本文に移動
全体  > 経済

「未来産業の“米”はリチウム」…鉄鋼のポスコがアルゼンチンの塩湖を買った理由は

登録:2022-04-12 05:15 修正:2022-04-12 09:11
ポスコホールディングスのク・ボヌン氏インタビュー 
「10年前からリチウム事業推進…2018年に塩湖買収」 
「塩湖所有した鉱山業界の中国企業との提携受け、方向転換」 
「推定埋蔵量1350万トン…買収時より6倍増加」 
「2024年から年2万5千トン生産…電気自動車60万台分」
ポスコホールディングス「エコ未来素材チーム・二次電池素材事業推進団」のリーダー、ク・ボヌンさんが、今月5日にポスコセンターで行った本紙とのインタビューで、アルゼンチンの塩湖リチウム事業について説明している=ポスコホールディングス提供//ハンギョレ新聞社

 世界でリチウム価格が急騰している。電気自動車の普及に拍車がかかり、バッテリーの主な金属原料であるリチウムの需要が爆発したためだ。テスラの最高経営者(CEO)のイーロン・マスク氏も最近、リチウム事業への参入が必要かもしれないと言及し、話題になった。ところが、韓国で10年ほど前からリチウム事業に参入した会社がある。ポスコホールディングスだ。同社が3千億ウォン(約305億円)を投資して買収したアルゼンチンの「オンブレムエルト」リチウム塩湖は、今後数十兆ウォンの累積営業利益を達成するものとみられる。当時1トン当たり1万5千ドルだったリチウム価格が、最近7万ドルに急騰したためだ。

 ポスコは現地デモ(テスト)工場の稼動を成功させ、2024年上半期の量産を目標に、今年3月に商用化工場の着工に入った。毎年2万5千万トンの水酸化リチウムを生産する計画だ。電気自動車約60万台を作れる量だ。2011年からリチウム事業に参加したポスコホールディングスの「エコ未来素材チーム・二次電池素材事業推進団」のリーダー、ク・ボヌンさんは5日、本紙とのインタビューで「最初からリチウム塩湖の買収を目指していたわけではなかった」と語った。ポスコが産業の“米”である「鉄鋼」に続き、「リチウム」を未来の“米”として位置づけたのは2010年。リチウムが電気自動車バッテリーの主な素材として注目されるという見通しのもと、技術開発に突入した。リチウム原料は塩湖を所有する企業から供給してもらうつもりだった。

アルゼンチンの「オンブレムエルト」リチウム塩湖の地下から取り出した塩水を貯蔵しておいた「ソーラーポンド」の様子。ソーラーポンドは地下数百メートルから引き上げた塩水を濃縮するために貯蔵しておく塩田形態の構造物だ=ポスコホールディングス提供//ハンギョレ新聞社

 ポスコは2018年頃、突然方針を変え、塩湖を直接買収することにした。2015~2017年に契約を結ぼうとしていた鉱山会社が突然中国企業と提携したためだ。クさんは、「リチウム事業を進めて以来、最も大変な時だった」とし、「当時、リチウム価格が大幅に上昇した。すると、塩湖の値段を高くつけて売却しようとする鉱山業界が高値をつけた中国企業に鉱山を渡してしまった」と話した。その後、同僚たちと足を運んで全世界を直接見て回った末、2018年8月、アルゼンチンの塩湖を買収した。リチウムの重要性を認識した経営陣も素早く意思決定を下した。

 現地の塩湖の面積は2万5500ヘクタール。ソウルの面積の3分の1程だ。特異な点は、買収当時の埋蔵量推定値より、買収後の追加探査を通じて推定された埋蔵量が6倍増えた点だ。塩湖は“塩の湖”という名称とは異なり、地下にリチウムを含んだ塩水が埋蔵されている所だ。数百メートルの深さで穴を開けて取り出した地下塩水を使う。埋蔵量の測定方法も同じだ。以前の所有者は15カ所だけボーリング調査を行った。一方、ポスコは2年間にわたり範囲を広げ、さらに30カ所のボーリング調査を実施した。300~400メートルの深さまでだった従来の調査とは異なり、600メートルまで掘り下げた。その結果、推定埋蔵量は220万トンから1350万トンに増えた。

アルゼンチンの「オンブレムエルト」リチウム塩湖近くに建てられたポスコのデモ工場の様子=ポスコ提供//ハンギョレ新聞社

 クさんは高い収率と少ない水の使用量をポスコリチウム製造技術のメリットに挙げた。彼は「他のリチウム会社は塩水100を投入してリチウム1を生産するなら、ポスコは塩水60でリチウム1を生産する。淡水使用量も他社の5分の1だ」と語った。

 彼と同僚たちはデモ工場の稼動のため、2020年から2021年までの1年間、アルゼンチンに滞在した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、都市間の移動が禁止されたが、特別許可を得て紆余曲折の末、デモ工場を無事完工した。しかし、問題が発生した。外国人入国が全面禁止され、工場稼動を助ける国内人材の出国とアルゼンチンへの入国も禁止されてしまった。ポスコは両国政府の扉を叩いた。彼は「両国政府の積極的な支援で、韓国人社員と協力会社の社員約30人が現地で初めて外国人特別入国者の承認を受け、入国することができた」と伝えた。

 クさんが属している二次電池素材事業推進団の目標は、世界最高のリチウム会社としてポスコの名を轟かせることだ。約2年後、商用化工場が稼動すれば、世界5位に上がる。彼は「アルゼンチンの塩湖のようにリチウム埋蔵の可能性が高く、リチウム事業に有望な塩湖を引き続き探している」とし、「2030年までにリチウム領土を拡大し、世界3大リチウム製造企業に進入することを目指している」と話した。

アン・テホ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1038398.html韓国語原文入力:2022-04-1116:43
訳H.J

関連記事