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日本の戦争犯罪を扱った日本映画…黒沢清監督「時代に向き合ったエンターテイメント」

登録:2020-10-27 05:37 修正:2020-10-31 14:15
釜山国際映画祭招待作『スパイの妻』 
太平洋戦争直前の1940年が舞台 
夫が出張中に731部隊を目撃 
暴露を止めさせた妻、その後行動に出る 
 
「普通の日本人の悩みを表現 
日本ではまだ注目されていない」 
今年のベネチア映画祭監督賞
『スパイの妻』の一場面=釜山国際映画祭提供//ハンギョレ新聞社

 21日から行われている第25回釜山国際映画祭に招待された『スパイの妻』は、日本の戦争犯罪を扱った日本映画だ。最近の日本映画界ではなかなか見かけない難しい題材だ。日本政府が相変わらず戦争犯罪を隠すことに固執し被害国に公式謝罪をしない状況で、このような映画を作るには勇気が必要だったろう。しかし、映画を演出した黒沢清監督は26日に行われたオンライン記者会見で「歴史的事実をもとにエンターテイメントの要素を加えた映画であるだけで、強い覚悟や勇気は必要ではなかった」とし、「ただ、このような話が現在とどのようにつながるのかを判断するのは観客にお任せする」と語った。

 『スパイの妻』は太平洋戦争直前の1940年を舞台とする。貿易会社の代表である優作(高橋一生)は満州に出張に行き、731部隊の生体実験など戦争犯罪の惨状を目撃し、衝撃を受ける。優作はこれを国際社会に知らせることを決意するが、彼の妻の聡子(蒼井優)は家庭が危険になるかもしれないという心配で夫を止める。自分の中で葛藤を経た聡子は、思い直して自ら行動に乗り出す。

 黒沢監督は是枝裕和氏とともに現在の日本映画界を導く代表的な監督だ。恐怖やスリラーなどのジャンル映画に社会的なメッセージを入れることでも有名だ。1997年に『CURE』で世界に名前を知らしめて以後、カンヌ国際映画祭に常連として招待された。カンヌでは『回路』(2001)で国際批評家連盟賞、『トウキョウソナタ』(2008)で「ある視点」部門審査員賞、『岸辺の旅』(2015)で同部門監督賞を受賞した。

『スパイの妻』の一場面=釜山国際映画祭提供//ハンギョレ新聞社

 『スパイの妻』は黒沢監督の初の時代劇だ。ただし、日本の戦争犯罪自体を本格的に暴く映画ではない。映画は、これをどのように暴露するのかをめぐり夫婦が経験することを、サスペンス・スリラーとメロドラマの観点で解いていく。黒沢監督は「いかなる政治的メッセージのためにではなく、歴史的な時代によく向き合い、これを基にした娯楽映画を作ろうと思った」と述べた。

 「日本が過去の歴史を清算しなければならないという良心的な声として観てもいいか」という質問に対しては「そのように受けとめてくれたら、私としては嬉しいことだが、何か隠蔽されたことを示す作業を新たに行なったのではない」と言い「すでに知られた事実をもとにし、誠実に描こうとしただけだ」と控えめに述べた。

 『スパイの妻』というタイトルからわかるように、映画は信念を持った夫ではなく、彼の妻を主人公にしている。これについて黒沢監督は「スパイではなくスパイの妻の視線を通じ、当時の普通の日本人が何を悩み、どのように暮らしたのかを表現することができた」と説明した。

 『スパイの妻』は6月に日本のNHKでドラマとして放送されたのに続き、今月16日に日本の劇場でも封切られた。日本内の反応を尋ねるとすぐに彼は「ドラマは8Kデジタル高画質版で放送されたので、対応する受像機があまりない一般家庭ではほとんど見ることはできなかった。今回の映画版の封切で人々が少しずつ見始めたが、まだ大きく注目されるには至っていない状況」だと伝えた。

黒沢清監督=釜山国際映画祭提供//ハンギョレ新聞社

 一方、国際社会では大きく注目されている。『スパイの妻』は先月開かれた第77回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞の監督賞を受けた。彼は「大きな賞の受賞は初めてで、とてもうれしかった。監督賞だが映画に参加した全員に与える賞として受け入れた」と感想を明らかにした。彼は続いて「ただ、現地に直接行くことができず、実感できなかった。私が好きなケイト・ブランシェット審査委員長から直接トロフィーをもらえたならばすごく興奮しただろう」と、残念さものぞかせた。

 『スパイの妻』はまもなく韓国国内でも封切られる予定だ。黒沢監督は「戦争のつらい歴史と現在の連結地点を、韓国の観客も自由に判断してほしい」と期待を示した。

ソ・ジョンミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/967296.html韓国語原文入力:2020-10-27 02:36
訳M.S

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