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260年前に和協翁主が使った化粧品、「K-ビューティー製品」として復活

登録:2020-09-24 06:40 修正:2020-09-27 15:50
[ノ・ヒョンシクの時事文化財] 
農地で偶然に見つかった墓の中から女性用品を大量に発掘 
白磁に入った朝鮮の化粧品、クリームや口紅などに再生
和協翁主の墓から出土した化粧品の成分を基に現代の製品として製作した青華白瓷容器の化粧品。22日に国立古宮博物館で公開された//ハンギョレ新聞社
22日、国立古宮博物館の講堂で韓国伝統文化大学のチョン・ヨンジェ教授が和協翁主の墓から出土した化粧品を基に新たに開発した化粧品を陳列し、新製品の特徴を説明している//ハンギョレ新聞社

 「土の中から木製の馬が出てきました」

 2015年8月13日、京畿道南楊州(ナムヤンジュ)市庁の文化観光課に情報提供の電話がかかってきた。情報を提供したのは南楊州市の三牌洞(サンペドン)に住む農家のキム・ジョンヒさん。家の周りの畑を耕していたとき、漆塗りの木製の馬の彫刻などが入った石箱を見つけたキムさんは、戸惑っていたところ畑を通りかかった警察官の勧めで、急いで連絡したところだった。

 現場を緊急発掘した高麗文化財研究院は、遺物を収集し、他の石箱や小さな白磁の壺、漆器などの名器、硯なども発見した。王族の墓の跡だった。しかし、発掘費用を調達する方法が見当たらなかった。

 1年待ち、文化財庁の支援の下、再調査に着手した研究院側は“大当たり”を引いた。遺跡は、18世紀の朝鮮王朝の英祖王の三女で、米びつに閉じ込められて死んだ思悼(サド)世子(1735~1762)の実姉の和協(ファヒョプ)翁主(1733~1752)が移葬される前の最初の墓(初葬地)だった。和協翁主は10歳の時、領議政の申晩(シン・マン)の息子の申光綏(シン・ガンス)と結婚した後、わずか9年ではしかにかかり亡くなった非運の女性だった。墓中には父の英祖が娘の死を悼む文を刻んだ誌石(死者の人的事項と情報を記録し埋めた平たい石)や青華白磁盒など当時の王室女性の化粧品セット10点、日本製の青銅鏡などが大量に出土した。

2016年、和協翁主の墓の発掘直後に収集した18世紀の化粧品容器。腐食した布の包みの中に入っていた//ハンギョレ新聞社

 当時のキム・アグァン室長を始めとする発掘団は、灰槨で封じた墓の中の3番目の石函の中から腐食した絹の布に包まれた青華白磁の化粧品容器を大量に発掘し、非常に興奮した。キム室長は日光に露出すればすぐに毀損されるだろうと直感し、ただちに服飾史の研究機関である檀国大学の石宙善博物館に連絡した。すぐに駆けつけた博物館の研究者たちと1時間ほどで速やかに収集し、恒温・除湿装置に入れ、国立古宮博物館に引き渡すことができた。

唇保護剤とその材料である紅花の花びら標本//ハンギョレ新聞社

 さらに1年が経過した2017年3月、国立古宮博物館が公開した化粧品容器10点の分析結果は、かなりショッキングなものだった。手のひらの大きさの青華白瓷八角壺に入っていた液体を拡大してみると、数百匹の黄アリの死骸が検出された。なぜ黄アリを使ったのかは明らかにすることはできなかった。顔のパックの効果がある細かい砂、蜜蝋と有機物を混ぜたクリーム、口紅のように塗る朱砂の粉、炭酸塩と滑石を混ぜたファンデーションの材料なども確認された。特に容器の中の材料の多くが、顔を白くする美白効果はあるが毒性のため使われない鉛や水銀の成分を含んでいた。朝鮮後期、妓生だけでなく最上層の王室の士大夫の女性たちも、重金属鉱物質や植物材料、アリまで活用し、顔の美容に格別の気を遣ったという事実が、様々な実物で初めて実証されたのだ。

和協翁主の墓から出土した化粧品壺の内容物から出た黄アリの頭部。顕微鏡で拡大した画像。黄アリを化粧品や美容の材料に用いたことを示している//ハンギョレ新聞社

 過去4年間で紆余曲折を経て実体が明らかになった和協翁主の化粧品が、21世紀の現代の製品として復活した。国立古宮博物館は22日午前、講堂で韓国伝統文化大学、化粧品製造業社のコースマックス(株)と共同で開発した「プリンセス・ファヒョプ(和協)」という商品名の新製品を公開した。和協翁主の墓から出土した化粧品の成分を分析した韓国伝統文化大学のチョン・ヨンジェ教授のチームは、コースマックスの技術スタッフとともに人体適用実験を経て製作した白色クリームと伝統材料成分を含んだファンデーション、保湿用のハンドクリーム、唇保護剤(リップバーム)を披露した。チョン教授は「伝統美容文化財の価値を盛り込んだいわゆる『K-ビューティー』の新たなモデルを作るという意図で推進した文化遺産再利用事業の成果物」だとし「蜜蝋や紅花の花びらなどの翁主の墓から出土した化粧品の成分が含まれ、内容物も本来の墓の化粧品容器を単純化した現代の青華白瓷容器に入れ、ブランドの由来とイメージを強調した」と明らかにした。翁主の墓から出土した化粧品で色感を出す主成分は、鉛白などの毒性の強い重金属だ。そのような成分を除外し、天然材料の代替物を入れて作った新しい化粧品は、香りや色感よりも洗練された青華白瓷の容器のデザインがより一層目を引く。出土した化粧品の成分だけでは、重金属中毒の恐れや発色力が落ち容易に腐敗するなどの短所があり、現代の材料を混ぜることで代えるしかない側面があるというのがチョン教授の話だ。実際、この日に出されたのは試作品で、本格的な販売は補完過程を経て年末から始めるという。

新たに開発された和協翁主のイメージキャラクター//ハンギョレ新聞社

 思悼世子の夫人の恵敬宮洪氏が書いた『閑中録』によると、和協翁主は生前、容姿が美しく冷静で孝心も深かったが、思悼世子のように英祖の冷遇を受け、同病相憐れむ感情が特に強かったという。この日、同時に発表されたキャラクターのイメージは、そのような翁主の姿を想像し具現したものだ。70年代に移葬された後に忘れられた翁主の初葬地から偶然に発掘された化粧品の遺物が、出土してから4年ほどで現代式の製品で開発されキャラクターまで出てきたので、20歳になる前に亡くなった翁主の数奇な人生と絡み、「塞翁が馬」の故事が思い出される。

ノ・ヒョンソク記者、写真、国立古宮博物館・高麗文化財研究員提供 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/963236.html韓国語原文入力:2020-09-23 02:35
訳M.S

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