欧州進出を宣言した中国電気自動車メーカー「NIO(上海蔚来汽車)」の交換式バッテリー戦略は、一体型方式を越え世界標準の位置を確立できるのだろうか。中国政府が交換式バッテリーのインフラ構築に速度を上げているなかで、この方式が世界標準としての位置を確立すれば、韓国国内の自動車・バッテリー企業が中国の技術標準に従属することになりかねないと憂慮されている。携帯電話のバッテリーが一体型になったように、EVもバッテリー性能が向上し、交換式は主流にはなれないだろうとの展望も出ている。
7日、EV業界によれば、中国のEVメーカー「NIO」は今月初めに欧州市場進出のための最初の工場をハンガリーのペストに建設すると明らかにした。NIOは交換式バッテリーを採択した代表的なEVメーカーだ。この会社は、石油企業のシェルと共に中国と欧州諸国にバッテリー交換所を建設する目標を発表した。今年5月にノルウェーに交換所を設置しており、2025年までに中国と欧州に交換所4千箇所を構築する計画だ。
NIOのEVは、バッテリーを充電する必要がなく交換所で交換できる。交換所の前に車両を駐車し、充電ボタンを押せば、自動運転で車両が交換所内に入る。自動車整備工場で車両の下部を整備するために持ち上げるように、交換所の機械も車両を少し持ち上げ、使い切ったバッテリーを取り外して完全に充電されたバッテリーを設置する。この一連の過程は全自動で行われる。
バッテリーの交換に要する時間は5分以内だ。NIO側は「放電された交換用バッテリーを再充電するには20~30分程度かかる。交換所一カ所で14個のバッテリーパックで一日合計312回交換できる」と説明した。NIOは2018年5月、中国でバッテリー交換所を初めて設置した後、今年7月までに中国だけで1千箇所の交換所を設置し稼動中だ。
交換方式には別の長所もある。車両購入価格の下落だ。NIOの主力モデルであるスポーツ実用車(SUV)のES6は、車両価格の約40%にのぼるバッテリー価格(約2万ドル)を除いた金額で購入できる。100kWhのバッテリーは月224ドル、70kWhのバッテリーは月148ドルで使用できる。
交換式バッテリーを採択した中国メーカーはNIOだけではない。バッテリー交換専門サービス業者のAulton(奥動新能源)は昨年11月、ブリティッシュ・ペトローリアム(BP)とバッテリー交換合作投資社の設立に合意した。世界最大のバッテリーメーカーであるCATLの子会社CAESも、今年初めにバッテリー交換事業に参入する意向を示した。
中国政府も支援に乗り出しているためだ。中国政府は、2020年4月から電気自動車補助金を段階的に廃止する代わりに、バッテリー交換モデルに対しては価格制限なしで補助金を支給している。昨年9月基準でバッテリー交換が可能なEVモデルは約200種だ。その累積販売規模は15万台に達する。バッテリー業界の関係者は「内燃機関で出発が遅れた中国が、EV市場では技術的優位を占めるためすべての方式の技術を開発し、全力を尽くしている状況」と説明した。
NIOの方式が標準になれば、韓国の完成車・バッテリー企業は打撃が避けられない見通しだ。中国政府は自主的に交換バッテリーの標準化を推進している。業界関係者は「バッテリー交換方式が欧州で受け入れられれば、EVのゲームチェンジャーになりうる」として「交換インフラがすでに敷かれていて、中国が関連特許をすべて出した状況なので、韓国企業などは中国の規格に合わせて生産せざるをえないだろう」と話した。
一方、バッテリーの性能が向上し、交換式が主流を占めることは難しいという意見も出ている。湖南大学のキム・チョルス教授(未来自動車工学)は「最近、バッテリーの充電時間が短縮されて走行距離も延びているため、交換式に進む必要性は次第に少なくなっている」として「中国国内での標準化はできるだろうが、国際標準になるのは難しいと思われる。特定企業の自主的事業モデルに終わる可能性が大きい」と話した。