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映画『ゴールデンスランバー』、「韓国版にはカン・ドンウォンがいる」

登録:2018-02-13 10:56 修正:2018-02-14 19:00
日本版『ゴールデンスランバー』vs韓国版『ゴールデンスランバー』 
 
同じ点 
テロ犯に追い込まれた男の死闘 
スリラーに社会批判も交え 
ビートルズのメインテーマ曲、共に使用 
 
違う点 
韓国版、登場人物を絞り 
現実性と見どころが加わり、 
国情院の特殊活動など細かな設定も追加
韓国版『ゴールデンスランバー』の主人公を演じるカン・ドンウォンと友人を演じるユン・ゲサン//ハンギョレ新聞社
日本版『ゴールデンスランバー』の主人公役の堺雅人(右)は宅配運転手として登場する//ハンギョレ新聞社

 日本の伊坂幸太郎の同名小説を原作にした映画『ゴールデンスランバー』(監督ノ・ドンソク)の韓国版が14日に封切りする。日本版は2010年に作られ、韓国内でも上映されたことがある。同じ原作を基に作られた日本版と韓国版映画は、枠組みは同じだがインテリアが異なる家のように、それぞれまったく違った感じを与える。観客としては「比べる楽しさ」を満喫できる機会だ。スリラーの装いだが、その中に人間関係に対する省察とともに社会批判のメッセージまで込めた映画『ゴールデンスランバー』の日本版と韓国版を比較してみる。

■ストーリー

 細かい違いを除けば、日本版と韓国版のプロットはほぼ同じだ。危険に直面したアイドル歌手を救って「勇敢な市民賞」を受けた宅配運転手のゴヌ(日本版は青柳)が、突然テロ犯に追い込まれて起こる話だ。ゴヌ(カン・ドンウォン)は何年かぶりに連絡が来た高校の同級生(日本版は大学同級生)のムヨル(ユン・ゲサン)に会う。「保険に入ってほしい」(日本版は「釣りに一緒に行こう」)という連絡だと思ったが、ムヨルは様子がおかしい。そしてゴヌのすぐ目の前で爆弾が爆発する。光化門(クァンファムン)のど真ん中で有力な次期大統領選挙候補(日本版は新任首相)が爆弾テロで死んだのだ。一晩でテロ犯に追い込まれたゴヌは、彼を追う警察や国家情報院を避け、逃げて逃げまくる。

 韓国版『ゴールデンスランバー』はソウル光化門で大規模な車両爆発が発生するなど、日本版よりアクションスケールが大きい。

韓国版『ゴールデンスランバー』はソウル光化門で大規模な車両爆発が起こるなど、日本版よりアクションスケールが大きい//ハンギョレ新聞社

■助力者

 まず、日本版と韓国版の最初の違いは主人公を助ける助力者だ。日本版では大学の同級生のほかに多くの人が青柳を助ける。全国に手配が下された謎の連続殺人犯も、病院で会った奇妙な老人も、大学時代にアルバイトをした花火工場の社長も、さらにはおかしな警察までこれといった理由もなく彼を助ける。一方、韓国版では高校の同級生らの他に助力者はたった一人、「国家情報院の元要員」ミン氏(キム・ウィソン)だ。ミン氏は、最初はムヨルとの義理を果たそうとゴヌを救うが、善良を通り越して馬鹿みたいなゴヌの真の姿を知り、積極的に彼を助ける。巨大な陰謀を暴き出して解決することを助けるのに、元要員ほど適した人物はいない。

 日本版が青柳を助けるのに同級生で一時恋人だった樋口だけを主に出したのに比べ、韓国版はソニョン(ハン・ヒョジュ)、クムチョル(キム・ソンギュン)、ドンギュ(キム・デミョン)に役割を平等に分配する。そして日本版より「友情」というキーワードにより集中する。彼ら3人組は人間に対するゴヌの信頼を揺さぶりもし、取り戻させもする重要な要因となる。

■見どころ

 韓国版は日本版よりスリラーとしての装置がはるかに多い。両バージョンいずれも「陰謀の実体」がはっきりとは現れないが、韓国版は「国家情報院」という国家機関の腐敗を陰謀の主要なカギとしてより明確に認識させる。このため、実際に議論になっている国情院の政治介入が映画と重なり、現実感と緊張感が増す。劇中でミン氏が国情院のファン局長(ユ・ジェミョン)に送った「特殊活動費も知っている」というメッセージなどは、現実をオーバーラップさせるきめ細かな設定だ。

 アクションシーンと追撃シーンが目立たなかった日本版に比べ、韓国版は光化門と駐車場爆破の場面、100トンの水を注いだ排水路逃走のシーンなど、スケールをはるかに大きくさせた。数百万台の監視カメラを動員した国情院の追撃を避け、光化門、新村(シンチョン)、江南(カンナム)の路地裏を駆け回るカン・ドンウォンの逃走シーンも緊張感を倍増させる。ミン氏役を演じたキム・ウィソンが「二カ月ほどアクションスクールに通った。製作陣は『007』シリーズのダニエル・クレイグのような格好良さを望んでいたが、最初から無理だった」とジョークを飛ばしたように、派手ではないがアクションシーンもそれなりの見どころを見せる。

韓国版『ゴールデンスランバー』は主人公カン・ドンウォンの役割が目立ち、日本版より友情を強調した//ハンギョレ新聞社

■音楽

 『ゴールデンスランバー』はビートルズの名曲のタイトルで、「黄金の眠り」、つまり最も平穏な時代や瞬間を意味する。韓日両バージョンとも映画のメインテーマ曲にこの音楽を使用する。日本版では主人公をはじめ、複数の登場人物が「Once there was a way / To get back homeward」(かつて故郷へと続く道があった)というフレーズを歌う。韓国版ではカン・ドンウォンがこのフレーズを歌うシーンがなく残念だ。両バージョンとも、この歌は過去の思い出を描く重要な媒介であり、映画を貫く主要な感性として作用する。

 映画に音楽が溶け込むのにより効果的な方法を使ったのは韓国版だ。日本版が青柳とその仲間たちが大学時代、唐突な「青少年食文化研究会」というサークルメンバーとして描かれたものに比べ、韓国版は「高校バンド」のメンバーに設定される。バンドの再結成をずっと夢見てきたゴヌが、新しくオープンしようとする店の名前がまさに「ゴールデンスランバー」だ。韓国版では「ゴールデンスランバー」の他にもシン・ヘチョルの「あなたへ」、「がんばれ」などが挿入曲として使われた。

■結末

 日本版と韓国版の決定的な違いは「結末」だ。日本版が事件を解決するよりは「たとえ見苦しい姿でも生き残ること」に集中し、予想外の結論に達するのとは違い、韓国版は生存と真実の二兎を得ようとする。もちろん緻密で几帳面なスリラーを期待すればややがっかりするところもあるだろうが、軽い気持ちで見るならば韓国のハッピーエンドの方が気に入る観客が多いだろう。さらに、なんと言っても“カン・ドンウォン”ではないか。「陰謀論的叙事の中での平凡な主人公」という設定にしてはハンサムすぎるカン・ドンウォンだが、“公共財”といえる彼が、生存も友情も守る幸せを取り戻すのに文句をつける人はおそらくいないだろう。

ユ・ソンヒ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/831874.html韓国語原文入力:2018-02-12 09:15
訳M.C