「企業倫理や法規の遵守、データ無欠性が何より重要なバイオ製薬である。現場には、万が一のデータ修正を防ぐため、修正ペンとシュレッダーさえ置いていない」
サムスンバイオロジックス(サムスンバイオ)は、会計詐欺に対する金融当局の制裁と検察捜査が始まると、このような資料を配布し、潔白を主張した。検察は今年7日、仁川松島(ソンド)のサムスンバイオ工場の床下に隠しておいたサーバー数十台を押収した。シュレッダーを置かない代わりに、サーバーを丸ごと床に埋める方法を選んだわけだ。検察捜査と公正取引委員会(公取委)の調査などがあるたびに、グループレベルで組織的に証拠隠滅を試みるなど、法を無視したサムスンのやり方が例外なく繰り返されているという批判の声があがっている。
■取り外して、破って、消して、隠す
2007年12月、キム・ヨンチョル弁護士の暴露でサムスンの裏金の捜査に乗り出した検察は、午前1時に緊急でサムスン証券の強制捜査令状を発給してもらわなければならなかった。当時、職員らのパソコンのハードディスクを全て取り外し、資料を廃棄するなど証拠隠滅が行われたためだ。捜査が特検に引き継がれた2008年1月には、サムスン火災が早朝に廃棄物処理会社まで動員し、保管中の文書を大量に廃棄した。文書をすべて削除すると、特検チームに疑われる恐れがあり、一部の文書を意図的に残したという証言もある。特検チームが強制捜査に入った時は、手がかりになる書類の大半が破棄された後だった。
昨年2月、李明博(イ・ミョンバク)元大統領の収賄容疑を捜査していた検察は、京畿道水原(スウォン)のサムスン電子本社に対する強制捜査に入った。当時サムスン電子は、検察官と捜査官の建物への進入を1時間以上妨げ、社員らを動員して、パソコンのハードディスクを取り外した。後に検察が証拠隠滅を指示するチャット内容を発見し、ある社員が乗用車のトランクに隠しておいたハードディスク7個を確保することができた。この過程で、サムスンの労組瓦解工作が含まれた文書なども発見された。
サムスン電子は2012年3月、公取委の調査を妨害し、歴代最高額の4億ウォン(約3800万円)の過料を科された。サムスン電子は、公取委の調査員が携帯電話の価格問題を調査するため水原事業所を訪問した際、あらかじめ用意しておいた指針に従い、正門で引き留めて時間を稼いだ。その間、調査対象のパソコンの資料を削除する一方、他のパソコンに取り替えた。サムスン電子は2005年と2008年にも公取委の調査妨害でそれぞれ5千万ウォン(約470万円)と4千万ウォン(約380万円)の過料を科された。
公取委の制裁直後、批判世論が高まったことを受け、サムスンは「法と倫理を違反した役員や社員は地位にかかわらず容認しない」と発表した。しかし、サムスンは翌年の2013年末、調査妨害を主導した役員を副社長に昇進させ、グループの司令塔に当たる未来戦略室チーム長に栄転させた。
■進化する証拠隠滅の手口
サムスンバイオの会計詐欺に関する検察の捜査が始まる半年前にサーバーを丸ごと取り外したのは、過去の捜査から学習した結果という分析もある。検察は2007年11月、最初の強制捜査場所として、サムスン証券電算センターとサムスンSDSデータセンターを選んだ。当時、検察は数日にかけてサーバーに保存された膨大な資料をダウンロードした。12年後、サムスンはその日を教訓に、サーバーを埋めるやり方を選んだ。
2016~17年、チェ・スンシル国政壟断事件でイ・ジェヨン副会長が拘束され、グループの司令塔の未来戦略室が解体された後は、痕跡が残る文書よりは電話を主に利用するようになったという内部証言もある。
サムスンの製造関連系列会社のある役員は「未来戦略室から事業支援TFなどに(統制)単位が変わった後は、電話で疎通する割合が高くなった。文書は一方向だけに伝わっている」と話した。系列会社からTFに報告する時は文書で行う場合が多いが、逆にTFから系列会社に指示が下される時は、文書はほとんど使われないという。同役員は「グループレベルの介入や指示が十数年間問題になり、問題になり得る証拠を最小化するための措置ではないかと思う」とし、「皆そのように理解し、できるだけ電話で疎通している」と伝えた。
超一流を掲げるサムスンが繰り返し証拠隠蔽などの違法行為を行う根本的な背景には、法と倫理の遵守など社会的責任の履行よりは、トップ一家の利益を優先視する後進的企業文化があるとの指摘もある。参与連帯のキム・ウンジョン経済労働チーム長は8日、「サムスンが依然として国家公権力も無視する『法を超越したサムスン』という旧態から抜け出せずにいる。これまでのサムスンの違法行為に対する軽い処分がサムスンの変化を妨げてきただけに、今回の事件は法に則って厳正に処理すべきだ」と述べた。