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韓国の嫌中・女性嫌悪の種は誰がまいたのか【レビュー】

登録:2025-12-13 10:00 修正:2025-12-14 13:55
『歴史的ファシズム』20年ぶり全面改訂増補版 
日帝末期の戦時動員体制の集団的狂気と孤立 
ジェンダー、人種、地域、世代によって極端な経験
皇民化は朝鮮人内部でもアイデンティティ闘争を加速させた。和信商事の太平洋戦勝記念の広告。「戦う男性、美しい女性」『春秋』1942年7月=カルムリ提供//ハンギョレ新聞社

 2005年に東亜大学韓国語文学科のクォン・ミョンア教授が『歴史的ファシズム』(チェクセサン刊)という本を出した際、一部からは不満の声があがった。「韓国のどこを見てファシズム社会だというのか」と過敏に反応する人もいた。当時はまだ韓国でファシズムの兆候を読み取る人がほぼいなかったためだ。

 その年、韓国社会はファン・ウソク事件(クローン研究者ファン・ウソク教授のES細胞論文不正問題をめぐる物議)という試練を経験したが、株価は10年9カ月ぶりに史上最高値を更新し、一人当たりの国民所得は2万ドルに迫った。「私たち」は民主化と経済発展の両方を成し遂げたという自負があり、概して不安を予見するより楽観する傾向にあった。しかし、他者への排除と嫌悪はますます深刻化し、昨年の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の12・3戒厳事態を経て、韓国社会はついに「ファシズム」という言葉を全面的に直視するようになった。これまで絶版となっていた『歴史的ファシズム』の再版を求める声が急増したのもそのためだ。

『歴史的ファシズム体制の人種主義とジェンダー政治』|クォン・ミョンア著、カルムリ刊、3万ウォン//ハンギョレ新聞社

 『歴史的ファシズム体制の人種主義とジェンダー政治』(カルムリ刊)は、著者が20年ぶりに『歴史的ファシズム』を新たに書き直す形で出した全面改訂増補版だ。韓国、日本、中国、英米圏の4カ国語のテキストを横断し、雑誌や映画など各種の資料収集と先行研究を経て、著者は戦時動員体制が持つスペクトラムの最後のピースを埋め込み完結させた。今回の本に新たに含まれた第5部では、中国と朝鮮の密接な関係と、これを引き離そうとする日本帝国の策略を扱いつつ、ファシズムの核心である人種主義に対する研究を深めて提示する。

 「歴史的ファシズム」とは、二つの世界大戦を包括する時代を指す。本書は満州事変からアジア太平洋戦争までの日帝末期における戦時動員体制を中心に、この「歴史的ファシズム体制」がいかに韓国人の日常を組織化し、現代とどのように関連しているかを明らかにした。著者はファシズム体制下の集団的狂気を「孤立感の総合」と規定する。ファシズム化の最大の兆候は連帯の可能性の破壊と個々人の孤立化だということだ。

 万人の万人に対する闘争という狂気が渦巻くのがファシズム体制だ。通常、韓国ではファシズムが持つ集団主義的傾向に焦点が当てられるが、著者は「競争体制、憎悪心、剥奪された者の怨恨といった資本主義体制の特定の側面」がファシズムの中核だと強調する。実際、このように制御できず相手に向かって沸き立つ敵意は、原因不明の感情や情緒に近い。より正確には、単純な感情や情緒を超えた、特定かつ強力な力を指す「情動」(affect)の問題として把握できる。ファシズム体制に合流する内的要因は、競争に勝ち、他者を踏み台にしようという欲望の問題だ。

 こうしたファシズムの憎悪政治の中心には、人種主義とジェンダー政治がある。ファシズムは憎悪の情動を政治手段として利用し、人種、ジェンダー、世代、階級などに基づいて人々を細かく再配置しながら互いに敵対させる。ファシズムの政治学は性別の二分法を強く支持し、伝統的な家族の価値と守護を主張し、異質で汚染されたものを浄化する国家像を持つ。混ざり合うことに対して恐怖心があるため純血と純潔を強調し、混血や雑種的なものへの恐怖と血統主義を強迫的に持ち、このような感覚を刺激する。

