韓国初の月探査船「タヌリ」が5日午前(韓国時間)、米フロリダ州ケープカナベラルで打ち上げられ、遷移軌道進入に成功した。遷移軌道とは、一つの軌道から他の軌道に移る時に通る中間軌道で、遷移軌道に無事進入すれば月に向かう軌道に入ったことを意味する。タヌリは今後134日間の宇宙旅行を経て、12月16日に月上空100キロメートル軌道に進入すれば、本格的な月探査活動に入ることになる。6月21日、韓国初の国産ロケット「ヌリ号」の打ち上げ成功に続き、韓国の宇宙大長征で再び画期的な一歩を踏み出すことになる。
ヌリ号の発射成功が宇宙の目標地点に到達するのに必要な技術を確保したものなら、タヌリは目標地点到達以降の活動に焦点が当てられる。月軌道の到着に成功して探査任務を始めれば、韓国は世界で7番目の月探査国となる。ヌリ号の打ち上げ成功で実用級衛星を宇宙に打ち上げた世界7番目の国という実績に続く記録だ。ロケット技術と探査技術は宇宙技術研究開発の二本柱といえる。1969年、アポロ11号の月着陸場面を白黒のブラウン管の前で見守りながら「夢のようなこと」だと思っていた我々が、今や先発6カ国を追いかける後発国家の先頭に立っているのだ。
タヌリは先発国も非常に注視している。著名な科学学術誌「ネイチャー」と「サイエンス」は最近、長文の記事でタヌリの探査任務を報じた。タヌリには偏光カメラなど韓国が開発した5つの装備と、米国航空宇宙局(NASA)が開発した月の永久影領域観測カメラが搭載されている。宇宙科学界は、これらの装備が月観測の新時代を切り開くものと期待している。代表的なものとして、偏光カメラは史上初めて月面の粒子と岩石の分布に関する精巧な把握と、詳細な月面地図の作成を可能にするものと期待される。
タヌリの開発には韓国航空宇宙研究院をはじめとする政府の研究機関6カ所、民間企業40社、大学13校が参加した。官民が開発過程に幅広く参加すれば、宇宙産業の育成に向けた環境を整えるのにも大きく役立つだろう。すでに世界の宇宙産業は国と民間が協力しながら競争する「ニュースペース」時代に入った。政府の政策の一貫性が何より重要だ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に初めて樹立された韓国の月探査計画は、政権によって浮き沈みを経験してきた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は「航空宇宙庁」の新設を国政課題に掲げている。政治的干渉などから自由で、官民を合わせた独自の宇宙研究開発のコントロールタワーになることを期待する。