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中国BYD、テスラ・トヨタに次いで世界3位…中国のEV大躍進の秘訣は

登録:2022-06-28 10:42 修正:2024-05-15 09:01
25日、中国の重慶で開かれた重慶国際自動車展示会で、観覧客が展示中のBYDのEVを見ている=重慶/新華社・聯合ニュース
チェ・ヒョンジュンのDB_deepチャイナ//ハンギョレ新聞社

 22日午後、中国・北京の朝陽区のあるBYD(比亜迪)自動車代理店。一日中降り続いた雨にもかかわらず、客足は絶えなかった。3、4組の顧客が10台余りの展示車を見て回り、席に座って販売員と購入相談する客が2、3組いた。ここで働く販売員のマさんは「新型コロナウイルス感染症による封鎖が解除された後、顧客が大幅に増えた。いま電気自動車(EV)を契約しても、受け取りは2カ月後くらいになる」と話した。

 ここから狭い道を一つ挟んだフォード自動車代理店に場所を移し、30分近く滞在したが、来客の姿は見られなかった。展示された車も4台しかない。フォード代理店の販売員は「雨が降って客がさらに少ない。普段はそれでももう少しはいる方」だと話した。

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偽BMWマークを使っていたメーカー、20年で世界3位に

 携帯電話のバッテリー技術を基に自動車製造業に参入したBYDが、わずか20年で世界の自動車業界を揺るがしている。中国・深センの証券取引所に上場されたBYDは7日、時価総額でフォルクスワーゲンを抜き、世界の自動車メーカーのうち3番目に大きい会社となった。BYDは昨年11月にも短期間3位にのぼったが、今回はフォルクスワーゲンとの時価総額の差を400億ドル近くにまで広げ、安定した順位を保っている。米国の時価総額調査会社カンパニーズマーケットキャップの資料によると、24日現在でBYDの時価総額は1378億ドルで、米テスラ(7636億ドル)とトヨタ(2191億ドル)に次ぐ3位だった。その後の4位から10位までは、ドイツのフォルクスワーゲン(987億ドル)、メルセデス・ベンツ、BMW、米ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、中国の長城汽車、日本のホンダなどが続く。現代自動車と起亜自動車はそれぞれ260億ドル、241億ドルで21位、22位を記録している。両社を合わせるとゼネラルモーターズに次ぐ8位に相当する。

 1995年、携帯電話バッテリーメーカーとしてスタートしたBYDは、2002年に小さな地方の自動車メーカーを買収し、自動車事業に参入した。創立当初、ドイツのBMWを連想させる粗雑なマークを使っていたBYDは、2008年に世界初の量産型「プラグインハイブリッド(PHEV)」車を発売し、同年9月に「オマハの賢人」と称されるウォーレン・バフェットの投資を受けた。翌年の2009年4月、中国の現代自動車のある関係者は「ソウル経済」の記者に対し、「中国車がデザインと品質の面で韓国車とのギャップを5年近く縮めた。特にBYDの場合、EVの生命であるバッテリー開発に全力を注いでいるため、脅威的な水準だ」と語った。その後いくらもたたないうちにこの発言が現実となったわけだ。

BYDが創立当初に使っていたマーク(右)。ドイツのBMWと似ている=バイドゥよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

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バッテリー世界4位「バッテリー企業なのか自動車企業なのかわからない」

 BYDの成功の秘訣として挙げられるのは、EVの要であるバッテリー技術だ。北京でシェアカーの運転手として働くジャオさんは、本紙の取材に対し「(EVの)デザインはNIO、バッテリーはBYD」と言い「性能だけを考えるとBYDを買った方がいい」と語った。BYD販売員のマさんも「我々の長所はバッテリー」だとし、「EVのセダンモデル『漢(Han)』は、一度の充電で650~700キロ走る。毎日完全充電するのを基準とすると、8年後にバッテリーを交換すればよい。事実上、交換が必要ないということ」だと語った。

 BYDは、世界の主要自動車メーカーの中で自主的にバッテリーを生産するほぼ唯一の企業だ。規模も侮れない。昨年のBYDの自動車バッテリー市場シェアは、中国の寧徳時代(CATL)、韓国のLGエナジーソリューション、日本のパナソニックに次ぐ世界4位。BYDは最近、ライバルであり世界の自動車時価総額1位メーカーであるテスラに、近々バッテリーを供給すると明らかにした。BYDについて「自動車企業がバッテリーを作っているのか、バッテリー企業が自動車を作っているのかわからない」という反応が出ているのもそのためだ。このように自動車とバッテリーを独自生産すれば、価格政策をより柔軟に扱える余裕が生じる。中国でBYDのEVは、テスラと性能がほぼ同等でありながらはるかに安いという評価を得ている。

