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牛乳の摂取が新石器時代の北欧人の身長を伸ばした

登録:2023-02-18 06:39 修正:2023-02-18 08:47
地中海沿岸で伝播した農作物 
寒いヨーロッパの気候に適応できず 
食糧不足のため牛乳の摂取開始 
氷河期以降低下した身長が再び伸び始める
新石器時代のヨーロッパ人は牛乳の摂取をきっかけに再び体が大きくなり始めた=ピクサーベイ//ハンギョレ新聞社

 人類は1万2千年前、最後の氷河期が終わるとともに狩猟採集生活から脱し、一カ所に定着して耕作をする新石器時代を開いた。

 1万4500年~1万1600年前、ギリシャ、シリア、エジプトを包括する地中海東部沿岸(レバント)地域に住んでいた古代人(ナトゥーフィアン)は、最初に農耕文化を築いた集団の一つだ。パンを作って食べた跡や、穀物、石臼、石の構造物など、これを裏付ける遺物がこの地域で発見された。彼らは農作業と共に移動と労働の道具として、または食用のために、羊や牛、ラクダのような家畜も飼い始めた。

 ナイル川流域では7500年前、中国では1万300年~8700年前にキビを栽培した証拠が出てきた。南アジアでは9千年前の非常に初期の陶器とコメが発見されたが、本格的な農業はそれから4千年後、西ユーラシアと中国で作物が伝播された後に始まった。

 農耕生活と共に扶養すべき人口が大幅に増えたことで、慢性的な食糧不足現象が起き、これが身長と体格に否定的な影響を及ぼしたというのがこれまでの定説だった。

 しかし、カナダのウェスタン大学が中心となって構成された国際共同研究陣が、米国立科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した新しい研究によると、身長が低くなる傾向は最終氷期極大期(2万6000年~2万年前)に寒さと日照りによる食糧不足から始まったという。その後、欧州など一部地域で牛乳を摂取し始めたことで、流れが変わった。

 研究陣は、現在から3万年前までの間の、地中海東部沿岸、欧州南部、中部、北部、ナイル川流域、南アジア、中国の7地域における366の考古学遺跡地で発掘した3507個の遺骨を分析して身長と体重を推定し、これを農業および牧畜の伝播時期と比較した。

この3万年間の身長と体重の変化の推移。左の図が身長、右の図が体重//ハンギョレ新聞社

3万年前に始まった身長低下…農業では流れを変えられなかった

 まず遺骨分析の結果、これらの地域の平均身長は3万年前から下がり始め、8000年~6000年前に最低になったことが分かった。農業の拡散は身長と体重を安定させる役割を果たしたが、流れを逆転させることはできなかった。

 そのうちに欧州の中部と北部で逆転現象が起きた。中欧では7000年~4000年前、北欧では8000年~2000年前に人々の身長が伸び始めた。体重も似たような傾向を示した。

 研究陣は、これは約9000年前に西アジアに始まり全世界に広がり始めた牛乳または乳製品の生産と関連があると推定した。中欧では少なくとも7400年前から牧畜が始まった。この時期に牛乳摂取を通じてより多くの栄養を得られるようになり、身長が伸び、体重が増えた。

 中欧と北欧の人々が牛乳を摂取するようになったきっかけは、西アジアから伝播してきた作物がヨーロッパの寒い気候に適応できなかったためだった。食糧不足により人々はチーズ、ヨーグルトを作って食べる余裕もなく、生の牛乳を直接飲み始めた。チーズなどの乳製品には乳糖成分が少ないが、生乳には乳糖が多い。

 もともと乳糖を分解する酵素であるラクターゼの生産と関連した遺伝子は、乳を飲む乳児期が過ぎると不活性状態になる。したがって、最初は生の牛乳を飲むと腹を下すなど、病気になる人が多かった。しかし、次第に成人期にも乳糖を消化させることができるラクターゼ持続性(LP)遺伝子変異が拡散する自然選択が起きた。研究陣は、これによって同地域の人々の身長が伸び、体重が再び増えたものとみられると説明した。

ヨルダン北部のヤギと山羊飼い=ウェスタン大学提供//ハンギョレ新聞社

北欧人が南欧人より身長が高い理由

 バルト海沿岸の衛生が劣悪な環境で、足りない栄養補給のために牛乳を飲むようになると、乳糖を消化できない人は様々な病気にさらされて自然に淘汰されたという。研究陣は、その影響で現在の欧州北部の人々は南部の人々よりラクターゼ持続性遺伝子を多く持つようになったと説明した。これに先立ち、英国のブリストル大学の研究陣は、飢饉が乳糖消化遺伝子の拡散を誘導したとみられるという研究結果を昨年発表した。

 研究を率いたジェイ・ストック博士は「ラクターゼが欧州人の身長を伸ばしたことを証明することはできないが、説得力はある」として、「身長が高くなる時期と地域の人々が乳糖消化力を持つようになった時期が一致する」と語った。研究陣は特に、北欧のバルト海沿岸とスカンジナビア半島南部地域で身長と体重が最も明確に増加したと明らかにした。ただし、北欧内でも英国は変化の幅が最も少なかった。

成人人口のうち乳糖を消化できる人の割合=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

身長の高いマサイ族にも長い牛乳摂取の歴史

 しかし研究陣は、地中海東部沿岸地域や中国のように牧畜と農業が長い間安定して共存した地域では、身長と体重がほとんど変わらず、一定に維持されたと明らかにした。これらの地域では牛や羊、ラクダの乳を搾った後、主に乳糖の少ないヨーグルト、チーズのような乳製品を作って摂取した。

 これまでの研究によると、成人人口のうち乳糖を消化できる人の割合は、全世界では10人中3人に過ぎないが、北欧人はその割合が90%を超えるものと推定される。一方、アジアでは成人の大多数が乳糖消化因子を持っていないことが分かった。

 研究陣は、アフリカの部族の中で特に身長の高い東部アフリカのマサイ族が、牛乳を主食としてきた長い伝統文化を持っていることも「ラクターゼ成長仮説」を後押しする事例に挙げた。

 研究データを提供した英国クイーンズ大学ベルファストのウェイン・パーキンソン博士(古生物学)は「幼いころ、身長を伸ばしたいなら牛乳を飲めと言われた記憶があるだろう」とし、「私たちはこれを私たち自身の進化の話という脈絡で考えられるようになった」と話した。

*論文情報

https://doi.org/10.1073/pnas.2209482119

Long-term trends in human body size track regional variation in subsistence transitions and growth acceleration linked to dairying

Proceedings of the National Academy of Sciences

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1079422.html韓国語原文入力:2023-02-13 11:16
訳H.J

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