10日、小説家のハン・ガン氏(53)が韓国の作家として初めてノーベル文学賞を受賞し、文学・出版界は韓国文学の地位を世界に知らしめる大きな快挙として歓喜した。
2007年に『菜食主義者』を国内で出版した「創批」のヨム・ジョンソン代表は「待ち望んでいた。韓国文学の地位を世界に知らしめる大きな快挙」だと述べ、大きな喜びを隠すことができなかった。ヨム代表は「K-カルチャーが広がってK-POPや韓国映画は世界の舞台で証明されており、韓国の作家がノーベル文学賞を受賞すればそれがK-文学の頂点のようなものになるので、そのような日が来ることを期待していたが、ハン・ガン氏が受賞することになった」と述べた。ヨム代表は、ハン・ガン氏の作品が多くの言語に翻訳されたことが、ノーベル文学賞受賞につながるきっかけになったと付け加えた。ハン・ガン氏の作品『菜食主義者』『少年が来る』『すべての、白いものたちの』などは、様々な国の言語に翻訳されている。
ハン・ガン氏がアジアの作家であり、かつ女性作家であることに加え、歴史的な悲劇を正面から見つめながら詩的に描写した点が、ノーベル文学賞受賞につながったという見方もある。「文学トンネ」のイ・ヒョンジャ編集局長は「ハン・ガン氏の作品は、歴史的な悲劇に正面から向き合いながらも、単なる悲劇にとどまるのではなく、それを克服する人間の意志が美しく表れている」として、「世界各地で戦争が起きて葛藤する悲劇のなかで、ハン・ガン氏の作品が喚起するものがあり、ノーベル文学賞の委員会も高く評価したのだろう」と述べた。イ局長は「ハン・ガン氏はいつか受賞すると思っていたし、今年はアジアの作家や女性作家の受賞の可能性が高いと予想されていたので、ある程度は予見されていたものだったが、このように受賞したことは、文学界と出版界にとって大変な名誉だ」と述べた。イ局長は、ハン・ガン氏のノーベル文学賞受賞が文学作品に対する読者の関心を呼び起こすきっかけになると語った。
今回の受賞作が、歴史の中の人間のトラウマとそのトラウマを克服して治癒する過程についての物語であり、韓国だけの特殊な事件ではなく、きわめて普遍的な人間の苦痛に向き合っているため受賞できたという評も出ている。作家兼文学評論家のチョン・ヨウル氏は「ハン・ガン氏には、初期の作品から持っていた思惟の種や希望の種のようなものがある。それは、一個人は歴史の中において無力な存在ではなく、自分の小さな場所でも輝かしい選択が可能だというもの」だと説明した。文学の本質に迫る彼女の作品が、文化や国境、世代を越えてカタルシスを感じさせたといえる。
過去10年間、欧州の知識人の間で韓国文学に対する関心が高まっていたなか、韓国の出版と文学が国際的な観点を備えて活動するきっかけが設けられたという期待感もある。出版文化協会のユン・チョルホ会長は「2019年にスウェーデン出版協会が主催した国際ブックフェアに韓国が主賓国として招待され、当時韓国を代表する作家としてハン・ガン氏が訪問したところ、会場で完売した記憶がある」と述べた。ユン会長は「最近の韓国文学に対する世界の人たちの関心が、文学に加え児童書にまで全方向的に高まっている」として、「韓国の出版と文学はもはやローカルに留まらず、世界的な地位を備えるようになった」と述べた。
韓国文学を翻訳して全世界に知らしめるうえで先頭に立ってきた韓国文学翻訳院のクァク・ヒョファン元院長は「ハン・ガン氏の2016年の『菜食主義者』でのブッカー国際賞受賞以降、良質な翻訳が着実に続いており、その後の続作で世界的な作家になった」として、「韓国文学が世界文学の中で地位を築きつつある」と評した。