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「米中が衝突する地殻変動期…韓国政治は『19世紀の失敗』を記憶せよ」

登録:2024-05-03 07:33 修正:2024-05-06 10:36
第14回学ヒョン学術賞を受賞したイ・ジェミン名誉教授
第14回学ヒョン学術賞の受賞者に選ばれた延世大学のイ・ジェミン名誉教授が29日午後、ソウル麻浦区孔徳洞のハンギョレ新聞社でのインタビューに先立ち、写真撮影に応じている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「朝鮮が19世紀末に失敗したのは、井の中のかわずのように世界情勢に無知で、軍事力から見た国の力量が非常に弱く、内部分裂が深刻だったからだ。今は世界情勢の把握や軍事力は問題ないが、政治は依然として内部の結束を引き出せずにいる」

 第14回学ヒョン学術賞の受賞者に選ばれた延世大学のイ・ジェミン名誉教授(74)は先月29日、ソウル麻浦区孔徳洞(マポグ・コンドクトン)のハンギョレ経済社会研究院でのインタビューで、「現在の韓国は、米国と中国という2つの大国がヘゲモニーをめぐって衝突することで国際秩序が地殻変動する時代を迎えている」とし、「歴史的にみれば、14世紀(元・明交替期と朝鮮建国)、17世紀(明・清交替期と丙子胡乱)、19世紀(帝国主義の侵略)と比較しうるが、2つ目と3つ目の失敗から教訓を得るべきだ」と語った。

 イ教授は代表受賞作である英文の著書『韓国の経済発展:成長と屈曲の過程』で、伝統社会から最近までの韓国経済の転換と発展の過程を分析・評価した。同氏は「経済発展は経済的分析だけでは理解できず、歴史、政治、社会のような別の学問との学際的研究が非常に重要だ」とし、「経済発展の過程を政治的、歴史的変化とつなげて説明しようと努めたが、難し過ぎてきちんとはできなかった」と惜しさをにじませた。

 審査委員団は、長期的な経済発展に関する世界の学界の議論の枠組みの中で韓国の経済発展を説明したことが著書の最大の長所だ、と選定理由を説明した。最近の長期的な経済発展に関する主な研究テーマのひとつは、近代以降の欧州とアジアの格差の拡大だ。中国史の権威である米シカゴ大学のケネス・ポメランツ教授はこれについて、「大分岐(グレート・ダイバージェンス)」という概念を提示している。これに加えてイ教授は、20世紀以降の韓国や中国などの東アジアの経済的追撃に注目し、「大収れん(グレート・コンバージェンス)」という概念を導入した。イ教授は「かつての欧州主導の植民地支配を受けた国の中で、韓国は唯一先進国入りに成功した。中国も大収れんの道に足を踏み入れているとみるべきだ」とし、「数百年間続いた西欧の支配が覆ることは大きな意味を持つが、韓国の経済発展をこのような脈絡から見つめようとした」と執筆の背景を説明した。

英文の著書『韓国の経済発展…』で
伝統社会から経済転換の過程を振り返る
植民地から先進国となった背景を研究
「ヘゲモニー衝突の時代、歴史から教訓を」

「政府は物価不安の収拾のために通貨緊縮を
財政支出は減らし、増税すべき」

 同氏は、朝鮮は初期の産業化を成し遂げられず植民地へと転落したものの、韓国が1960年代以降に高度成長を開始できた要因として、日帝強占期が残したインフラ、工業化の経験などの遺産に加え、1950年代の冷戦体制下でほとんどの新生独立国と異なる経済体制が成立したことをあげた。ほとんどの新生独立国が社会主義や第三世界民族主義を追求した結果、経済発展に失敗した一方、韓国は資本主義の道を歩んだ。このような条件の下、朴正熙(パク・チョンヒ)政権が国の力量の向上を通じて政策の有効性を高めることで、高度成長が開始されたというのだ。しかしイ教授は、「これらすべてが日帝の植民地支配、分断と戦争、朴正熙の権威主義政治などの暗い面と共に進んだということを、バランスよくみなければならない」と述べた。

 イ教授はさらに、韓国が困難の中で開始した高度成長を「持続」できたというところに、より重要な成功の理由を見出す。同氏は、危機が頻発する中でも韓国が成長を続けられた過程を、マクロ経済の管理、構造転換、社会対立の管理の3つの面から説明する。イ教授はマクロ経済の管理の例として、1979年の危機克服をあげた。韓国は1960年代から続いた物価不安と外債危機に、第2次石油危機と朴大統領の暗殺が重なり、大きな危機を迎えていた。

延世大学のイ・ジェミン名誉教授=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「1979年の危機は1997年の通貨危機よりはるかに深刻だったが、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権が収拾した。物価不安は経済の専門家たちに安定化政策を一貫して推進させることで収拾し、外債不安は日本から40億ドル(の経済協力資金)を借りて解決した」。同氏は続けて「当時、日本が金を貸すことを渋ったため、韓国は冷戦体制の最前線で莫大な国防費を負担しているのに日本はただ乗りしていながら金も貸さないと米国のレーガン政権を説得し、日本に圧力をかけさせた」とエピソードを紹介した。

 同氏は1997年の通貨危機の原因を、1979年の危機とは異なり、国際秩序の変化にきちんと対応できていなかったところに見る。イ教授は「当時の通貨危機は、日本の諸銀行が韓国の諸銀行に貸していた短期資金を自らの事情で急激に回収したために起きた」とし、「危機後、日本はアジア通貨基金(AMF)で韓国などの危機に瀕する東アジア諸国を助けようとしたが、米国の強硬な反対で失敗に終わった」と語った。同氏は「米国が反対したのは、米国経済の主導権が金融部門へと移るとともに、冷戦の終結で米国のヘゲモニーの性格が変化したからだが、韓国はきちんと対処できていなかった」と分析した。

 イ教授は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の経済政策について、「物価不安の収拾のために通貨緊縮を行いつつ、財政も支出を減らして増税する収縮政策が必要だ」とし、「現状において減税は適切ではなく、成長につながる可能性も低い」と指摘した。

 イ教授はソウル大学商学部経済学科を卒業し、米ハーバード大学で経済学博士号を取得。韓国経済発展学会と経済史学会の会長を歴任。文在寅(ムン・ジェイン)政権では国民経済諮問会議の副議長を務め、政策の助言もおこなった。

クァク・チョンス先任記者|ハンギョレ経済社会研究院 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/1139128.html韓国語原文入力:2024-05-02 19:15
訳D.K

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