「チョコレートフォン」と「プラダフォン」の栄光を受け継ぐ後継機はついに現れなかった。今年1月に開かれた世界最大の情報通信・家電展示会「CES2021」で世界を驚かせた「ローラブルフォン」ももう見ることができなくなった。LG電子が2007年の「アイフォンショック」を乗り越えられずに携帯電話事業から撤退する。
LG電子は5日、携帯電話事業の終了を公示した。「最近、プレミアム携帯電話市場では二強体制が固まっているとともに、主なライバル会社が普及型携帯電話市場を集中攻略しているため、価格競争はより激化している。LG電子は対応が不十分で成果を出せずにきた」。同社が自ら明らかにした事業終了の理由だ。自己告白というわけだ。
モバイル部門の売上は、2016年の11兆7218億ウォン(約1兆1500億円)から2020年は5兆2171億ウォン(約5100億円)へと、5年間で半減した。収益も大幅に悪化し、2015年第2四半期以降、23期(5年9カ月)連続の営業赤字を記録。モバイル部門がLG電子全体の業績を圧迫する主犯だったわけだ。このような理由から、市場ではLG電子の携帯電話事業からの撤退は時間の問題だという見方が、数年前から出ていた。
2007年に携帯電話市場の中心がスマートフォンへと画期的な転換を遂げて以降、LG電子は10数年にわたってこれといった活路を見出せずにいた。高価格帯の携帯電話市場では、アップルとサムスン電子の二強構図を切り崩せなかった。低価格帯市場では、価格競争力を武器にしたOPPO、Vivo、シャオミなどの中国メーカーの攻勢の防御に失敗した。漢陽大学のパク・ジェグン教授(韓国半導体ディスプレイ技術学会会長)は「LG電子は高価格帯市場にしがみついてきたが、結局その市場ではサムスン電子やアップルに追いつけなかったため、事業をたたむしかなかったのだろう」と語った。
LG電子が事業の縮小、売却、撤退という3つの選択肢の中から撤退を選んだ背景も注目される。雇用維持と共に、核となるモバイル技術の保持を意識した結果と分析される。産業研究院のキム・ジョンギ新産業室長は本紙の電話取材に対し「LG電子はモバイル特許などの源泉技術を維持したまま、生産部門だけ売却しようとしたはず」とし「買収側は付加価値の高い核心技術も共に買収しようとしたはずだが、その部分で立場の違いが大きかったようだ」と述べた。LG電子もこの日、「未来を準備する核心モバイル技術の研究開発は続ける。6G移動通信、カメラ、ソフトウェアなどは次世代テレビ、家電、電装部品、ロボットに必要となる力量だ」と述べた。同社は「すべての可能性を検討した結果、事業終了が中長期的観点からは明らかに戦略的利益となると判断した」と説明した。
市場は比較的肯定的に評価している。IBK投資証券のアナリスト、キム・ウンホ氏は、3月26日に発表した報告書で「モバイル事業部の撤退のみで、年間1兆ウォン(約978億円)近い営業赤字を減らすことができる」と指摘している。今年1月に事業部撤退の可能性が初めて言及されて以降、同社の株価は13万5000ウォン(約1万3200円)台から20万ウォン(約1万9600円)近くの急激な上昇を示している。事業からの撤退がLG電子の未来成長エンジンの強化に貢献するだろうとの期待が形成されているからだ。ただし、この日の同社の株価は、前営業日より2.52%下落の15万4500ウォン(約1万5100円)で取り引きを終えている。
モバイル部門の社員は、複数の事業部や系列会社に再配属される。昨年末現在の同事業部の社員数は3449人だった。