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香港、ソウル、東京…どの都市が「より強力な美術都市」となるか

登録:2023-04-01 07:51 修正:2023-04-01 09:00
アート・バーゼル香港、販売成果にもかかわらず 
観客などで中華圏のイベントに転落 
ソウル、豊富なスタジオやギャラリー 
香港の地位の代替・役割分担を期待 
7月開始の「Tokyo Gendai」も注目
アート・バーゼル香港2023のVIP開幕イベントが開催された先月21日、観客たちが韓国の作家イ・ベ氏の単独作品ブースを見ている//ハンギョレ新聞社

 香港とソウル、どっちが“より強い”だろうか。

 最近、韓国市場のコレクターや画廊主、プランナーの間で熱い議論の種として浮上しているクエスチョンだ。東アジアを代表する両都市の美術競争力を比較し、長所と短所を議論する人が増えた。アジア最大規模の国際美術品市場(アートフェア)である「アート・バーゼル香港2023」が先月21~25日に香港で開催された後に生じた現象だ。もう少し具体的に言うならば、過去10年間のアジア市場を代表するハブ(核心拠点)として君臨してきた香港に、ソウルが追いついて新しいハブになれるのか、それとも今後も香港がこれまでの市場トップの座を維持するのかに対する議論だといえる。

 実際、先月21~23日のアート・バーゼル香港の販売展覧会の現場を見て回って取材した内容をまとめると、香港の文化地政学的な位置づけは過去より顕著に萎縮したという印象を与えるのに十分だった。2019年の国家安全法制定以降、中国の中央政府の影響が露骨になり、香港の社会と文化界の政治的多元性が圧力を受けている状況は隠せなかった。アート・バーゼル香港の場合、177の画廊が参加し、コロナ禍以前の水準に回復しつつあったが、最大で250ほどに達した全盛期の規模に比べると大幅に減り、西欧の名門画廊や有力コレクター、画商はあまり参加しなかった。芸術家にとって必須である政治的自由が侵害されている香港に、西欧の美術関係者たちがあからさまに背を向けたのだ。ちょうどイベントの期間中、習近平国家主席を風刺した「クマのプーさん」が登場する西欧の映画の上映が不許可となり、香港民主化活動家の名前に言及した米国のメディア作家の作品は、デパートの電光掲示板から消えた。韓国からアートフェアの取材に来た記者たちは、現地の美術館の関係者に会い話を交わす際も、他の機関から派遣されたような見慣れない印象の要員が対話の場に入ってきて内容を聞く光景を目撃することもあった。

先月20~22日、香港のアレクサンドラハウスのクリスティーズのオークション展示場に現れた米国の巨匠ジョージア・オキーフの花の絵。5月に米国ニューヨークで開催のクリスティーズのポール・アレン・コレクションへのオークション出品を控えて展示された//ハンギョレ新聞社

 もちろん、アート・バーゼル香港2023のイベントの販売成果は悪くなかった。中国大陸と中華圏、そして韓国の富裕層のコレクターが大勢駆けつけ、西欧の顧客の分を埋めたからだ。西欧とアジア圏の主要な画廊も、問題なく好まれそうな西欧や中国、日本などの巨匠の作品を数多く持ちこみ、下降中の国際美術品の景気の影響はさほど受けず、出品した作品のほとんどが売れるなど、善戦したという評価が主に出ている。だが、観客や顧客の偏り、ブランドもののデパートのようになってしまった市場状況は、はたして香港がアジア市場の単独トップの座を維持できるかに対する疑問を生じさせた。言い換えるとこれは、昨年世界的な西欧のアートフェアである「フリーズ(Frieze)」を誘致したソウルがその地位に替わるか、かなりの役割を分担できるのではないかという期待につながる部分だ。

 香港は古くから金融のハブであり、無関税を基盤に美術品の取引においても他の都市には真似できない基盤を備えていた。香港に対する美術投資はますます強力になったというアート・バーゼル側の公言も、口先だけの言葉ではなかった。サザビーズ、クリスティーズ、フィリップスのような国際オークション会社は、アート・バーゼル香港が開かれたアートウィーク期間中、世界屈指のコレクションのオークション出品作で特別展を相次いで開いた。建築の巨匠ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計したM+美術館も、先月20日に世界中の美術界の名士300人ほどを集め盛大な再開館レセプションを開いた。オークション会社のフィリップスはM+の近くに新館の展示場を設け、現代美術の名作とファッションブランドの店舗、多国籍ギャラリーなどが融合した九龍地区の「K11 MUSEA」も多くの客を集めた。ソウルの場合は状況が異なる。デジタル経済の基盤がしっかりしており、市内各所に豊富な作家スタジオと多様なオルタナティブ・スペースやギャラリーなどを兼ね備え、創作生産の基盤の面では香港を圧倒するが、市場に関連するオークション会社や商業的な展示場のインフラは香港にはるかにおよばない。

香港島と向かいあう九龍文化地区のM+美術館=M+美術館提供//ハンギョレ新聞社

 7月には「Tokyo Gendai」というタイトルで大規模なアートフェアを開始する、伝統ある美術都市・東京の可能性も注目すべきだ。アート・バーゼル側は早くも日本側のフェアと連帯する意向を表明している。昨年、フランスの伝統あるアートフェア「FIAC」の座を奪って開催し大盛況だった「Paris+ par Art Basel(アート・バーゼルによるパリ+)」の成果を意識している気配が明らかだ。

 今後はグローバル競争は都市間競争になるという予測がかなり前から出ている。今回のアート・バーゼル香港のフェアは、東アジアの大都市の間で美術ハブをめぐる文化力競争が本格化することを示す前兆として意味深長だと考えられる。

文・写真:ノ・ヒョンソク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/1085776.html韓国語原文入力:2023-03-30 09:31
訳M.S

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