韓米首脳会談を控え、韓国政府が「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)加盟を宣言し、米国が主導する新たな経済協力体の発足と同時に加盟する国となった。核心・未来産業におけるサプライチェーンの安定と競争優位を備える機会とみる期待と、中国を排除した経済協力体への参加が中国に対する外交と通商における対立の火種になりうるという懸念が、同時に出ている。
IPEFは、関税などの貿易の壁を下げる従来の自由貿易協定(FTA)とは違い、米国中心の新しい貿易ルールと秩序を樹立する方向に焦点を合わせている。協力議題は、公正で弾力性のある貿易▽サプライチェーンの弾力性▽インフラ設備・クリーンエネルギー・脱炭素▽租税、反腐敗などの4分野だ。核心となるのは、先端・未来産業のサプライチェーンから中国を排除し、米国中心に再編しようとすることだ。米国は、中国の不公正取引と市場を歪曲する慣行を牽制するという意向を明確にしている。例えば、米国が戦略品目に指定した半導体の場合、米国(前工程)-韓国・台湾(設計・生産)-日本(装備)-マレーシア(後工程)という形で結ばれるサプライチェーンの協力体制を構想しうる。
韓国内の関連業界と専門家は、総じてIPEFに参加すべきだという意見を出している。米国主導の貿易秩序において、韓国企業の有利な立地を裏付けることができれば、経済効果が創出されるだろうという期待だ。半導体・自動車協会は、「半導体や重要鉱物、電気自動車、バッテリーなど主要産業のサプライチェーンの安定化に役立つ方向に交渉戦略を用意する必要がある」と政府に建議してきた。中国の追撃が激しい、あるいは中国との競争が激しい半導体・バッテリー業界は、内心では相対的な受益を期待する雰囲気もある。
大統領室は18日、IPEF加盟について「韓国が(新しい)ルールの基準を提示し、他国を招きながら国益を実現していく計画」だとし、積極的な意向を明らかにした。問題は、多くの加盟対象国が「中国排除」路線のために加盟をためらっている状況で、韓国が先制的・積極的に参加することにともなう負担だ。
これまでに加盟を決めた国は、韓国を含む8カ国。米国が加盟を推進中のASEAN主要国とインドは、中国依存度と自国内の事情などを考慮し、参加を計りかねている。台湾は半導体のサプライチェーンの中心国であり、参加を希望しているが、場合によっては米中対立を爆発させる雷管になりうるため、米国も慎重な立場だ。インドは最近、ロシア制裁に参加しないなど、米国の対外政策の路線に協力的ではない。対外経済政策研究院のある研究委員は、「IPEFは分野別に合意するモジュール型協定であるため、4分野のうち必要な部分に選択的に参加することも可能だ。加盟国が負担を減らせる構造のため、韓国も中国などを考慮し、主要な協力分野をどう扱うのか慎重に考えなければならない」と述べた。
過去の「THAAD事態」のように、韓国企業が不利益を受けるかもしれないという心配も出ている。中国産の素材を輸入するある電気自動車部品企業の代表は、「主要国が相互に絡み合っているグローバル・サプライチェーンから、中国だけを完全に外すことが可能か疑問」だとしたうえで、「経済的実益はあまりないが、中国とのビジネスで新たな問題が生じるかどうかはわからない」と述べた。
国際貿易通商研究院のパク・ソンミン研究委員は、「米国のアジア太平洋戦略における中国牽制の基本方針は、共和党・民主党政権によらず維持・強化され続けてきた」とし、「IPEFは、議会の同意の必要ない政府間協定であるため容易に推進できるが、逆に米国の中間選挙などの政治状況によっては、推進動力がたやすく弱まる可能性もある」と分析した。