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米「先端産業育成戦略」を受け、大挙して米国に向かう韓国製造業…国内空洞化に懸念

登録:2022-09-17 06:38 修正:2023-02-15 07:19
米国、自国のバイオ産業の育成などに20億ドル支援 
大手に加え中堅・協力企業も対米投資を検討 
専門家「政府レベルのビッグピクチャーに基づく産業政策が必要」
尹錫悦大統領(左から2番目)とジョー・バイデン米大統領(左端)が5月20日、京畿道平沢のサムスン電子半導体工場で、同社のイ・ジェヨン副会長の案内を受けながら生産施設を見学している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 米政府が自国内の生産施設の拡大に向けて、主要産業へのインセンティブ提供と自国でつくられた製品への優遇方針を掲げていることを受け、韓国の企業各社が対米投資計画を次々と打ち出している。大手と中堅企業は先を争って既存の投資計画を操り上げ、さらなる投資を約束しており、協力企業らも米国での生産施設の構築を目指す動きが可視化している。これを受け、国内総生産(GDP)の27.0%(2021年基準)を占める製造業の基盤が崩れ、新産業の成長動力が弱まりかねないという懸念の声もあがっている。

 15日、ホワイトハウスのホームページによると、米国は今後5年間、バイオ生産施設の構築に10億ドル規模のインセンティブを提供するなど、計20億ドルを投資し、バイオテクノロジーとバイオ産業を育成することにした。12日、ジョー・バイデン大統領が署名したバイオ産業の強化に向けた大統領令だ。「CHIPS法」や「インフレ抑制法」などを通じて半導体・電気自動車・バッテリー製造基盤を強化する計画を打ち出したのに続き、今度は製薬・バイオ製造基盤の構築に乗り出したわけだ。大邱大学のキム・ヤンヒ教授(経済学)は「昨年、米国が10大品目を選んで国内生産力量を強化すると明らかにしたのに続き、後続措置を相次いで出している」とし、「米国も中国のように自国内に産業基盤を備えることを目指している」と指摘した。

 これを受け、韓国企業各社の対米投資の動きも活発になっている。あるバイオ関連企業の関係者は「米国の顧客から自国内に生産施設を作るよう要請があって検討してきたが、今回、米国政府がインセンティブを与えると発表したため、より積極的に検討せざるを得なくなった」と話した。バッテリー業界では数年間悩んでいた対米投資を施行しようとしたが、韓国政府がそれを認めず、ブレーキがかかった事例もある。L&Fが米国に二次電池用正極材の生産施設を建設するために提出した計画に対して、産業通商資源部が核心技術保護措置の不備を理由に許可しなかったのだ。同社は保護措置を強化して再審議を要請する計画だ。

 これに先立ち、LGエナジーソリューションは景気低迷により1兆7千億ウォン(約1800億円)をかけて米国に工場を新設する計画を先送りしたが、再び予定通り進める方針だ。近日中に投資日程を明らかにする予定だという。現代自動車は、2025年上半期に予定していた米国内の電気自動車専用工場の完工時点を2024年下半期に繰り上げた。自動車部品メーカーの関係者は「現代自動車が既存の協力会社と共に現地に進出するものとみられる」と話した。サムスン電子とSKハイニックスも米国内の半導体工場新設・拡大計画を発表した。

 このような動きは、最近活発になっていた韓国内の製造業投資の流れに冷水を浴びせる可能性が高い。半導体やディスプレイ、自動車、医薬など製造業の高技術事業群の設備投資は、2017年の64兆8千億ウォン(約6兆6700億円)から2019年には54兆4千億ウォン(約5兆6800億円)に減少したが、昨年は再び69兆5千億ウォン(約7兆2500億円)に増えた。2010~21年基準で半導体設備投資が353兆ウォン(約36億3千万円)で最も多く、ディスプレイ(105兆ウォン)、自動車(95兆ウォン)などが後に続いた。GDPにおける有望新技術研究開発(R&D)投資の比重も、2008年の1.94%から2020年には3.34%に増えた。

 財界関係者は「投資財源が限られている中で、対米投資の拡大は国内投資の減少を意味する」と述べた。韓国開発研究院(KDI)のある研究委員は「国内の大企業が米国投資を増やせば、協力企業もともに進出せざるを得なくなり、これは国内製造業の空洞化現象につながる恐れがある。非常に懸念すべき状況だ」と語った。

 しかし、韓国政府の対策はばらばらでまとまっていない。半導体育成案としては人材育成案を発表した。また、現代自動車がインフレ抑制法による補助金を受けられない可能性があるという見通しが示されたことを受け、政府関係者が大挙して米国訪問に乗り出した。米国のバイオ製造イニシアティブについては、「韓米間協議チャンネルで話し合う」計画だ。「米国が安全保障、カーボンニュートラル(炭素中立)、エネルギー転換などを掲げて、『作戦』を展開するように各種の制度を改善していることと比較される」という指摘もある。

 キム・ヤンヒ教授は「米国の動きは中国を牽制できるという肯定的な意味がある一方、国内製造業の基盤が揺さぶられるという懸念も抱かせる」とし、「政府がビッグピクチャーを持って技術競争力を維持・強化し、製造業の基盤が損なわれないようにする必要がある。 全世界が気候変動に合わせてエネルギー転換を進めていく状況で、国内の産業全体がちゃんと変化しているかを点検し、競争力を強化するとともに、対米投資拡大に伴う製造業空洞化への懸念に対しても全業種を合わせた産業政策を設けなければならない」と指摘した。

イ・ジョンフン、アン・テホ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1058829.html韓国語原文入力:2022-09-16 10:14
訳H.J

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