家で過ごす時間が長くなればなるほど、「心をどうケアするか」が健康寿命を左右する力となる。ポジティブは生まれつきの性格ではなく、感謝や笑いといった小さな選択を毎日繰り返すことで育める能力だ。
年を取るほど「もともとちょっとネガティブな性格なんだ…」と言う人が目立つようになるが、脳科学は別のことを語ってくれる。脳は生涯にわたって新たな道を切り開く「神経可塑性」があるため、どんなことを頻繁に考えかによって少しずつ変化する。
感謝の日記、ポジティブな確言(affirmation)、笑いは、いずれも脳の報酬系を刺激し、気分を良くするドーパミンやセロトニンの分泌を増やすとともに、ストレスホルモンであるコルチゾールを減らして感情調整能力を高める、とする研究はあまたある。
一言で言えば、「普段どんな言葉を、どんな表情で、どんな瞬間を選んで思い出すか」が、年老いた脳を鍛え直す運動になるというわけだ。
感謝は「大きな出来事」が起きた時だけにするものではない。今日ご飯が美味しく食べられたこと、孫から電話が来たこと、天気がよくて少し散歩に出かけたことも、すべてが感謝すべきことだ。このような小さな経験を記すだけでも、気分を良くする神経伝達物質が増え、ストレスホルモンが減少して不安やうつが軽減されうる。
感謝の日記は、このように小さなことのように思えることを一日に3つ書き留めるものだ。感謝の日記を書くために、ノート1冊と書きやすいペンをベッドの枕元に置いておくとよい。そして、夜寝る前に5分から10分、一日の終わりにその日の出来事を思い出し、感謝したことを3つ書き留める。
例えば次のような文だ。「今日は孫娘が電話をくれた」、「天気が良かったので、家の前をゆっくり散歩した」、「今日はご飯がおいしくて1膳を全部食べた」
長く書くよりも「3つ書く」を続けることが重要だ。字が下手でもかまわないし、スペリングが間違っていても問題ない。手で書けば脳の複数の部位が同時に刺激され、記憶や感情の処理にさらによい。