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高騰する世界の住宅価格、韓国はバブルの懸念がいっそう高い

登録:2021-05-24 04:38 修正:2021-05-24 08:35
コロナ低金利で流動性増加 
住宅の価値の再発見が加わり 
米、中、欧、豪などで不動産高騰 
 
景気回復に伴う金利引き上げ時は警告音 
外国では地方の中小都市、郊外地域など 
低価格住宅が中心の高騰でバブルの恐怖は低い 
 
韓国の家計資産は不動産の占める割合が高く 
大都市中心にとりわけ大きい 
専門家「バブルがはじければ社会的衝撃」
クリップアートコリア提供//ハンギョレ新聞社

 「ウォール・ストリート・ジャーナル」は3月28日、デンマーク・コペンハーゲンのある不動産仲介業者の話を伝えた。この仲介業者は最近のたった3カ月で45軒の家を売ったと明かし「多くの人が自分の金をレンガ(家)に投じたがっている」と述べた。今月13日には「CNNビジネス」も、ワシントンD.C.の住宅の売却物件が市場に出るやいなや76件の現金取引の相談を受けた、という米国のある不動産仲介業者の話を掲載した。結局、この家は売り主の希望価格より70%も高い値段で売れた。同記事は「オークランドから上海、ミュンヘン、マイアミに至るまで、住宅価格は重力に逆らうように見える」と述べている。

 急騰する住宅価格はもはや、韓国のみの問題ではないのだろうか。国外の不動産市場も過熱している。2008年の金融危機後、各国の景気刺激策や経済の不確実性により、莫大な資金が不動産へと流れ込んだが、コロナ発生以降は一段と下がった金利や新たな住宅需要が加わり、住宅価格は急速に上昇している。これに伴い、不動産バブルの崩壊を懸念する警告音も鳴り響いている。しかしこれを巡っては、かつてとは異なり投機ではない実需要者が多く、安定を取り戻すまで低金利や景気回復が下支えされるだろうとの反論も出ている。

「住宅価格は世界的に高騰している」

 コロナ禍以前にも全世界の住宅価格は上がり続けていた。各主要国が金利を下げ続け、量的緩和政策を実施した影響が大きかった。市場に供給された資金は、比較的安定的な投資先である不動産に流れた。国際通貨基金(IMF)によると、グローバル住宅価格指数は、2017年第4四半期に161という史上最高値を記録し、これまでの最高値(2008年の159)を上回った。2010~2019年に住宅価格はドイツ(54.0%)、米国(52.8%)、英国(38.5%)などで急騰した。

 コロナ禍が発生すると、専門家は住宅価格が下がると予想した。自営業の破産や失業率の増加などによって可処分所得が減れば、住宅所有者たちは急いで市場に住宅を売りに出すだろうと見込んだからだ。しかし現実は正反対だ。逆説的にも住宅価格を押し上げているというのがコロナ危機の特徴だ。

 各国の中央銀行が経済回復のために金利引き下げに乗り出したことは、融資を受けての住宅購入をさらに容易にした。こうした中、海外ではコロナ禍による住宅の価値の再発見という新たな変数が加わった。在宅勤務、在宅教育が一般化し、快適な環境が提供される広い家への引っ越しを希望する人が増えているからだ。

 経済協力開発機構(OECD)によると、加盟37カ国の住宅価格は2019年第4四半期から昨年第4四半期までの1年間で約7%上昇した。この20年間で最も高い上昇率だ。米国は今年2月、住宅価格指数が前年に比べ12.2%上がり、1991年以降の最高値を記録した。オーストラリアも今年3月、全国の住宅価格が2.8%上昇し、1988年以降最も高い水準だった。今年初めの欧州連合(EU)の平均住宅価格は5年前より25%高かった。英国も昨年は不動産価格が8.5%の急騰を示し、上昇が続いている。昨年の中国深センの不動産価格の上昇率は16%にまで高まっている。

