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ハイブリッドカーは「エコカー」なのか、そうでないのか

登録:2021-08-10 09:57 修正:2021-08-10 11:40
韓国・日本はエコカーに分類するが、欧米は含めない 
ソウル-釜山往復800キロ走行時、アイオニック5のほうが温室ガスを少なく排出 
「『補助金ばらまき』はむしろ電力需要を増やす悪影響を及ぼす可能性も」
//ハンギョレ新聞社

 ハイブリッド自動車は「エコカー」なのかどうか。

 一見簡単に答えられそうな質問だが、そうでもない。ひとまず米国と欧州は「エコカーではない」と答える。2030年から現地販売の新車の半分をエコカーにすることにした米国は、エコカーの範疇にハイブリッドカーは入れなかった。欧州連合(EU)は2035年からEU地域での内燃機関車の販売を禁止する予定だが、販売禁止対象にはハイブリッド車も含まれている。

 韓国は「エコカーだ」と答える。まず「環境にやさしい自動車の開発および普及促進法」は、ハイブリッド車を厳然たるエコカーに分類する。2025年までにエコカー累積普及台数283万台を達成するという政府発表(エコカー普及5カ年計画)でも、ハイブリッド車の割合は半分(53%・150万台)を超える。日本で最大の自動車メーカーのトヨタなども韓国政府と同じ意見だ。

 ハイブリッド車もエコカーとみなす理由は簡単だ。温室効果ガスを排出しない「きれいな電気」を生産できない所では、ハイブリッド車のほうが電気車よりも環境にやさしいということだ。もちろん、グリーンピースなどの環境団体は強く反発している。自動車業界が内燃機関車をより多く売るために無理な論理を作ったと批判する。

 韓国政府が自動車業界のねじれにだまされたのだろうか。直接計算してみた。韓国電力公社の「電力通信速報」によると、今年1~5月の国内生産電力に占める石炭とガス発電の割合は、昨年と同じ62%だった。国際エネルギー機関(IEA)が集計した昨年の経済協力開発機構(OECD)加盟国全体の石炭・ガス発電の割合(49%)よりはるかに高い。

 韓国で電気エネルギー1キロワット時(kWh)を生産する際に排出する二酸化炭素量(CO2)は459.4グラム(温室効果ガス排出係数、2017年基準)だ。電力量1kWh当たり5.1キロメートルを走る現代自動車の電気自動車「アイオニック5」に乗ってソウルから釜山まで往復(約800キロ)すると、約72キログラムのCO2が排出される。

 一方、走行距離1キロメートル当たりの二酸化炭素91グラム、108グラムを排出するトヨタの「カムリ・ハイブリッド」と現代自動車の「グレンジャー・ハイブリッド」に乗って同じ距離を走った場合に排出される二酸化炭素量は、それぞれ73キログラム、86キログラムだ。ハイブリッド車のほうが電気自動車よりCO2の排出量が若干多いわけだ。

ハイブリッド車(左)と電気自動車の内部装置の概念図=低公害車統合ホームページよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 自動車や燃料の生産から走行、廃棄の段階まで、全周期を考慮すれば、これとは異なる結果になりうる。ソウル大学機械工学部のソン・ハンホ教授は最近、「オートジャーナル」への寄稿で「国内の準中型車の場合、自動車の原材料と部品の生産、組み立て、運行、廃棄の過程まで考慮すると、ハイブリッド車と電気自動車の温室効果ガス排出量にはほとんど差がなかった」と述べた。電気自動車は使い切ったバッテリーを処理する過程で炭素を多く排出するという点が指摘された。

 国策研究機関であるエネルギー経済研究院も、2018年に出した報告書で「電気自動車もブレーキパッドやタイヤの摩耗、電気発電段階などで相当な粒子状物質(PM10)を排出する」とし、政府の電気自動車普及政策見直しを求めている。

 「ハイブリッド車を温室効果ガス削減の現実的代案として使う」という政府対策もここに焦点を合わせている。産業通商資源部自動車課長のイ・ミヌ氏は「エコカー政策は各国の電力生産構造と人々の運行習慣、燃料充電の便宜などによって変わる」とし「新再生可能エネルギーを短時間で大幅に増やすことが容易でない自然環境と、電気車の充電が難しいマンション中心の住居環境などを考えると、当分ハイブリッド車を電気車と並行して普及させなければならない」と述べた。

 このような議論を念頭に置けば、内燃機関車をなくし、電気自動車の普及を拡大するだけが能ではないという結論に至ることになる。むしろ既存の電力生産構造の構造調整、乗用車の利用抑制、公共交通機関の活性化政策などが抜けた「電気自動車補助金ばらまき」は、自動車供給と電力需要を大幅に増やし、環境に悪影響を及ぼす可能性がある。

 高い電気車を購入する高所得層に補助金を集中的に提供する一方、公共交通を利用する庶民の便益のためのエコ交通対策がない「逆進性」も問題だ。大田世宗研究院のイ・ジェヨン先任研究委員(緑色連合運営委員)は「炭素低減に最も重要なのは、乗用車に乗らず、徒歩、自転車、公共交通機関などを利用するよう誘導すること」だとし「欧州もこの数十年間、発展構造を変え、自転車と公共交通機関を利用する割合を充分に引き上げた後、最後の代案として電気車普及対策を出した」と指摘した。同研究員は「良い名分があるからといって結果も良いわけではない」と皮肉を添えた。

パク・チョンオ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1006903.html韓国語原文入力:2021-08-09 07:47
訳C.M

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