法曹界元老のハン・スンホン元監査院長(82)22日、いわゆる「過去事」の関連事件の裁判で、「ヤン・スンテ司法」が大統領の顔色を伺い、時代に逆行する判決を下していると、強い口調で批判した。
ハン元院長は最近出版された著書『裁判で見た韓国現代史』(創作と批評者)の記者懇談会で、維新時代の緊急措置に関する大法院(最高裁)の最近の判決の変化を指摘し、「司法が外部の政治の変化や執権者の利害関係と立場に沿って判決を下し、顔色をうかがって(それに)合わせ『後進』するのは、良心と正義に反する大変危険なことだ」と嘆いた。
『裁判で見た韓国現代史』出版
「忘却防止の義務を果たすため書き続ける」
大法院(最高裁)は2013年、朴正煕(パクチョンヒ)政権が1975年5月に発動した緊急措置9号が、国民の基本権を侵害したものであるため、違憲・無効だと判決したが、その後、被害者が国に対して起こした損害賠償訴訟では「緊急措置の発令は、高度の政治的行為であるため、政治的責任は問うことができても、国民一人ひとりに対する賠償責任は認められない」と相次いで判決してきた。
これに対してハン元院長は「大法院自らが違憲とした判決を覆し、個々の国民に対する賠償義務がないという退行的な判決を下したから、下級審の裁判官が反旗を翻しているのではないか。光州(クァンジュ)やソウルなど各地で(そのような判決が)あった。(だから)大法院が国民におかしいと思われているのだろう」と指摘した。
ハン元院長は司法の退行の原因と関連し「ヤン・スンテ長官が裁判官に向かって『浅薄な正義感や未熟な信条を良心として掲げていては、むしろ裁判の独立が阻害されることを明確に認識すること』を求め、大法官(最高裁判事)からも『誰も(下級審の裁判官が)先輩裁判官を困らせてはならない』という発言が出たのは、大法院が下級審の前向きな判決を押さえつけようとするもので、残念なこと」とし「(司法権の独立は)長官がどのような方なのかが重要だ」と強調した。
ハン元院長は「過去に行われた司法の誤った判断は他律的なものだった。中央情報部要員らが出勤し、常駐し、法廷にまで入って来て、外部からの干渉がはっきり見えていた。(だから)『司法権の侵害』と“外部の力”を挙げて言い訳することができた。しかし、今は外部の力がなくても誤った判断が下されている。司法自ら権力を志向し、(裁判官が)一身の栄達を図っているため現れる現象だ。これは司法が『権力の味方』ではなく、『自分も権力者』と宣言しているようなものだ」と述べた。
ハン元院長は「遅れてされる正義は、正義とは言わない」という(キング牧師の)発言を引用しながら、「裁判が真実を明らかにできず、不義を包み隠す役割を果たしており、裁判が終わっても審判は終わっていないような事件があまりにも多いのが私たちの現実」と指摘した。そして「さらに重要なのは、私たちがあまりにも簡単に忘れてしまうということだ。忘却を防止する義務、これが私が書き続けることで果たすべき役目だ」と付け加えた。
ハン元院長の著書は、呂運亨(ヨウンヒョン)暗殺から盧武鉉(ノムヒョン)元大統領の弾劾まで、自分が直接関与したか、捜査や公判記録を入念に再構成した17の事件の裁判を通じ、韓国現代史を再調査している。「この本が歴史を正しく見るレンズの役割、その糸口になればと思う」とハン元院長は語った。
韓国語原文入力:2016-03-22 18:44