ロシア、アメリカ、セルビア、ウズベキスタン、イタリア、クロアチア、タイ….
2020東京五輪のテコンドー種目で金メダルを獲得した国だ。ロシアが唯一2個を獲得しており、7カ国が8個の金メダルを分け合った。アジア(2個)、米国(1個)、欧州(5個)など地域も様々だ。特に、東欧で4個の金メダリストが出た点が目を引く。メダル全体に範囲を広げると、32個のメダルを21カ国が獲得した。初めてテコンドーで五輪メダルを獲得した国も3カ国(ウズベキスタン、北マケドニア、イスラエル)だ。テコンドー発祥の国、韓国は金メダルなしで銀メダル1個と銅メダル2個を獲得し、メダル順位9位で大会を終えた。
今回の五輪は、このようにテコンドーのグローバル化を実感させる結果となった。現在、世界テコンドー連盟(WT)加盟国は210カ国で、国際サッカー連盟(FIFA・211カ国)に次いで2番目に多い。東京五輪のテコンドー種目に出場した国は、難民チームを含めて61カ国だった。開会式では10人以上のテコンドー選手が自国の旗手を務めた。各国でテコンドーがどれほど重要な地位を占めているかを示す部分だ。テコンドー女子49キロ級決勝では、スペイン代表のアドリアナ・セレソイグレシアスが「訓練は厳しく、夢は大きく」(Train hard, Dream big)を誤訳し、「汽車 一生懸命、夢 大きい」とハングルで書かれた黒い帯で出場し、話題になった。
テコンドーのグローバル化は、何よりも入門しやすいことに起因する。特別な装備がなくても、すぐに始められる。経済水準にかかわらずどの国でも楽しめる。世界テコンドー連盟が2015年からヨルダンやトルコ、ルワンダ難民村などにテコンドーを普及させたのも、このような延長線上にある。ニューヨーク・タイムズ紙は26日付で、「テコンドーは五輪全種目の中で最も寛大だ。これまで国際スポーツ界から疎外されていた国々でも表彰台に上がれるという希望を与えた」と評価した。実際、テコンドーは2016リオ五輪当時、コートジボワールとヨルダンに五輪初の金メダルをもたらした。アフガニスタンは過去五輪メダル2個がいずれもテコンドー(2008北京、2012ロンドン)から出た。
グローバル化にともない、韓国テコンドーは金メダル数の減少よりは、テコンドー精神を振り返るべきだという指摘もある。西江大学のチョン・ヨンチョル教授(スポーツ心理学)は、「グローバル化は肯定的な面がある。金メダルが取れないからといって発祥国が変わるわけではなく、むしろ選手たちは(韓国に対し)テコンドーの国として畏敬の念を抱くだろう」と述べた。また「五輪メダルは最終目標ではない。むしろ韓国テコンドー界が実際にテコンドー精神を維持しているのかを振り返らなければならない」と指摘した。
テコンドーの試合ルールを見直すべきだという声もあがっている。韓国テコンドーのエース、イ・デフン選手(29)は26日、東京で引退宣言をする際、「今は失点しないための(守備的な)試合をしている」とし、現行の得点システムを批判した。現在、テコンドーは足裏センサーなどを利用して有効打を自動判定しているが、かつてテコンドーが五輪種目に定着する過程で公正性をめぐる議論が起きたことを意識して作られた規則だ。テコンドーが名実共に世界的なスポーツとして定着しただけに、センサーの代わりに審判の判定に任せ、足蹴りなど攻撃関連ルールを再整備し、試合の楽しさを高める方向に進まなければならないという指摘も説得力がある。