 自動車とバッテリーを両方とも作る独特な企業の特性により、昨年の自動車販売台数はわずか約74万台(新エネルギー車60万台)にすぎないBYDが、年間600万台や800万台を売る企業を抜いて、時価総額で世界3位の自動車メーカーとして躍り出ることになったのだ。BYDはこのような自信をもとに、3月からは内燃機関車を完全に作らないと宣言した。

22日、中国の北京朝陽区のあるBYD自動車代理店に10台余りの車が展示されており、顧客が書類を見ている=北京/チェ・ヒョンジュン特派員//ハンギョレ新聞社

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中国のEVトップ3、世界12・13・18位…現代自動車を抜く

 中国のEVの躍進はBYDにとどまらない。カンパニーズマーケットキャップの資料によると、時価総額でEVだけを生産する世界10大企業のうち、3社が中国企業だ。中国の「EVトップ3」と言われる上海蔚来汽車(NIO)、理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(Xpeng)がそれぞれ2位、4位、6位を占めた。残りの7社のうち、6社はテスラやルシードなど米国の会社、1社が英国の会社だ。自動車メーカー全体で見ると、NIOと理想の時価総額はそれぞれ402億ドル、393億ドルで、フェラーリを上回る12位と13位だった。小鵬は300億ドル(約38兆ウォン)で18位を記録した。3社とも、260億ドルにとどまった現代自動車を抜いた。設立されて10年前後のNIO、理想、小鵬が互いに競争しながら、BYDに続き中国のEV市場をリードしている。中国は政府の強力な育成策と一部スタートアップの成功事例が現れはじめ、EVメーカー300社余りが乱立したが、昨年から当局がメーカー整理に乗り出し、相当数が整理されたという。

 世界のEV市場を率いる中国企業の活躍は、販売につながっている。昨年、中国で販売されたEVは272万台で、中国全体の自動車販売台数(2624万台)の10.4%に達する。これは世界最高水準であり、米国(3.3%)や韓国(5.9%)はもちろん、EVの普及に全力を傾けている欧州(8.3%)より高い。昨年世界で販売されたEV(474万台)の半分以上(57.4%)が中国で販売された。中国は世界最大の自動車市場であり、昨年世界で販売された自動車7980万台のうち2624万台(32.9%)が中国で消化された。

中国のEVメーカー・上海蔚来汽車(NIO)の車のラインナップ=NIOホームページよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

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スマホのように中国メーカーの独壇場となるか

 中国のEVが目覚ましい成長を遂げたのは、14億の人口を持つ巨大市場をもとに、中国政府が果敢な育成政策に乗り出したためだ。中国は深刻な大気汚染を減らすために、EVの購入を推奨し、税金と駐車ナンバープレートの発給などで特典を与えた。北京市は最近、老朽化した車の買い替えの際、EVを購入すると、1台当たり1万元の補助金を支援すると発表した。しかし自国のバッテリー産業を保護するため、中国製バッテリーが搭載されていない車両に対しては支援を制限する。中国内で起きている、国産品を使おうという「愛国主義消費」ブームも、中国産EVの躍進に一役買った。

 特に自動車産業で100年ぶりに起こったEVへの大転換は、内燃機関車の製造技術が弱い中国には絶好のチャンスとなった。中国政府は米国、欧州、日本などの伝統的な内燃機関車強国の自動車技術を短期間で追い越すのは難しいと判断し、国力を総動員してEVとバッテリー産業を育てた。中国はスマートフォンの登場を契機に、「現金」決済でクレジットカード段階を経ず、早々とモバイル決済強国にのし上がった。自動車産業でも、既存システムの不在が逆に強みとなる後発ランナーの利点を享受したのだ。

 今の傾向が続けば、中国のEV市場はスマホ市場と似たような流れを見せるだろうという見通しも出ている。現在、中国のスマホ市場は、iPhoneを前面に押し出したアップルを除いて、全て中国会社が掌握している。世界1位の販売量を誇るサムスン電子のシェアは、2017年末に0%台に落ち、意味がなくなった。新エネルギー関連メディアである「クリーンテクニカ」の報道によると、今年5月に中国で最も多く売れた上位20のEV(プラグイン・ハイブリッドを含む)のうち、テスラのモデルYとフォルクスワーゲンのID.4の2つを除けば、残りの18種はすべて中国メーカーの製品だった。モデルYとID.4も16位、18位にとどまった。

チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1048726.html韓国語原文入力:2022-06-28 08:29
訳C.M