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ウサギの住む月へ…今年タヌリ号など各国の探査船の打ち上げ「目白押し」

登録:2023-01-10 06:36 修正:2023-01-11 10:38
韓国タヌリ号、2月から本格的に探査活動 
米国、日本など4カ国で最大5機の着陸船を準備 
米・日は最初の民間月面着陸船の記録をめぐり競争
月の軌道を回る韓国のタヌリ号(想像図)=韓国航空宇宙研究院提供//ハンギョレ新聞社

 2022年は21世紀に入って宇宙探査が最も活発だった年の一つだった。

 天文学の新しい地平を開いたジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡(JWST)が6月末から観測活動を始め、9月末には史上初めて宇宙船を小惑星に衝突させ軌道を変更するプラネタリー・ディフェンス(地球防衛)が実を結んだ。11~12月には新しい有人月面着陸プログラム「アルテミス計画」の初の月までの無人往復飛行(月周回軌道に投入されてから地球に帰還)が成功裏に終わった。3つの大型プロジェクトを進めた米航空宇宙局(NASA)は、久しぶりに最も成功した1年を送り、世界の宇宙探査の水準を数段階引き上げた。

 さらに12月27日には、韓国初の月軌道船タヌリ号が月上空100キロメートルで軌道に乗ったことで、2022年の世界宇宙探査の最後を飾った。

 「黒い兎の年(癸卯年)」を迎えた2023年には、ウサギの伝説を秘めている月に対する探査がさらに活発に展開される。宇宙探査の中心軸が久しぶりに火星から月に移る見通しだ。すべての日程が順調に進んだ場合、日本と米国、インド、ロシアの4カ国から最大5機の無人探査機が月面着陸に挑戦する。

 新年の月探査の先鋒は韓国のタヌリ号だ。タヌリ号は今月中に搭載体が24時間ずっと月面を観測できるよう方向を変更した後、来月から年末まで6つの搭載体を利用した本格的な探査活動に乗り出す。

タヌリ号に搭載された探査装備=韓国航空宇宙研究院提供//ハンギョレ新聞社

タヌリ号、「月観測の新たな地平開拓」に期待

 まず、韓国航空宇宙研究院の高解像度カメラは、2030年代を目標にしている韓国初の月面着陸船の着陸候補地を探索する。また、韓国天文研究院の広視野偏光カメラは、月表土粒子の大きさを分析し、月全体のチタン分布地図を作成する。このカメラは、世界で初めて月面の粒子の大きさを入れた偏光地図を完成させるという点で、世界の科学界から大きな注目を集めている。科学雑誌「ネイチャー」と「とサイエンス」は同カメラについて「月観測の新しい地平を開く装備」だと評価した。

 この他、慶煕大学の磁場測定器は月の磁場異常地域を把握し、韓国地質資源研究院のガンマ線分光器は資源探査の基礎資料として水や酸素など5種以上の元素地図を作成する。また、韓国電子通信研究院の宇宙インターネットは、世界で初めて深宇宙探査用の宇宙インターネット(DTN)技術を使い、地球と月間の途切れない通信技術をテストする。

 タヌリ号の唯一の外国の搭載体であるNASAのシャドーカメラは、今後「アルテミス計画」で宇宙飛行士が着陸する月の南極にある永久影の候補地を精密に探索する。

日本のアイスペースの月面着陸船「ミッション1」=アイスペース提供//ハンギョレ新聞社

アラブ首長国連邦、日本の月面着陸船にロボット探査車を搭載

 さらに4月には、日本の民間宇宙企業アイスペース(ispace)が打ち上げた月面着陸船ミッション1が月面着陸を試みる。12月11日に地球を出発した高さ2.3メートル、幅2.6メートル、重さ340キログラムのミッション1は、日本の史上初の月面着陸船だ。

 ミッション1は4月末、月面北東側の「氷の海」の淵にある衝突盆地に着陸する予定だ。月まで行くのに4カ月以上かかるのは、燃料節約のため直ちに飛ばず、地球と太陽の重力を利用する迂回経路で150万キロメートルを飛行するためだ。宇宙船が月面着陸に成功すれば、日本はロシアと米国、中国に続き4番目の月面着陸国となる。

 同着陸船にはアラブ首長国連邦連合の小型ロボット探査車「ラシード(Rashid)」が搭載されている。ラシードは重さ10キログラムで、現在唯一の月面探査機である中国の「嫦娥4号」の10分の1の大きさだ。作動寿命は月の1日のうち昼間の時間(地球基準で14日)。ラシードにはカメラ4台を含む6つの科学装備が搭載されている。

米国のインテュイティブ・マシーンズの月面着陸船「Nova-C」の想像図=NASA提供//ハンギョレ新聞社

日本より出発は遅いが速く飛ぶ米国の民間着陸船

 アイスペースが月に近づく頃、米国の宇宙企業アストロボティック・テクノロジーとインテュイティブ・マシーンズも無人月着陸船を打ち上げる。特に、インテュイティブ・マシーンズの月着陸「Nova-C」は迂回経路ではなく直線経路で飛行し、6日で月に到着する。いつ打ち上げられるかによって、日本の着陸船より先に月に着陸する可能性もある。現在の予定通り3月に行われた場合、「史上初の民間月着陸船」の主人公が変わる。アストロボティック社も月面着陸船「ペレグリン」を第1四半期中に打ち上げる計画だ。

 2機の探査船はNASAが運営する民間の月面着陸プログラムの後援を受けている。NASAは民間探査機にさまざまな科学装備を搭載する予定だ。

 民間の月面着陸船の打ち上げは今回が初めてではない。イスラエルの民間企業「スペースIL」の宇宙船ベレシート(Beresheet)は、2019年に月面着陸を試みたが墜落した。

