナンシャル・タイムズ」などの海外メディアは7日、市場調査機関「ブルームバーグNEF」の発表を引用し、今年のEV用バッテリーパックの価格はキロワットアワー(kWh)当たり151ドルで、昨年に比べ7%上昇したと報じた。2023年にはkWh当たり152ドルへとさらに上昇すると予想した。
EVのバッテリーパックの価格上昇は、ブルームバーグNEFが価格の調査・発表をはじめた2010年以降で初。2010年のバッテリーパックの価格はkWh当たり1160ドルだった。完成車業界は、補助金なしでEVが内燃機関車と競争しうるバッテリーパックの価格はkWh当たり100ドルとみている。この価格を下回ってはじめて、EVは内燃機関車を抜いて本格的に大衆化しうるというわけだ。
バッテリーパックは車両に搭載されるバッテリーの最終製品だ。バッテリーはセル、モジュール、パック単位で組み立てられる。セルを集めてモジュールを作り、モジュールを集めてパックを完成させる。
これまでバッテリー業界は、バッテリー生産量が増えることで規模の経済が実現したうえ、初期投資費用の減価償却などにともなう原価減少のすう勢などを反映して、バッテリーパック価格を下げ続けてきた。バッテリー業界の関係者は「規模の経済および初期投資費用の減価償却に加え、スマートファクトリーなどで工程の自動化と効率化に努めてきたため、バッテリー価格を下げることができた」、「しかし今年は、調査機関の発表の通り、バッテリーパック価格はもちろんバッテリーセルの価格も上がった」と語った。
完成車業界は、バッテリーパックの価格は下落し続けると予想していたが、変数はバッテリーの素材として使われる鉱物の価格だった。EV市場が爆発的に成長するだろうとの期待から、バッテリー素材として使われる鉱物の価格が大幅に上昇したのだ。昨年初めと比べてリチウムの価格は10倍に、ニッケル価格も75%上昇。コバルト価格は2020年の平均価格の2倍以上になっている。
鉱物価格の上昇によりバッテリーの製造原価は大きく上がったが、鉱物価格の上昇分がバッテリーパックの価格に反映されたことで、メーカーの収益性は影響を受けていないという。あるバッテリーメーカーの関係者は「バッテリーの供給が需要に追いつけずにいる。完成車メーカーに対して交渉力を維持している唯一の産業群がバッテリーメーカーだ。バッテリーメーカーは原料費の上昇分を価格に反映させ、コスト上昇分を相殺している」と述べた。
ブルームバーグNEFは、バッテリーパック価格が再び下落するのは2024年になり、2026年にはkWh当たり100ドル水準に到達するとの予測を示した。フィナンシャル・タイムズは「バッテリー価格の上昇は、補助金のない地域で自動車メーカーが大衆モデルのEVを生産、販売する能力に否定的な影響を及ぼすだろう」と報じた。
一方、ブルームバーグNEFの調査によると、バッテリーパックの価格は国によって異なる。中国ではkWh当たり平均127ドルだったが、中国に比べて米国では24%、欧州では33%ほど高かった。