不良性は「家庭」のせいと考えられた。「不良少年少女は如何なる家庭から」『報道月報』1934年5月=カルムリ提供//ハンギョレ新聞社

 戦時動員体制において日本帝国と総督府は、国家家族主義の枠組みの中で朝鮮人の皇民化過程を推進する。息子や夫を戦場に送った「銃後婦人」、若者などをファシズム的主体に作りあげた。新たな主体の形成は、他者の排除によって成し遂げられる。例えば、ファシズム的に刷新された新たなエリート青年の誕生は堕落した近代的男性知識人の対極において作られ、後方の犠牲的な銃後婦人のアイデンティティは贅沢と享楽にふけって乱れた新女性と対置される。

 特に、銃後婦人政策と言説において「スパイ」と関連づけた部分は非常に興味深いながらもゾクリとする。朝鮮でスパイ言説は1930年代から流行し、「トランクに、コートの中に、弾丸を隠している怪しげな中国美人」といった言説やニュースは、いわゆる「レッドウーマン」への恐怖を生み出した。服の中に銃を隠し、男性たちを待ち伏せして暗い道へと誘い込む若い女性のイメージは、1948年の「麗水・順天10・19事件」(麗順事件)で女学生たちがスカートの中に銃を隠して兵士を射殺したという「幻想の女学生部隊」というフェイクニュースを想起させる。麗順事件の強烈なイメージを作り出したこの種の捏造記事は、歴史的ファシズム体制が残した残滓といえる。著者は「スパイ言説のまん延は社会のファシズム化を示す兆候」と述べたが、これは12・3戒厳当時「恥知らずな従北反国家勢力を一掃し、自由憲政秩序を守るため、非常戒厳を宣布する」と述べた尹錫悦の談話文も連想させる。

 若者の問題を見てみよう。植民地ファシズム化を遂行する最前線に配置された「若者」は、社会主義と資本主義的な近代エリートをいずれも拒否するアイデンティティだ。近代的知識人は「退廃分子」「日和見的態度」として表象され非難される。現在の韓国の「若者言説」がどのような性別と世代と人種を含み、また排除しているのかという問題とも関連づけて考えてみるべきだろう。

植民主義言説の典型的なパターンを示した『大東亜民族誌』(東亜経済懇談会編、1943年)=カルムリ提供//ハンギョレ新聞社
南方に対する異国的な情緒を込めた詩で頻繁に見られる「はだかの黒い女性よ」といった表現は、南方種族誌が描いた南方の女性に対するイメージによる。『大東亜民族誌』(東亜経済懇談会編、1943年)=カルムリ提供//ハンギョレ新聞社

 人種主義は日本帝国が構想した「大東亜言説」にはっきりと表れる。「東アジア家族」において日本は父親、アジア各国は「帝国の子どもたち」として序列化する家族国家主義的言説だ。人種階層的な日本の南方に対する民族誌は、朝鮮が南方の人々を原住民、野蛮人、椰子の木の下の「黒い人」としてイメージ化するのにも大きな影響を与えた。南方国家に対する朝鮮人の優越感も、現在の外国人労働者や結婚移住女性が経験する悲劇的な出来事と交差して考えるべきではないかという問いを投げかける。当時、中国的なものは朝鮮に付着した病的なもの、がん細胞、ウイルス、病原菌そのものとみなされた。こうした言説もまた、現在の韓国社会で起きている嫌中感情や憎悪の情動との強い関連性を見出せる。ファシズム的狂気の起源ともいえる現代の韓国社会のヘイトの根源にまで遡り、ファシズム体制が生み出した情動を掘り下げる著者の粘り強さと切実さが、読者にはっとするような気づきとインスピレーションの瞬間をもたらす。

 クォン・ミョンア教授はハンギョレの電話インタビューで「あの時代の『歴史的ファシズム』は、今の私たちの現在から遠いものではなく、日常化された方法で私たちの中に内在化している。改訂増補版を通じて今の社会的文脈でより鋭く伝えたかった」と語った。

イ・ユジン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1234190.html韓国語原文入力:2025-12-12 08:43
訳C.M

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