日本の精密月面着陸船「スリム」の想像図=日本航空宇宙研究開発機構提供//ハンギョレ新聞社

「降りやすいところ」ではなく「降りたいところ」に降りる

 日本は民間企業のほかにも、航空宇宙研究開発機構(JAXA)が年内に小型月面陸船「スリム(SLIM)」を打ち上げる計画だが、具体的な日程は公表されていない。

 同宇宙船はこれまでで最も正確な精密着陸技術の試演を目標に掲げている。目標地点から100メートルの範囲内に着陸することを目指す。高さ2.4メートル、幅2.7メートル、重さ200キログラムのスリムは、月の上空600キロメートルから着陸地点に向かって3.5キロメートルの高度まで下がった後、垂直下降を開始し、3メートル上空に達してエンジンを切って着陸を試みる。

 当初は昨年打ち上げる計画だったが、搭載装備の一つである分光器の開発が遅れ、打ち上げが延期された。

 XASAは「この技術を実証することで、我々人類が進める重力天体探査は、従来の『降りやすいところに降りる』探査ではなく、『降りたいところに降りる』探査へと非常に大きな転換を果たすことになる」と意味付けした。

インドの3番目の月探査船「チャンドラヤーン3号」の想像図=インド宇宙研究機構提供//ハンギョレ新聞社

インド、2度目の着陸の試み…ロシアは半世紀ぶりに挑戦

 インドとロシアも今年中に無人月面着陸船の打ち上げを進めている。打ち上げ時期は流動的だ。

 まずインドは6月に月面着陸船「チャンドラヤーン3号」を打ち上げる計画だ。当初、昨年8月に打ち上げる予定だったチャンドラヤーン3号の着陸候補地は月の南極だ。チャンドラヤーン3号はインドの2度目の月面着陸の試みとなる。

 2008年に月軌道船チャンドラヤーン1号を成功させたインドは、2019年に月面着陸船(ランダー)と軌道船(オービター)、月面を移動するローバーからなるチャンドラヤーン2号を打ち上げたが、失敗した。チャンドラヤーン2号は着陸を試みる過程で墜落した。

 7月にはロシアが月の南極探査船「ルナ25号」を打ち上げる予定だ。

 ロシアも昨年予定されていた打ち上げを延期した。ロシアの月探査は1976年のルナ24号以来、ほぼ半世紀ぶりに再開される。ルナ25号の日程が延期されたことで、ルナ26号とルナ27号も順次後ろ倒しになる見通しだ。ウクライナ戦争の余波でロシア経済がさらに不安定になった場合、打ち上げはさらに先送りされる可能性もある。

 中国は今年月探査計画がない。最も近い日程は2024年、2番目の月のサンプル採取宇宙船「嫦娥6号」を打ち上げることだ。中国は2019年に嫦娥4号で初めて月の裏面に着陸するという記録を打ち立てたのに続き、2020年に嫦娥5号で月のサンプルを持ち帰ることに成功した。

欧州宇宙機関の木星衛星探査機「ジュース」の想像図= 欧州宇宙機関提供//ハンギョレ新聞社

欧州、木星氷衛星探査機打ち上げ

 もちろん、今年の宇宙探査が月だけに限られるわけではない。

 欧州宇宙機関(ESA)は4月、木星衛星探査機「ジュース(JUICE=Jupiter Icy Moons Explorer)」を打ち上げる。

 2031年に木星軌道に到着する予定のこの宇宙船は、木星の4大衛星のうちガニメデ、カリスト、エウロパの3つの氷衛星を探査する。太陽系の惑星ではない衛星を目標にした宇宙探査は今回が初めて。科学者たちはこの衛星の氷の下に生命体が存在できる条件を備えた海があると推定している。

 ジェームズ・ウェブとは異なる任務を遂行する様々な宇宙望遠鏡も待機中だ。

 ESAは下半期中、空の3分の1の領域で20億個の銀河と周辺の暗黒物質を集中的に観測するユークリッド宇宙望遠鏡を打ち上げる。

 中国は今年末、宇宙ステーション「天宮」の周辺に配備する宇宙望遠鏡「巡天」を打ち上げる。巡天は可視光線と紫外線を通じて、ハッブル宇宙望遠鏡より精密に宇宙を観測できる。日本も年内にX線を利用して宇宙の構造を観測する「クリズム(XRISM)」宇宙望遠鏡を地球低軌道に投入する計画だ。

NASAのオサイリス・レックス探査機が小惑星ベンヌのサンプルを採取している様子の想像図=NASA提供//ハンギョレ新聞社

23億キロメートルを飛んで持ってくる小惑星ベンヌのサンプル

 地球防衛戦略構想をきっかけに、一気に関心が高まった小惑星探査もある。

 9月、NASAのオサイリス・レックス探査機が大きさ500メートルの非常に小さな小惑星ベンヌの岩石サンプルを地球に持ち込む。同探査機は2020年10月にベンヌ表面から採取した数百グラムのサンプルを持って、昨年5月に地球に向けて出発した。2016年9月に地球を出発してから5年ぶりに帰還するオサイリス・レックスの総宇宙飛行距離は23億キロメートルに達する。

 さらに10月には、NASAが小惑星「プシケ16」の探査機「プシケ」を打ち上げる。プシケはニッケル、鉄など金属鉱物が豊富で資源採掘の候補として取り上げられている小惑星だ。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1074334.html韓国語原文入力:2023-01-04 10:36
訳H.J

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