 不動産バブルが疑われる地域も出てきている。国土研究院の今年2月の報告書「国土イシューリポート」によると、昨年現在の「UBSグローバル不動産バブル指数」を確認したところ、ドイツのミュンヘンとフランクフルト、カナダのトロント、香港、フランスのパリなどは不動産バブルの危険性があるとの結果が出た。米国のサンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークなどの大都市やカナダのバンクーバー、英国のロンドン、ロシアのモスクワ、日本の東京、オーストラリアのシドニーなどの住宅市場も評価が高すぎる側面があると分析された。

不動産バブル崩壊の恐れ

 世界の住宅価格が上がり続けてばかりであるわけがないとの懸念も高まっている。不動産バブルの崩壊をもたらす危険要因は大きく分けて3つある。最も恐ろしいのは金利の引き上げだ。多くの人は利息が増えて元金返済が圧迫され、融資を受けた住宅が維持できなくなる可能性がある。景気低迷のため所得は減り、職場を失った債務者たちにとってはいっそう負担が大きい。コロナ禍によって複数の国の政府が融資返済猶予制度を設けているが、これも終われば不動産バブル崩壊の引き金となりかねない。

 一方、不動産市場はゆっくりと安定を取り戻すだろうという見方も存在する。2008年の金融危機を経験したことで各国が金融の健全性維持に努めてきており、今回の住宅購入債務者たちはかつてに比べ格付けが高く、現金で費用を前払いした人も多いというのがその根拠だ。投機より実需要で住宅を探す人々が増えたのも新しい特徴だ。海外では大都市の都心住宅より、地方の中小都市や郊外地域が住宅価格の上昇を主導している。ウォール・ストリート・ジャーナルは「経済学者たちは、最近の住宅価格の過熱が2008年の金融危機のような住宅市場の崩壊へとつながる可能性は低いとみている」とし「金利が上がり、押さえられた需要が満たされれば、過熱した市場は大きな被害なく自然に冷めるだろう」との分析を示した。

 中央銀行が金利を早く引き上げられないということも幸いな点だ。「CNNビジネス」は「主な中央銀行は景気を回復させるため今後数年間は金利を低く保つとみられ、住宅市場を下支えする世界的な経済成長が今年はさらに強まると予想される」と指摘した。

韓国は現状が多少違うので安心できない

 ただし、韓国の不動産市場の過熱ぶりは、少し違う目で見るべきだという指摘もある。世界の流れと同じように、低金利によって住宅ローンが増加しているが、需要は依然として大都市や新築アパートに集中している。韓国不動産院の統計を基準とする全国の住宅価格は、2017年5月から今年4月までに10.8%上昇しているが、同期間のソウルの住宅価格上昇率は15.4%にのぼる。

 国土研究院が「UBSグローバル不動産バブル指数」を韓国に適用したところ、昨年第3四半期末現在でソウルと世宗(セジョン)にはバブルの危険が存在し、釜山(プサン)、大邱(テグ)、仁川(インチョン)、光州(クァンジュ)、大田(テジョン)、京畿道、全羅南道は価格が高く評価されていると推定された。2018年末には全国的にバブルの危険は存在しなかったが、昨年末にソウルの危険水準が高まり、首都圏地域は評価が高すぎる地域へと転換した。

 明知大学のクォン・デジュン教授(不動産学)は「米国の不動産価格が上昇したのは事実だが、コロナ禍で不振だった景気が回復したことで、低価格住宅を中心として上昇しているもの」とし「世界的に見ても韓国の住宅価格は特に上昇が激しいため、不動産バブルには相対的に弱い」と述べた。

 韓国は、家計資産に占める不動産の割合も高い。不動産価格の変動によって社会が受ける衝撃も、その分だけ大きい。国土研のパク・チョンギュ不動産市場研究センター長は「韓国は住宅資産の収益率が良く変動性が低いため危険ではないという認識があり、家計資産の約60~70%が不動産だ」とし「韓国の投資家は海外投資家より危険に対する回避程度が低いため、相対的に攻撃的なポートフォリオを構成する傾向がある」と説明した。

チョン・スルギ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/996278.html韓国語原文入力:2021-05-23 15:59
訳D.K

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