13日夜、雨季が始まったカンボジア北部のメコン川のコー・プレア島で釣りをしていた漁師のモウル・トゥンさん(42)の釣り糸に、何か巨大なものがかかった。苦労の末に引き上げた魚は、謎の巨大魚、ジャイアント・フレッシュウォーター・スティングレイ(巨大淡水エイ)だった。
彼はすぐに「メコンの驚異」プロジェクトを担当する科学者に電話でこの事実を知らせた。米国際開発局(USAID)が資金支援する同研究事業では、地域の漁師と国際研究者がネットワークを組み、漁師が捕獲した巨大魚に追跡装置を取り付けて放流する代わりに、漁師に市場価格で補償する。
漁師の連絡を受けて現場に駆けつけた科学者は「淡水エイのとてつもない大きさに驚愕した」と、「メコンの驚異」プロジェクトに参加する諮問会社フィッシュバイオが21日明らかにした。「測定の結果、このエイは今まで記録された最も重い淡水魚であることが明らかになった」とフィッシュバイオは付け加えた。
この雌エイの重さは300キログラム、幅2.2メートルで、長さは4メートルに達した。以前の最大の淡水魚の記録は、2005年に獲れたメコンオオナマズの293キログラムだった。
「メコンの驚異」プロジェクトで、今年に入って漁師が情報提供した巨大淡水エイの捕獲は3匹目。研究者たちが捕獲と放流に集中する理由は、謎に包まれたこの巨大エイの生活史を究明するためだ。
科学者たちは、今回捕獲したエイにも尾の付近に切開手術で音波受信機を挿入した。「今後1年間、このエイが出す音をメコン川の上流・下流に配置された一連の聴音装置でモニタリングすれば、淡水エイがいつどこでメコン川を回遊するのか初めて明らかになると期待している」とフィッシュバイオは明らかにした。
メコン川の巨大淡水魚は、大規模なダム建設や人口増加、気候変動などに脅かされている。巨大淡水エイもこの20~30年の間に個体数が30~50%減り、地域によっては95%以上減った国際的絶滅危機種だ。これらの回遊ルートを知ることは、種の保存には欠かせない。
同研究に参加している米ネバダ大学所属の魚類生物学者ゼブ・ホーガン氏は、「(巨大淡水エイが捕獲された)カンボジア北部のメコン川は、ときに水深90メートルにのぼる窪みのある特に健康な区間だ」と、米「NBCニュース」のインタビューで語った。ホーガン氏は「ナショナル・ジオグラフィック」の人気連載「モンスターフィッシュ」の進行役でもある。
彼はこの巨大エイが「歯もなく、バナナの形と大きさの口で、エビ、軟体動物、小型魚などを吸入してすり潰して食べる」として、「しかし、この巨大な動物について、人間はまだほぼ何も知らない」と語った。