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「原発解体市場54兆円の『バラ色の広報』…地域競争を過熱させるだけ」

登録:2019-04-19 08:11 修正:2019-04-19 10:51
韓国政府「原発解体産業育成」戦略を打ち出したが 
「原発業界をなだめるための歓心を買う政策にすぎない 
解体市場が育つのは難しく、アプローチも良くない」 
不透明な市場ではなく、政府が主導すべき 
原安委の解体担当の人員はわずか1人だけ
リトアニア・イグナリナの原発解体作業中の労働者たちが、古鉄で放射性を測定している=国際原子力機関(IAEA)提供//ハンギョレ新聞社

 韓国政府が原子力業界の“新たな策”として打ち出した解体産業育成戦略をめぐり、「歓心を買うためのペーパー政策に過ぎない」という批判が出ている。現実的に韓国内の原発業界がアプローチできる国外の原発が制限的であるうえ、グローバル原発市場の縮小とともに仕事がなくなる分野であるため、市場の形成そのものが難しいと見られている。にもかかわらず、政府が過度なバラ色の市場展望を示したため、「原発解体研究所」の敷地をめぐり地域間の競争ばかりが過熱しているという指摘もある。

 産業通商資源部・原子力安全委員会など関係省庁が17日に発表した「解体産業育成戦略」によれば、政府はグローバル原発解体市場の規模を546兆ウォン(約54兆円)と推算した。1960~80年代に建設された各地の原発の設計寿命が満了する2020年代を控え、国内の解体産業の競争力をあらかじめ育てようというものだ。政府は2年前に永久停止された原発の古里(コリ)1号機の本格的な解体(2022年)が始まる前、関連する物量を早くから発注する方式で初期市場を形成し、企業の育成と解体の経験積みを支援すると述べた。また、解体専門企業と人材を養成するための各種金融・教育支援政策、原発解体研究所などのインフラ構築案も打ち出した。

 これについて、原発業界はもちろん、エネルギー転換を支持してきた側でも現実的でない戦略だと指摘している。見かけはグローバル解体市場の規模“546兆ウォン”が大きく見えるが、韓国企業の参入は容易ではない。デロイトと原子力研究院が2015年8月に出した研究結果によれば、全解体市場の74%がすでに解体技術を十分に備えた欧州連合(EU)・北米・日本など先進国に分布している。第3国の原発もあるが、比重が小さく、その中でも韓国だけ見れば市場規模は22兆5千億ウォン(約2兆2千億円)にとどまる。

 何よりも原発解体市場も「期限付き」という点で、育成戦略は明らかに限界があるというのが常識だ。世界的に急速に進行中のエネルギー転換によって、昨年建設が開始された原発は中国の2基だけだった。たとえ解体需要は増えたとしても、市場は付加価値が創出され続けるという期待がある時に形成されるため、解体が「産業」になることは難しいというのが、大方の見解だ。2015年当時、未来創造科学部が発表した「原発解体産業育成政策」でも、政府は「(各国外の原発の)の解体決定時期がはっきりしておらず、実際の市場の形成時期は流動的」だと話した。

 東国大学のパク・ジョンウン教授(原子力システム工学科)は、「規模も小さく、消えることの明らかな解体分野が建設を代替する市場のように広報されてはならない」とし、「エネルギー転換の必要性とは別に、原発業界に過度な希望を与えることも適切ではない」と批判した。エネルギー正義行動のイ・ホンソク代表も「政府の行き過ぎた広報のため、原子力解体研究所の敷地をめぐる地域葛藤が過度になる側面がある」とし、「解体は必要な技術だが、バラ色の市場の展望を出してはならない」と批判した。15日、政府は釜山と蔚山(ウルサン)には原子力研究所の本源を置き、慶州には国内に4機(月城1~4号機)しかない重水炉を解体する技術院を設立すると発表し、地域の葛藤が起きている。

 原発解体分野は「市場の産業」ではなく「政府の事業」という見方が支配的だ。エネルギー転換によって国内原発企業・人材の業種転換が避けられないため、市場に依存してはならないということだ。しかし、古里1号機と月城(ウォルソン)1号機の解体計画書審査を目前に控えている原子力安全委員会に、解体担当要員はたった1人しかいない。解体専門担当部署さえない。米国原子力規制委員会(NRC)には原子炉解体課と核物質解体課の2つの課があり、26人が関連業務を担当しているのとは対照的だ。

チェ・ハヤン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/890570.html韓国語原文入力:2019-04-18 19:07
訳M.C

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